表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さき王  作者: 鈴ノ風
1/3

プロローグ

この作品には、駄文乱文、中途半端なシリアス、中途半端なコメディ、中途半端な設定、等々で作られています。

それらが許せない方は、タブかウィンドウを閉じてください。


 百年に一度、勇者と魔王の戦いが行なわれる。

 森の奥地に建てられた、巨大な城。そこに住まう魔王と、それを対峙する為、国中から選びぬかれた勇者。

 魔王が負けるか、勇者が負けるか、それはその年によって違う。

 だが、例えどちらが負けようと、その先は同じ。

 魔王の軍勢は人里から去っていき、人間の軍隊もまた、魔王の土地から去ってゆく。

 魔王と勇者の戦いは、正義と邪悪の戦いではなく、破滅と希望の戦いでもない。

 実のところ、その戦いは互いの関係を維持する為の、儀式に過ぎない。

 何年も何年も、続けられた儀式。

 どのような天変地異が起ころうと、欠かすことなどなかった。

 だからこそ、その年。

 最早何十回目になるかも分からない約束の年。

 最早何十回目になるかも分からない戦いが、始まる――――


 ――――筈で、あった。



        *


「遅い」

 昼間、太陽光に照らされた巨大な椅子に座りながら、俺は呟いていた。

 俺の呟きを聞いて、周りにいた臣下や兵士たちが動きを止める。

「遅い」

 もう一度言う。

 本当に、遅い。

 百年に一度の年、本来なら国中から選ばれたたった一人の勇者が、お供を連れ、立派な剣を持ってこの魔王城へ乗り込んでくるはずだ。

 それがいつなのかは年によって違う。春であったり、夏であったり、秋であったり。

 ただ冬だけは、皆寒いからと言ってこなかったか。

「遅い、遅すぎる」

 周りにいた者達がため息をつく。呆れではなく同意の。

 今の季節は春。東の国から取り寄せた木が、淡いピンクの花を咲かせている。

 ただ、勘違いしないでもらいたい。今は百年目の春ではない。

「もう年を越してしまったぞ! 完全に遅刻ではないか!」

 そう、これは百一年目の春なのだ。

 勇者の選定が遅れたとか、飢饉があったとか、戦争があったとかでも最早許されない。都合が悪いのなら使いを寄越す手はずになっていたのだ、それもしないのならただの遅刻と判断されてしかるべき。

「ああ、クソ」

「陛下。そのような汚らしい言葉遣いは……」

 臣下の一人が、俺を咎めてきた。

「だがな、いくらなんでも遅すぎる! もう春だぞ! 桜が咲いたんだぞ! 言葉も汚くなるわ!」

 まあ普段から綺麗とは言いがたいのだが。それはさておき。

「陛下、どうしましょうか?」

 俺を咎めたのとは別の臣下が聞いてきた。

「どうもこうも、年が過ぎた以上すっぽかされたと判断するのが妥当だろうな」

「そんな……」

 呆れと失望とが混ざり合った表情を浮かべる。気持ちは分かるが、もう少し表情を抑えようとしないのかこいつは。露骨過ぎるぞ。

「じゃあどうします? 攻め込みますか?」

 そういったのは臣下ではなく兵士。背負った大剣の柄に手を伸ばしながら言う。

「やめい。血気盛んな奴だな、戦争するつもりか?」

「当然でしょう! 約束破ったんですよ人間は。あいつら俺等の事舐めてるんですよ、だから思い知らしてやんないと!」

「…………」

 そういや、こいつ百歳になってないんだったか。

「はぁ。誰かこの若造をつまみ出せ」

「ちょっ、陛下!」

「陛下」

 若い兵士は他の屈強な者たちに引き摺られ、窓からポイッと捨てられた。

 一応、ここ二十階ぐらいの高さはあるんだが、あいつ飛べるのかな?

