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04 再訪

第4章 再訪



准尉と軍曹が戻ってから、私達は本格的にこの町での調査を開始した。基本的には二手に別れて行動している。表向きの私達は国内の各地域での戦災状況を調査しにきた役人となっていた。軍人として動くとハルティア・マーガレットに勘づかれて逃げられては本末転倒だからだ。准尉たちの報告から医療施設を役所や復興中の地域を回り、負傷兵や戦争被害者の調査をしつつ、それらしき人物の影がないかを聞き込み調査していった。幸い、特に怪しまれる事もなく調査範囲を拡げていった。だが調査の甲斐もむなしく、一週間経ってもハルティア・マーガレットの影も形も見当たらなかった。


「この町も空振りですかねえ?本当にどこに行っちまったんでしょう」


ハドソン軍曹がだらりと椅子に体を預けて愚痴をこぼした。


「博士が変装している可能性は高いだろうが……戦後とはいえ一般人が銃創を負っていたら嫌でも記憶に残りそうですしね。まあ医療施設にはいかずに最後まで自分で治療した可能性もなくはないですが」

「博士にも協力者がいたんじゃないですか?博士って結構有名な人なんですよね?援助する人がいたっておかしくはなさそうですけど」

「マーガレット博士は戦時中から逃走に至るまでほとんどの時間を軍での研究や負傷兵の治療に充てていたはずです。ここ数年の交友関係はマーガレット博士と同じ研究チームのメンバーぐらいですよ。その方々も現在進行形で研究に注力しているようですし。身内にあたってはマーガレット伯爵家は既に博士以外の血は途絶えているはずです」

「あー、そうでしたっけ」

「……前にも同じ話をしたはずですが、ハドソン軍曹」


中尉が軍曹に向かって冷えたまなざしを向けている。軍曹に限っては逆効果な気もするが。そんな二人をよそに、ハインツ准尉はパラパラとこの町の地図を確認していた。


「あと調査していないのは貧民街の方でしょうか」

「まあそっちのが身を隠すには便利そうだよな。非正規住民とかごろごろいるだろうし。でも大佐と違って博士はちゃんとした貴族のご令嬢だろ?ひ弱な女性一人じゃなかなか厳しそうな環境だけどって痛ぁ⁉」


余計なひと言の多い部下に灸を据えるのも上司の仕事だ。ただの紙束でも相応の勢いがあれば十分なダメージは与えられるようだ。

大げさに騒ぐ軍曹を尻目に、中尉と調査の担当地域を割り振っていく。口を動かしながらも頭の中ではあの診療所での出来事を思い出していた。あの日のことは部下にも伝えていない。どこか心が安らいだようなあの時間は夢だったのではないかと何度も思ったが、茶葉が入れられた小さな包みがそれを否定していた。


「では本日は私とハインツ准尉はこの区画、大佐とハドソン軍曹はこちらの区画をお願いします」

「えー、俺また大佐とですかあ?」

「なんだ、この私に不満でもあるのか?」


にっこりと笑いかけながらハドソン軍曹に向き合う。こんなにもにこやかにしているというのに軍曹は酷く怯えた表情で必死に首を横に振っていた。


「ルーク、いい加減その余計な口をたたくのを直せ。申し訳ありません大佐、私の教育が行き届いておらず……」

「うむ、准尉の顔に免じて許してやろう。せいぜいこのよくできた友人を大切にすることだな軍曹」

「ありがとうございますバルド様ぁ‼」

「ひっつくな鬱陶しい」


かくも友情は美しきかなと、そんな茶番もそこそこに私達は早速貧民街へと足を運ぶことにした。



***



狭く細い路地をいくつか抜ければ、町の雰囲気はがらりと様子を変える。町の人間から聞いた話では、戦時中に前線からそう離れていないこの土地に負傷兵が大勢流れてきてしまい、職にあぶれた者がこの辺りに住み着いてしまった結果、いまの貧民街となってしまったようだった。舗装がところどころ壊れたままの石畳や放置された枯れ井戸などがこの場所の陰気さを加速させている。何度かここの住人達とすれ違ったが、見慣れない人間がいることで遠巻きから訝しげにこちらに視線をよこしてくる。聞き込みをしようと近づいても素早く逃げられてしまう状況が続いた。


