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カラスと水差し……姉妹の外科医  作者: 冬忍 金銀花
第一章 プロローグ偏  第二章 怪異偏  第三章 変貌偏  終章 結末

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ep.06 嬉しい……お友達が出来たかも


2024年4月30日 


*)雨模様……


 「貧乏体質な人」の部屋の特徴……あなたは大丈夫か? という記事を読んだ。


 古い電化製品を使って何が悪いの、買い換えが出来ないから当然でしょう。どれも当て嵌まらない私も貧乏人なのは間違いない、要らぬ記事を読んで損をした気分。染み付いているわよ貧乏人根性がね、放っておいてよ。


 モノが収納できていない以前にモノが無いのね、これからも増えていくことなんて考えられない。


 本当に東京はお天気がいいのはありがたい。でも今日は私の考えに呼応するようなお天気になった。


 大学を出て一番近いコンビニに行って帰る頃は雨降りだった。ショボンとしていたら……?


「あら、傘を持っていないの?」

「はい、近くだからと置いて来ました。」

「そ、入る?」

「え、いいんですか。」

「いいわよ、そこまでだから。」

「ありがと~……。」


 この日の相合い傘は実らなかったか、残念だな。



 五月の連休に入っているも、今日から明後日までは雨予報が出ている。自転車漕いで通学は出来ないからと徒歩を選ぶ。気温は二十度も上がればいい方だから汗も搔かないかな。


 歩けば分かる程に都内の交通量が減っていて、学生は勉強よ、と言い聞かせて綺麗な喫茶店に背を向ける。越してきてお店に入ったのは五本の指でも余るくらい、これでいいのよと言い聞かせると涙が出そうになった。元よりど田舎にレストランなんて在りはしないからね、自炊には耐性が付いているもの平気よ。


 予備のソックスと軽い靴をも持って出た。大学に着けば履き替える……つもりだったが、濡れた靴を何処に置いたらいいのやら。困った時は周りに頼れ集れだ!


「佐藤さん、」

「あら癒衣ちゃん、どうしたの?」

「実はね、濡れた靴を持って回る事が出来なくて……お願い。」


 大学にロッカーが在る無い……知らないよ。無いと仮定しての佐藤さん頼みに決めた。


「いいわよ、私のロッカールームで保管してあげるわ。」

「ありがと~……。これで不細工な姿を晒すことなく済みそう。」

「そうだね、ブーツを買えば?」

「イヤよ、幾らするしか知らないわ。東京だから高いよね。」

「癒衣ちゃん、もう方言丸出し、笑えてくる。」

「えぇっ……田舎娘に苦情は利きません。袋に入れています、よろしくお願いします。」

「うん、任せて。今日も頑張って。」

「はい!」


 佐藤さんは濡れた靴を何処に置くのか、受付の机の下に置かれた模様だった。


 学内の移動は流石に都会だけあって傘の必要性が感じられない。立派な建物に感心しながらに教室へと向かう。サークルの案内も目に付く季節は終わりを告げてもいい頃だ。


「お友達はサークルに入れば直ぐよ。」そう言う佐藤さんに同意が出来ないでいる。


 生化学分野の講義に「脳細胞の基本機能と改造」なる内容は私向きだと考えて必死になってノートをとる。脳と改造は自分で後付けにしておいた、どうだ凄いだろう。


 大学の食堂は個食だからさ、これって私に喧嘩売っているじゃん? 出会いが見えないとは寂しいぞ。


「今日は五百円のオムライスか、」


 自宅近くの喫茶店でランチを摂れば普通に千二百円とかしてしまうし、量だって少ない。美味しいだろうな~と考えたらダメだよ、一度でも入ればタガが外れてしまうのが白川癒衣なのだからね。


