下剋上
私の母は完璧な人間である。
彼女の言うこはと全てが正しく、有無を言わさぬ強制力をもつ。
世界は彼女を中心に回っており、その機嫌はあらゆる事象を左右する。
全ての結果は彼女に起因し、如何なる功績も彼女があってこそなのである。
そうだ、私の存在そのものが彼女の功績なのだから。
私は母のような完璧な存在にはなれない。
他人をねじ伏せる高圧的な態度は、とても凡人に真似できる代物ではない。
にもかかわらず、彼女は私と自身とを常に比較する。
彼女より劣る私を見下し、恍惚に浸るのだ。
ごめんなさい。ごめんなさい。
貴方のようになれない私は、とんだ欠陥品だ。
いつからか狂ってしまって、もう決して直せない。
だから私は決めたのだ。
欠陥品なんて私だって嫌だから。
あの短絡的な脳みそを、脂肪の詰まった醜い体を、顕示欲に染まった精神を、
全て私が浄化してやるんだ。
包丁を振り下ろした。
完璧なあの人はやはり完璧な悲鳴をあげている。
まだ。まだ足りない。
色々なモノが飛び散っているけれど(内臓まで完璧に汚い)。
でもまだ、あぁ!!!
ああああああああああああああああ!!!!!!!
しんでしまえ!!!
かくして、私の母は永遠に完璧な存在となった。
中心を無くした我々の世界は、初めて穏やかに回転し始めた。
という夢から覚めた私は、今日も彼女のご機嫌とりに励むのでした。
はい、今日も完璧でございますお母様!