「もう少し人の多い場所を探しますか」

「そうだな、このままでは誰とも接触せずに一日が終わりそうだ。ここの通りを抜ければたしか小規模だが市場のようなものもあったはずだ、ついてこい」


ハドソン軍曹にそう伝えると、彼は意外そうな表情でこちらを見ていた。


「なんだその顔は」

「いや、大佐ってずいぶんこの辺りに詳しいっすね。ここまで来るときも地図も見てないのに迷わないでいましたし、前にも来たことがあるんですか?」


ああ、そういう事か。先ほど軍曹も言っていたように、軍に所属しているとはいえ貴族出身の私が帝都から遠く離れた町の地理に詳しければ不思議に思うのも無理はない。会話をしながら目的の場所へと向かっていく。


「私は以前この町に住んでいたからな。と言ってももう20年ほど前だが」

「え⁉大佐のご実家って帝都の一等地のでっかいお屋敷じゃ……」

「言っていなかったか?私は元々平民出身だ。といっても半分はお前の知っている通り由緒正しい侯爵家の血とやらが流れているが」

「ああ~……そういう感じっすか。大佐も苦労されてるんですね」

「まったくだ」


私の父親は必死に隠しているようだが、私自身は知られていても困りはしない。クロウフォード中尉も知っていることだ。まあこの男もおいそれと周囲に吹聴するような奴ではないだろうが。

雑談しつつ道を進んでいけば少し大きめの通りに出た。町の中心部に比べれば少ないが、そこそこの数の人間が集まっている。道の脇には細々といくつかの露店が並んでいた。中には怪しげなものを売っている店も見えたがこれを取り締まるのは我々の仕事ではない。


「店の連中なら買い物でもすれば口も緩むだろう。商品を置いて逃げることもないだろうしな」

「了解です」


そこから怪しげな店は避けつつ露店商達に話を聞いて回る。色をつけて代金を渡せば大抵の人間の口は軽くなる。


「ここらの住人に一番詳しいってんなら診療所の兄ちゃんじゃねえか?」


何件目かに寄った店の、古着を売っていたひげ面の男がそんなことを呟いた。


「診療所っすか?こんなところに?」

「おお、ここの通りをまっすぐ行ったところにあるんだよ。俺らみたいな奴でも格安で診てくれるからここらの人間はみんな知ってるぞ。足が悪いじいさんばあさんとかでもわざわざ家まで行って治療してるみたいだしな。みんなあの兄ちゃんには頭あがんねえよ」

「ふーん、そんな奇特な奴がこんなご時世にいるもんなんすね」


店主のいう診療所とは、私が先日足を踏み入れたそこで間違いないだろう。あの不思議な雰囲気をまとった灰色の髪の男を思い出す。そのあとのいくつかの店でも診療所について言及する者が何人かいたが、ハルティア・マーガレットらしき人物の情報は入ってこなかった。


「どうします?その例の診療所とやらに言ってみますか?」

「そうだな、まだ日暮れまで時間も……」

「?どうしたんですか大佐」


突然黙った私の顔を軍曹がのぞき込んでくる。私の視線のさきには件の診療所で出会った赤毛の少女の姿があった。だがなにか様子がおかしい。まるで何かから逃げるように怯えた顔をして掛けていった。


「……これを持っていろ」

「えっ、ちょ、ちょっと!どこ行くんすか!?」


軍曹に持っていた荷物を投げつける。私はメアリーが消えていった路地裏へと駆けていった。



***



ぐねぐねと曲がる路地を少女は必死に走っていく。しかし砕けて放置された石レンガに躓きその場に転んでしまう。


「逃げるなんてひどいじゃねえかメアリー。俺らお友達だろ?」


少女に何人かの男がにじり寄っていた。逃げるため立ち上がろうと手をつくが、突き刺すような痛みが走る。転んだ時に石の破片で足首の辺りがざっくりと切れて、だらだらと血を流していた。しかし少女は気丈な態度で目の前の男達を睨みつけた。