「まあいいや。それで、何だ?」

 話し掛けてきたのは年老いた臣下。実年齢なら俺のほうが遥かに上だが、経験、知識ともに優れており、頼りになる奴だ。

「はい。あの兵士の言う事も、もっともではないかと私は思うのです」

「お前さん飛べなかったよな。なら骨くらいは拾ってやる」

「いやいやいや、もう少し話を聞いてください!」

 先ほど兵士を放り投げたものたちが、今度は年老いた臣下の肩をつかんだ。

 ああは言ったものの、こいつの言葉は頼りになる。俺はノリの良い彼らに手で放すように指示し、臣下に話を続けるよう言った。

「で?」

「はい。私も別に戦おうと言いたいのではありません。ただ人間の町に様子を見に行くべきだと思うのです」

「ほう。それは何故?」

「魔王陛下と勇者の戦いが始まって何千年と経ちました。ですがただの一度として、勇者が遅刻した事はありません。『遅れるかもしれない』という言伝が来ても、結局は遅れませんでした」

「ふむ」

「ですが今年はそうではない。勇者は来ず、使いも来ない。これは何かあったと判断するべきでしょう」

「つまりその『何か』を調べるべきだ、とお前は言いたいのか?」

「っは」

 なるほど。こいつの言う事ももっともだ。

「そうだな。では偵察に行くとするか」

「っは。あと偵察隊の候補なのですが…………え゛?」

「何か?」

「いえ、あの、陛下? 今なんと?」

「様子見に行こうと、言ったんだが?」

「それは、その、陛下も参加する、ということですか?」

「ん? ああ、それは無いから安心しろ」

「よかった。また陛下が騒動起こそうと考えているのかと」

 またって、失礼な。

「はぁ……そう言うわけだから、連れはいらんぞ」

「ではお一人で参るのですね……………………ってまさか本当に一人で良く気かあんた!?」

 敬語忘れてるぞ。

「さっきからそう言ってるじゃないか。文句あるのか?」

「ありますよ当然! 魔王陛下ともあろうお方が警護もつけず外出するなど!」

「だが、俺はこれから偵察に行くんだぞ? 様子見をするなら忍ぶべきだ。なら人数は少ないほうが良い。一人だとなお良い」

「ですが! そもそも! 陛下自らが行く必要は!」

「向こうで何が起こるか分からん。この中で一番戦闘力があるのは俺だ。一人二人なら、強い奴を選ぶのは当然だろ?」

「しかし」

「それとも、お前まさか俺の妹を行かせるつもりか?」

「いや、そんな破綻しかないような事は流石にしませんが」

「だろ。なら決定」

「お待ちください陛下!」

 他の臣下や兵士たちも、彼の叫びに反応して俺を止めようとする。

 こちらを包囲しようとするもの、扉に集まるもの。大まかに分ければその二つ。

 が、先ほども言ったとおり、この城で一番強いのはこの俺だ。臣下が兵士が何人取り囲んで来ようが、俺を止められはしない。

 俺を止めたくば妹を連れてくるしか無いが、あいつは今地下室で熟睡中だ。俺以外の者が起こす=死なのだから、あいつが出てくる事は無い。

 そして。

「あら、よっと」

 俺が目指すのは扉ではないので、そちらの者たちはそもそも無意味。

 そして俺は潜り抜けた。

 若い兵士が落ちていった、窓を。

「へ、陛下ぁ!」

 誰かの叫びが聞えてくるが、気にしない気にしない。

 遥か下で誰かが伸びていたが、気にしない気にしない。

 これでも飛ぶ術なら会得してるし。地面に激突して誰かさんみたいになることは無い。

「お戻りください! 陛下!」

 叫びというか、最早喉をからしそうな騒音は無視し、空を飛ぶ。

 翼とかは持ってないけど、あまり関係はない。

「そんじゃ、行ってくるわ」

 一瞬で小さくなった魔王城へ、俺はそう言った。


 さて、街は東……だったよな?


どうも、初めまして、お久しぶりです。

鈴ノ風と申します。

いやー、新作です。実はクリスマスイブには上げるつもりのものでした。はい、一日遅れです。

とりあえず、誤字脱字、批判等ありましたら、遠慮せず感想に書いてください。

それでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