001 城の外の森にて
この作品には、駄文乱文、中途半端なシリアス、中途半端なコメディ、中途半端な設定、等々で作られています。
それらが許せない方は、タブかウィンドウを閉じてください。
魔王城を飛び出して、ひたすらに空を飛んでいた。
城を後にした時のあの速度を出せば、街などそれこそ『あ』っと言う間に到着するのだが、それではつまらない。俺は効率とかよりも、娯楽のほうを選ぶ人間だ。いや、人じゃないけど。
「むしろ、霊長類ですらないけどな」
今でこそ、見た目を偽装しているから人間に見えるが、本体は人など遥かに離れた形状をしている。あれを人間らしいと呼べる奴がいたら、そいつは脳みそをやったか薬をやったかのどちらかだ。速やかに病院行きにするべきだろう。
「ま、この時代に、そんな病院はないだろうけど、な」
本体は人間離れした形状。
そう表記すると、クトゥルフ系の気色悪い異形どもを思い浮かばせてしまうかもしれない。名誉と真実のために言うならば、当然違う。もっと陸上的で、進化の系譜でももっと先にいる。
現存の生物を真似たのだから当たり前だが、俺の本体は――――
「っと、んなことはどうでもいいか」
呟き。そして自身の肉体に向けていた視線を、下に動かす。
その先に広がるのは、森。
地の果てから地の果てへと続く、広大な森林。
人工の物など一切無く、自然一色で生み出された広大な緑。深緑のそこからは、たまに甲高い鳥や獣の鳴き声が聞えてくる。
俺が飛び出してきた魔王城は、周囲を魔族の街で覆われている。だがそこから離れ、街と城を囲む城壁から出れば、ちょうど、こんな感じの森が広がっていた。
とはいえ、ここは魔王城の近くではない。先ほどもチラッと言ったが、ここに人工の物など無い。魔王城は言うに及ばず、そこから約数十キロ離れた場所に人間を寄せ付けぬ為に作られた、長い長い、万里と言うに値するほど長い第二の城壁さえ、最早見えない。
この森は全くと言って良いほどの未開の地。魔族も、人間も、殆どここには訪れない。訪れるものがいるとすれば、それは魔族なら酔狂な探険家、人間なら命知らずの冒険家くらいだろう。
「一応、ここは人間の領土、と言って良いはずなんだけどな」
どんなに未開でも、魔族の敷地からは既に出ている。魔族の敷地と違って、ここに人が来る事を、拒むものなどいない。
だからいずれ、この森も人の領地となるだろう。石炭を生み出すために木は切り倒され、丸裸になった地面に、家や道路が敷かれる筈だ。それがいつの事かは知らないが、全く来ない、ということはありえまい。
「ま、結局は未来の話なんだけど」
今はいない。見ている限り、冒険家も、探険家も。
だからつまらない。効率よりは娯楽を嗜む俺は、自然より、人間のほうが好きだ。
そもそも、この辺の動植物は見慣れている。所詮道中に過ぎない以上、動植物の観察を、暇が潰せるほどゆっくりやるわけにはいかない。そして眺める程度で、暇なんぞ潰せない。
「あー、ったく、何なんだよこれは」
どうやら、これからしばらく、暇を持て余すことになりそうだ。
*
退屈に負け、前言撤回してつい先ほど速度を上げた俺は、人間がいても不思議ではない、人里に近い場所にまでやってきていた。
人間に見つかって無駄な騒ぎを起こさないよう、空から陸へ降りる。
「さて、と」
足で地面を踏みしめ、視線を左右に。
人間はいない。だが、この辺ならあまり来たことが無いし、人がいなくても、自然だけで充分暇つぶしになるだろう。
何より、先ほどの森などと違い、ここには人の手が加わった痕跡もある。自然もそうだが、そう言った人の痕跡を探すのだって、いい退屈しのぎになる。
斧を使い伐採された樹木。
野宿の為に組み立てられた小屋。
見て明らかなほど繁殖した野草。
それらを人間が産み出す様子を想像し、口元だけで笑う。
「――――ん?」
ふと、気付いた。
地面に降り立ち、歩き始めてから一体どれほど経ったのか。人間の痕跡がかなり増え始めたとき、匂いを嗅いだ。
家畜の匂い、金属の匂い、料理の匂い、薬品の匂い、そして――――
「おやおや、これはこれは」
何であるか悟った瞬間、走り出した。
人間どころかチーターさえ追い抜く速度。音にさえ届く高速で森の中を走り抜ける。
最初に見えたのは馬。何人乗りかも想像できないほど大きな馬車を引き、誰かが育てたらしい野菜の葉を食んでいた。
――無視。
次に見えたのは知らない男たち。手に持っているのは槍と、もう一つ訳の分からないもの。接近するこちらには気付かず、通り過ぎた直後風圧で地面に倒れた。
――無視。
次は扉。木で作られたそれは、草や蔓でカモフラージュされている。歩いているときにふと目に止まった程度では、見逃してしまうだろう。
――無視。そのまま破壊。
中に入ると、人工の匂いが嗅覚を刺激した。
それは料理の匂い、薬品の匂い、そして――――
――――血肉の、匂い。
「…………」
目に付くのは赤。
そしていくつもの死体。
男女さえ分からぬそれらは、あらゆる急所から体液を噴出させている。
(死んで、間もないな)
急所とは言えこれだけ血が出ているのだ。心で五分も経っていまい。
(全く、これは)
生き残りは、いない。
なら、ここにいても意味はないだろう。いてもきっと面倒ごとに、巻き込まれるだけ。
俺は退屈が嫌いだ。そして、面倒事も嫌いだ。
見なかったことにしよう、と決めた。ここに来る途中、いろいろ壊したり吹っ飛ばしたりした気がするが、知らん顔して逃げ出せば問題あるまい。
あれだけの速度で来たんだ。俺の顔を見れた奴なんて、いないだろうし。立ち去っても、誰かに探される、なんて事態は無い筈だ。
(うし。そうしよう)
善は急げ。俺はすぐに回れ右した。
そしてそのまま走り出そうとし――――
「誰か、誰か!」
――――運悪く、叫び声を聞いてしまった。
『小さき王』、第二話です。
取り合えず大晦日の投稿になります。五日後ぐらいには投稿しようと予定していただけに、物凄く情けないです。
しかし、あとがきに書くネタがありませんね。
ニコニコ動画で、東方×終わりのクロニクルの動画を見たくらいでしょうか。あれを見て終わりのクロニクル読みたくなったんですが、いかんせんお金が無いw
んー、しかし、本来なら二話の時点で街についている予定だったんですが。まだそれどころじゃありませんね。
近づいたには近づいたんだけどな。森ん中じゃ同じか。
とりあえず、最後に。
タグにもあるとおり、この世界には魔術があります。関連の物がチラッと出てきたんですが、本当に一瞬な上に表現が曖昧なので、なんなのかは分からないでしょう。あれでどんなのか分かったら超能力並なんじゃないでしょうかw
もし見てみたい魔術とかありましたら、感想に書いてみて下さい。正直、どんな魔術を出すのかはあんま決めてなくて。はい、すいません。無計画で。
それでは。