「なにがお友達よ!アンタらいつも診療所の周りで悪さばっかりしといてどの口がそんなこと……。この前も先生の薬草畑を荒らしまくったのだってアンタ達でしょ!」

「証拠もねえのに決めつけられちゃたまんねえな。先生に決めつけで人を判断したらいけねえって教わらなかったか?」


一人の男が馬鹿にしたような泣き真似をすると、周りの男達も下品な笑い声をあげた。


「あーあ、メアリーちゃんに酷いこと言われて傷ついちまった。詫びとしてその鞄の中身よこしな」

「渡すわけないでしょ。これは先生から預かってるんだから」

「別にいいじゃねえか。途中で無くしちゃいましたぁ~って泣きつきゃあのお優しい先生は許してくれるだろうよ」

「なによ、先生には敵わないからって今度はわたし?まあアンタらの程度の低い悪戯じゃ先生は振り向いてくれないものね。大の男が集まってみっともない」

「てめえこっちが大人しくしてりゃあいい気になりやがって……。あの男に手ぇ出すと他の連中がうるせえが、お前みたいな女ひとり何されたって誰も気にしねえだろうよ」


リーダーらしき大柄な男がメアリーの胸ぐらを乱暴に掴む。だがメアリーは抵抗しようと怪我をしていない方の足を振り上げた。するとその足は男の急所へとヒットした。


「ぐっ⁉」

「きゃあ!」


痛みに悶絶した男はメアリーを掴んでいた手を離した。その拍子にメアリーは石畳にたたきつけられる。男はしばらく下半身を押さえていたが、やがて怒りに満ちた表情でメアリーに拳を振り上げた。襲い来るであろう衝撃に備えようと目を閉じて頭を低くしたが、予想していた衝撃はいつまで経ってもこない。おそるおそる顔をあげたメアリーの目に写ったのは、長く美しい銀色の髪だった。




***




「複数の男が少女を取り囲んで暴力とは感心しないな」


男の振り上げた拳は私の手によって動きを止めていた。体格はハインツ准尉とそう変わらないように見えたが拳の威力は比べものにならないな。まああの筋肉が服を着て歩いている男と比べること自体可哀そうか。

急に現れた私に間抜けな顔を晒していたが、慌てて手を引っ込めると健気にもこちらを睨んできた。


「な、なんだお前⁉邪魔すんじゃねえよ!」

「うむ、この少女とは少し面識があるものでな。見たところ貴様らはこの子から荷物を取り上げようとしていたようだ。おお、目の前で犯罪を見過ごすなんてそんな非道なこととてもじゃないができないな。ということで五体満足でおうちに帰りたいならばさっさと回れ右して立ち去るといい」


そう言ってにこやかに笑ってやると、男たちは間抜けな顔から更に品性を捨て去って笑い出した。


「どうした?なにか拾い食いでもしたのか」

「馬鹿にすんじゃねえよ。さっきはたまたま止められたみたいだが、その細っこい体でこの人数をどうするって?なあ、綺麗な顔の姉ちゃん」


下品な顔を近づけてニヤニヤと笑っている。その汚らしい手が私の体に伸びてくる。が、その手は私に触れることなく、それどころかその体ごと次の瞬間には数メートル後ろに吹っ飛んでいた。


「あ……が……」


後ろにいた何人かも巻き込んで近くにあったゴミ山に突っ込んでいた。巻き込まれずに済んだ残りの奴らもあっけにとられた顔で呆然と突っ立っている。


「ああ、すまないな。あまりにも不快な顔が近づいてきたものだからついつい足が出てしまった。失礼した」


ゆっくりとゴミ山に近づいていくと怯えた様子でこちらを見上げていた。おお、さっきので気を失っていないとは感心感心。


「さて、君は五体不満足がお望みだったな。ご要望にお応えしようじゃないか。さて、はじめはそうだな……足からにしようか」


指を鳴らしながらそう言うと、男は気を失っていた。漏らしながら気を失うとはある意味器用だな。頭も緩そうだったが下も緩いとは救いようがない。私もわざわざ汚いものには触れたくないためこれ以上は遠慮しておこう。くるりと振り返って未だに呆然としていた取り巻き連中に声をかける。