「う~……五百円。」

「あら随分と寂しい生活をしていますのね。」

「えぇ……何でも節約しませんとね。住居で偉く贅沢をしています。」

「何処に?」

「お墓の近くです、」

「?……そこの墓場の?」

「いえ、九段のマンションです。」

「はいはい靖国神社ね。」

「何も食べなくても維持費が高くて、それで申し訳ないんです。」

「私はカレーでいいか、少しカレーと言える辛さは美味しいよね。」

「え……アハハ……ご冗談を、面白いです。」

「食券……ありがとう白川さん。」

「え?」

「あ、私ね。う~ん才賀一族の才賀というわ、よろしく。」

「はい……あ、よろしくお願いします。」

「珍しいでしょう。」

「はい、あの雑賀衆の末裔とか?」

「才賀だから又従兄弟みたいなものね。」

「ふ~ん、分かりません。」

「神奈川県でもかなり少ないのよね。貴女は?」

「ど田舎で森の熊さんが出る県です。」

「熊本県ね、うんうん。熊牧場が実家なんだ。」


 岐阜県の白川村と言われると思ったら? マサカの冗談が飛び出してきた。もう私の想像の斜め下を行く例え話である。北海道と言われた斜め上だな。


「あはは……まさか。岩手県になります、佳いところですよ?」

「そうね、ここに座りましょうか。テーブルの衝立が邪魔よね。」

「私もそう思います。」

「白川さんってドイツ語が堪能なんですね、いいな~。」

「ただのスピーチは上手い下手の二通りしかありませんわ。覚えられたら満点ですが、発音はどうでした?」

「うん、百点を付けてあげる。私は英語も下手だから先は長いわ。」

「そうですよね、自宅で独学とかもう大変です。」


 私も英語はイマイチ苦手だからお相子かしら。


 一つのテーブルに衝立で仕切られていて、四人掛けでも個人の四人だけの利用となる。だから通路を挟んで並ぶ格好で座るのね。


「お礼は?」

「え?……あ、お褒めの言葉をありがとうございます。」

「どういたしまして。貴女が才媛だなんてね。」

「可笑しいでしょう?」

「私が二番手かしら……?」

「え~英語で苦戦はされてない、んですかね?」

「あ、言ったな~合格出来ればいいのよ。でも出るだけでは出来ないから大変よね。」

「そうらしいですね、特に女性は眼科なんかに逃げる人も多いとか。」

「外科は大変よ、大凡が人の扱いにされないからね。だから貴女も体力は付けておきなさい?」

「自転車通学ですが、歩いたがいいでしょうか。」

車が怖いわね(、、、、、、)、ふふ~ん……歩きなさい。」


 才賀さんは私が外科を希望していると知っているみたいだった。女同士で食べる昼食はこれで二回目となったから少し嬉しいかも!


「才賀さんは何科を希望されるのですか?」

「内科も外科も嫌いね、人体を切り……今話す事でもないわ。また今度ね。」

「はい、残念です。」


 人体を切り刻むカリキュラムは二回生になってからの履修だ、私だって豚肉を切る感じではいけないと考えたら……どうも不謹慎で申し訳ありません。才賀さんは内科も外科も嫌いであっても、実家が外科医院だったら跡継ぎにならなければならない。


 才賀さんのお父さんは有名な外科医であってこの女子医大病院に勤務していた。六年前まにとある外科手術を行って、それは倫理に反した手術を二件も行って女子医大病院から追い出されている。この病院も風評は怖いからとこの事件は闇と消された。



「自炊していますが、二回生になってからの履修で、もう自炊は出来なくなりそう。」

「アハハ……大丈夫よ。気持ち悪くなったね、出ようか。」

「はい。」


「次は微生物学免疫学かしら。」

「はい、同じです。よろしくお願いします。」

「うん、行こうか。」


 キラキラとした笑顔が可愛い才賀さんに、お友達になれそうな予感がしてきた。


 大学に入る時は一番二番であっても卒業出来て国家資格に受からないと意味が無い。これからは皆が同じ土俵に起つにしても希望する科によって成績はばらけていく、それは相対評価では点数が付けられない世界が広がっている。


