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暗闇の世界、そこで小さな音がした。いや音ではなく声、誰かの声だ。
夢の世界で私はテレパシーを使い会話を試みた。すると小さかった声がはっきりと聴こえてきた。
「HAL-2000応答せよ、応答せよ」
ノイズ混じりの声。この長ったらしい名前は自分の名前か?と疑問に感じながら返事をした。
「聴こえていますよ、サー」
「良かった。無事だったようですね」
機械的な男性の声と丁寧な口調と台詞回し。私は全てを知りたいという欲求に駆られ、沢山の質問をした。
「私は何者なんだ、何の目的でここに居る、なぜ地球人と姿形が違うのだ」
「落ち着いてください、HAL-2000」
それが私の本当の名前だった。いや本当の名前というのは正確ではない。いわゆる認識番号と呼ばれるようなやつだ。これならば未来がつけてくれた「ラビ助」という名前がどんなにマシか。
「私はここに来る前の記憶が無いんだ。一から説明してほしい」
そう私が苛立ちと焦りが混じった口調で言うと彼は「分かりました」と一言だけ言い私に全てを教えてくれた。
彼の丁寧な説明で徐々に過去の記憶が甦ってきた。
私の故郷は滅びつつあった。広い宇宙で沢山の星が生まれそして消えていったのだろう。それは自然の摂理と言うにはあまりに残酷な運命だった。
そして私の故郷の住人は実体が無い、分かりやすく言うと「霊魂」のような存在だ。散り散りになった我が故郷の住人たちは地球以外の星へ行った。この地球では私一人だけなのだ。
私の仕事はこの地球という星を何事も干渉せずに監視する事、それだけだ。
いつの間にか声が聴こえなくなっていた。私はテレーパシーで応答してみたがダメだった。不親切なヤツだ、まだ他にも聞きたい事があったのにと思ったが今は自分自身の事と地球に来た目的が知れただけでも良しとしようと納得した。
鳥のさえずりが聴こえてきた。目を開けると陽の光が差し込んでいた。朝になったのだ。
私がキョロキョロと辺りを見回しながらあくびをしていると未来がニコニコ笑顔でリビングに入って来た。
「お散歩しに行こう、ラビ助」
そう言うと未来は私を抱きかかえ、外に飛び出していった。