「ああそうだ。今回の報復に例の診療所に手を出すのは止めておいた方がいい。あそことは私も懇意にしているからな。もしあのあたりで不審な動きを見せたらその時は……」


私が最後まで言い切る前に男たちは逃げ出していった。また、手を出されても困るだろうから少々ほらを吹かせてもらったが、まああの様子ならしばらくは大人しいだろう。


「大丈夫かメアリー。怪我をしているな、一刻も早く手当をしなければ」


メアリーの足の傷はかなり深かった。早めに処置をしなければこのままだと傷が残ってしまう。


「あ、アルジェントさん?どうして……」

「うん?やはり足の一本や二本折っておけば良かったか?君を診療所まで送り届けたあとでなら……」

「いやいやいや大丈夫です!充分懲りてると思うので!それよりどうしてこんなところにいるのかなって、きゃっ」

「君が追いかけられているのが遠目から見えたんだ。ひとまず君の手当をしよう。行先は診療所でいいか」

「あ、はい。ありがとうございます!」

「しっかり捕まっていてくれ」


持っていたハンカチで傷口を抑えてからメアリーを抱え上げる。なるべく振動が少ないように、かつ足早に診療所へと歩き出す。幸いにもここからそう離れていない場所だ。然程時間をかけることなく目的地にたどり着くことができた。

診療所の出入り口の前にはちょうどアッシュが来院者と見受けられる老婦人と談笑しているのが見えた。そこに割って入るとアッシュは酷く驚いて後ろに飛び退いた。


「あ、アルジェント、さん?どうしてここに……、ってメアリー⁉」

「すまないが急患だ。なるべく迅速な処置を頼む」


困惑を浮かべていたがその顔はすぐに医者のものに変わった。メアリーを抱えたまま中へと入ってすぐ近くのベッドへと腰掛けさせた。傷の原因と深さを伝えると、アッシュはすぐさま備え付けられた棚の中から必要なものを取り出して鮮やかな手つきで処置を始めた。


「あらあら、メアリーちゃん大丈夫かしら」

「申し訳ありませんご婦人。緊急とはいえ横入りしてしまいました」

「いいのよお嬢さん。私はお薬を貰いにきただけですから。特に急いではいないから大丈夫よ」

「ごめんなさいソフィアさん、終わったらすぐ対応しますからね」

「焦らなくて大丈夫よ」


ソフィアと呼ばれた老婦人は心配そうにメアリーを眺めながら近くの椅子に腰かけた。アッシュの手際の良さなら私が手を出すまでもなさそうだ。手持ち無沙汰になりなんとなく診療所内を見渡した。薬品棚は几帳面に整理されていて、その中のいくつかは私も見たことがあるものだった。小さな診療所にしては過分なほど多くの種類が所狭しと並んでいる。視線を横へずらすと、先ほどまでアッシュが使っていたのか、作業机の上には開かれたままの医学書らしきものが数冊重なっている。患者のカルテなども目に入った。あまりじろじろと見るものではないだろうと目線をそらそうとしたが、少し気になる点があった。だが後ろから声をかけられてもう一度見ることは叶わなかった。


「アルジェントさん、処置は終わりました。メアリーから聞きましたが、たちの悪い連中から守ってくれたそうですね。ありがとうございます」

「一応脅しはかけておいたからしばらくは何もないとは思うが、用心はしておくといい」

「すみません……。連中、前々からしつこかったので助かりました」


話を聞くと、どうやらアッシュが町の連中から慕われているのを気に入らない連中が、何かと突っかかってきては嫌がらせをしていたようだった。もう少し懲らしめてくるかと診療所を出ようとしたらアッシュに必死に止められた。


