表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/36

31. 再び同じゴールへ

 夕陽が沈み、夜の気配は静かに街を包んでゆく。

 ミスター・KPIとスーツ侍たちは、近くの広場で対峙した。


「毎回私たちの邪魔をして何が楽しいんですかねぇ? この世の企業はすべて、我らブラック企業団の配下にする!」

「企業の理念は構成員たちの魂が詰まっておる。それを我が物にしようとするなど言語道断!」

 ノブナガが炎の刀を手に取る。


「ふっふっふ。ではこれでも食らうが良い――フラッシュROIショット!」

 紫の光の刃が飛んでくる。

「業火!」と言いながら、ノブナガが炎の刀でそれらを弾いてゆく。


「なかなかやるな……ではこれはどうだ! KPIグラフ超達成理論!」

 スーツ侍たちの目の前にKPIの太い棒グラフが立ちはだかる。そこからは“KPI達成のために働け”という怒号。


「うわぁぁっ、出たよ数字の圧! これ、ブラック上司のプレゼンじゃん!?」とヒデヨシが尻込みする。

 そこにイエヤスが蒼の扇を持って構える。

「そんなグラフなど断ち切って見せよう――減損(げんそん)カッター!」


 扇から蒼く鋭い刃が光って飛び、グラフを切り落とす。

「毘沙門刃!」とケンシンも義刀でグラフを斬りにかかる。

「業火旋風斬り!」とノブナガも攻撃して、ようやくグラフが粉々に散った。


 ミスター・KPIがふっと笑う。

「まぁここまではお遊びですよ。指標の前では、心など無価値。耐えられますかねぇ、この合理の圧に。精神(マインド)統率(モチベ)ブースト!」

 KPIの手から紫色の光が現れ、侍たちを包み込む。


「うぅっ……なんだこの空間は?」

 まるで別の場所に移動したような気配。紫色の壁に囲まれ、徐々に壁が迫ってくる。

『……KPIの達成ができない者など、不要……』

 どこからか幻聴が聞こえてきて、壁とともに侍たちの精神を蝕んでゆく。


「負けるものか! 笑顔(スマイル)・百万石アプローチ!」

 ヒデヨシが金の扇を振るものの、効果がほとんどない。

「だ……だめだ……力が……」

「毘沙門天……さま……」

「うぅっ……」


 外では、KPIが満足そうに紫色のカプセルに包まれたスーツ侍を眺めている。

「残念でしたね……スーツ侍はもう終わり」


 すると、そこにひとりの男が走ってくる――煌月だ。

「……よくも、俺たちを騙してくれたな!」

 煌月が勢いよく飛び出し、KPIに殴りかかろうとするがあっという間に避けられた。

「おやおや、さっきまで一緒にビジネスを語っていたのに。もう一度……共に目指しましょうか。数字を」


 KPIが煌月に術を放とうとした時だった。

「待て」

 ――そこに静かに現れたのは。


「……朱崎!」

 煌月が駆け寄る。

「すまなかった……俺、数字でしか自分を測れなくなってた……」

「問題ない、目を覚ましてくれたのか。すべて見ていた……あいつに騙されていたのだな」


「また……一緒にやってくれるか?」

 煌月が手を差し出す。

「もちろん。俺らの炎は消えちゃいない」

 朱崎がその手を取り、ふたりは熱い抱擁を交わした。


 KPIが空中に浮かんで腹を立てている。

「人間の心……非効率! こうなったら両方まとめて洗脳してやる!」

 彼が手を掲げたその時だった。


「……俺を忘れちゃいないだろうな?」


 朱色のスーツにマントを翻した侍が、シュタッと現れた。

「スーツ侍・シンゲン! お前の仕掛けはすでに解いてある!」

「な、なんだと?」


「遅くなった。俺はもう……逃げない! 風林火山! 合理(ロジカル)調整(アジャスト)!」

