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目覚めた場所はどこまでも深い闇の世界だった。


 私には目覚める前の記憶が無い。名前、経歴、住んでいた場所、まるで生まれたばかりの赤子のように全てが分からなかった。

 自分は何者なのか。自分はどこから来てどこへ行くのか。まるで哲学者のように思索を巡らせていた。

 ふと私は自分の身体を手探りに触ってみた。

 頭の上の長い耳、全身毛で覆われた身体。

少なくとも人間という生き物では無い事は確信出来た。

 そうこうしているうちにかなりの時間が経った。

 長い時間、暗闇の世界に居ると目が慣れてくるものである。狭い室内に微かな光が見える事は確認出来た。だが開ける術はない。

 私はこれからの心配をした。誰にも気づかれずにこのまま飢えて死んでしまうのか。

 今のところは多少の喉の渇きがあるだけで飢えるほどの空腹では無い。然しいずれは飢えとの戦いになるだろう。

 私はふと耳をすませた。微かな音が聴こえる。おそらく人間の声、沢山の人間の声。

 私はとっさに身体を思い切り壁にぶつけた。力の限り身体中に響きわたる肉体への痛みなど忘れるくらい。

 すると必死の努力のおかげなのか、溢れんばかりの眩しい光が目に突き刺さるかのように飛び込んできた。扉が開いたのだ。

 私は身体が飛び上がらんばかりの感動を覚えた。とにかく生きてここから出られた事が嬉しかったのだ。


こうして私の短い監禁生活は終わった。

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