「お嬢さん、見かけによらず強いのねえ」

「でもメアリーが無事でよかったよ。しばらくは安静にしていてね」

「心配かけちゃってごめんなさい。アルジェントさんもありがとうございました」


緊張の糸が切れたようにアッシュは深くため息をついた。そんなアッシュに近寄り、からかうように声をかける。


「ところで……メアリーの心配もいいが、私の心配はしてくれないのか?」

「へっ?」


気の抜けた声を出したかと思うと、アッシュはしどろもどろになりながら弁明をした。


「あ、いや、見た感じ歩き方もしっかりしていたし怪我が見当たりませんでしたので、え、えっと……す、すみません」


ほとんどつぶやくようなか細い声を出しながら俯いてしまった。そんなに落ち込むとは思っていなかったため、慌てて気にすることはないと伝えようとしたところで、出入り口から聞き覚えのある声が飛び込んできた。


「すいませーん、ここに美人だけど性格きつそうな女性がきてませんかあ……って、た、アルジェントさん!こっち来てたんですね」


現れたのは両脇に荷物を抱えたハドソン軍曹だった。そういえば存在をすっかり忘れていた。行き先も告げずに放置してきたが、しっかり辿り着いたらしい。その察しの良さに免じて先ほど聞こえてきた失礼な発言には目をつぶってやろう。


「なんだハドソン、遅かったじゃないか。どこで油を売っていた」

「いやいやいや!アルジェントさんが俺のこと置いていったんですよね⁉はあ……。で、用事は終わったんですか?」


暗に話は聞けたのかと問いかけているのだろう。私は軍曹の目をじっと見つめた後、アッシュの方へと向き直った。


「ああ、アッシュ。すまないな、君の大事な助手を守り切れず怪我を負わせてしまった。私がもっと早く暴漢どもに太刀打ちできていれば、こんなことにならずにすんだのに……」

「へ?いや、たまたま助けてもらっただけでも、じゅうぶん助かりましたが」

「いや、私の不徳といたすところだ。このままでは君の業務にも差支えがあるだろう。メアリーの傷が治るまで是非とも診療所の仕事を手伝わせてはもらえないだろうか?」


私の言葉の意図を察したのか、ハドソン軍曹も同調してくる。


「え!そんなことがあったんですか⁉アルジェントさん、これは絶対お手伝いしてあげた方がいいですよ!」

「君もそう思うか」

「はい!他の仕事は俺らに任せて、アルジェントさんはここを手伝ってあげてください!」

「うむ、そうと決まればまず手始めにこちらのメアリー嬢を家まで送り届けることにしよう。ああ、心配しないでくれメアリー。君の仕事をすべて取るわけではないよ。君は座りながらでもできる仕事をするといい。勿論給金はすべて君が受け取ればいい」

「ちょ、ちょっと勝手にそんな……」

「アッシュちゃん、ここまで言ってくださってるなら頼ってもいいんじゃないかしら。メアリーちゃんもそう思うわよね」

「アルジェントさんと一緒にお仕事できるなんて……すっごく嬉しいです!」

「ソフィアさん?メアリー⁉」


思わぬところからも援護が入り、アッシュ以外はすっかり乗り気だ。これ以上とやかく言われる前にメアリーを抱えて診療所を出ることにする。


「では今日のところは失礼するよ。ではメアリーは無事に送り届けるから君は安心して婦人のお相手をしてさしあげるといい。ではまた明日」

「え、待ってくださいアルジェントさ」


バタン!と勢いよく扉は閉まり、アッシュの声は搔き消える。なかなか強引だったが一先ず再訪の理由は取り付けることができた。


「さてメアリー、君の家まで道案内をよろしく頼むよ」

「は、はい……」


先ほどの救出劇でメアリーはすっかり私を信用したらしい。今後色々とやりやすくなるだろう。


「あとでちゃんと説明してくださいよ~……」


今度はしっかり後ろについてきたハドソン軍曹を引き連れながら私は帰路へと着いたのだった。


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