 シンゲンが風林火山の盾を掲げて、紫色のカプセルに向けると、鍵が解除され扉が開いた。


「「「「シンゲン!」」」」

 4人がカプセルから脱出する。

「なに? しまった!」とKPIが慌てている。

「あの仕掛けは中からだと操作できないが、外からであれば容易に解除できるのだ」

 シンゲンが盾を下ろしてニッと笑った。


「クソッ! こうなったら……フォロワーインパクト!」

 KPIの紫色の光が再び降り注ぐ。

「風林火山シールド!」

 シンゲンが盾で防いでいる間に、ノブナガは炎の刀に力をこめる。


「よくも俺たちを、あんな地獄のような場所に閉じ込めたな……許さん! 爆炎(ばくえん)蜃気楼(イリュージョン)!」

 ノブナガの刀から爆炎が弾け、一気にKPIの周りを囲む。

「うぅっ……!」

 間一髪で避けて空中を移動したKPI。

「……次こそは」

 そう言って彼はクルッと回転し、その場から消えた。



 さっきまでの戦いが嘘であったかのように、広場が静まり返る。

「ありがとうスーツ侍たちよ。俺は大事なことを……朱崎のことを忘れるところだった」と煌月がお礼を言う。

「スーツ侍のおかげで煌月が助かった。感謝する。もう一度最初からシューズの開発をやろうと思う。彼と共に」

 朱崎の目には覚悟が見えていた。

 

「これからは力を合わせてシューズの開発を進めてくれ。そなたたちの友情は永遠だ」とノブナガ。

「かっこ良くて強くなれるシューズ、楽しみにしてるからさ!」とヒデヨシ。

「高性能――技術の向上を期待しておる」とシンゲン。

「無理はせずに、だが妥協することなく進めてくれ」とイエヤス。

「ふたりの絆が光るシューズ、待っておるぞ」とケンシン。


「さらばだ!」

 スーツ侍たちはシュタッと飛び立つ――

 月の光が彼らを照らし、5つの影は小さくなってゆく。


 

 ※※※



「シンゲン……もう大丈夫なのか」とケンシンが気にかけている。

「ああ、思い出したんだ。バルカーは言った。『悪いのはブラック企業団』だと。きっとバルカーも願っている。ブラック企業団から働く人を守ることを。だから俺は戦う」

「そうだな。俺たちには守るべき人がいる」とイエヤス。

「良かったぁ。心配したんだよ」とヒデヨシ。


「シンゲン、きっとお前の中でバルカーは生きておる。彼女も見てくれているはずだ。俺たちの活躍を」とノブナガ。

「うぅっ……泣かせるなよノブナガ」とシンゲンが言う。

「あ、シンゲンがまた泣いちゃうよぉ?」とヒデヨシも笑っていた。



 それから数日後。

 インフェルノ社とスパークリング社の共同開発は再スタートとなった。高性能シューズの名前は『SAMURAI』と発表される。

 

「これって、俺たちのことかな?」

 会議室で豊臣が呟く。

「高性能シューズと俺たちがコラボだなんて、最強だな」と武田も言う。

 徳川と上杉も頷いていると、そこに社長の織田が入ってきた。


「朱崎から土産だ」

 そう言って小さな袋を4人に渡す。中身は……新製品のブメランパンツ・接触冷感であった。あまりにも小さいサイズに4人は驚く。

「え……社長。これ履かないとだめなんですか」と豊臣。

「生地が少ないがこの素材は新しいな」と徳川。

「ピタッと吸い付く心地よさがありそうだ」と上杉も興味を示す。


「お前たち、明日からこれを履いてくるのだ」

「しゃ……社長! 本気ですか」と武田も言う。

「おっと、履いた時のイメージが湧かないだと? 俺のを見せようではないか」

 

 織田がベルトに手をやろうとするが――


「「「「社長ー! ここではダメ!」」」」

 

「問題ない」


「「「「問題あるぅっ!!」」」」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