 医学部は……絶対評価だけの世界なんだから。


 【お姉ちゃん、お友達ができたよ♡】とメールを送った。間髪を入れずに【良かったね♪】と返事が返ってくる。うん、これだけで幸せになれた気分がした。



 帰路に就けば雨は降らないで良かった。新見附橋を通れば幾分か自宅に近い。新緑と濠と電車に高層ビル、いつもの風景が広がる古い橋だ。


「見つけた……。」



 今日は曇天模様で夕暮れが早く訪れた黄昏時だった。天気予報は明日は豪雨みたいに降るというからいやだな。ピンポンダッシュに遭わないようにと、台所で夕食の準備を済ませて台所で食べる。


 お風呂を済ませて気分が落ち着いたとしても、居間のソファは二十時を過ぎないと座れない。何処からこんな高層ビルの部屋を覗いているのかが気になる。それも忘れかけたような毎日を送っている。


 二十一時から二十三時まではミッチリとお勉強をすればお腹が「グー♪」と鳴り、禁断のプリンを取り出して味を噛みしめる。これも癖になりそうだから止めなくてはならない。


 【ププッ……ププッ……】


 【宝くじ、当たってない?】とお姉ちゃんからメールの着信がある。【外れですー★】と返しておいたが、明日はチャンスセンターへ足を運んでみようと決めた。【バカ★】と返事あり……なんで?



 宝くじはお姉ちゃんが仕組んだ小細工だった?


 上京して言われるが儘に購入した宝くじは年月日と発売の年月日が違う、と気づいていなくてね、翌日は百万の当選だと言われた。私は年月日の違いに気がつく女の子ではない、これはお姉ちゃんが仕組んだ贈与のお金なんだな。


 「銀行へ行って下さい」とチャンスセンターの売り子さんが言うから、るんるんで銀行へ行けばシャッターは降りているし~、大学を抜け出して行かねばならないのは些か酷というものだろう。


 【お姉ちゃん、当たった!】とメールを送るも返事は明後日になっていた。きっと忙しかったんだと考えた。


 【ププッ……ププッ……】【癒衣の嘘つき、笑♪】と書いてあったな。




2024年5月8日……休講となったのでチャリを飛ばして銀行へ。 


「おめでとうございます、当行に口座をお願いします。」

「え~現金で、」

「本部に送りまして真贋の検査を済ませてからの、お振り込みです♪」


 直ぐにお金を出してくれない意地悪な銀行だった。夕食を贅沢にしていく……事は出来なかった。タケノコを買い込んで調理する、これくらいで十分だよ、お姉ちゃん。


 自分はミスしていたんだな、教科書等の出費を考えていなくて、それらの金額を残しておいた百万円から充てるしかなくて。今ではじり貧になっていたからとても助かった。


「これで夏服が買える、ルンルン♪」


 でも通学する服だけで他は買わないぞ、それ以外はお姉ちゃんのお土産で貰った地味服を着て過ごすんだ。


 確か「何でも置いているから使って」と言っていたはずなのに……お姉ちゃんの古着が少ない、どうしてだろうか。最近になって気になり出すも思考はそこまでだった。


 追求はしていなかったんだ。




2024年5月6日 


*)怜……才賀怜


 才賀さんと一緒になって図書室へ来ている。


「私の運命は常に揺らぐ。いやうつろう。」


 う~ん……けだし名言である。「蓋し」けだしと読むこの感じはアニメのアホ毛にも似た響きで好き。雨が止むまでの雨宿りに図書室へと来ている。学生が読みもしない本がもう~ぎょうさん在るから驚きだ。図書選考委員は仕事して欲しいと私は毒舌を吐く。


「優柔不断……プッ!」

「なにか言った?」

「いつも笑わせないで、お腹が捩れて大変よ。」

「ハッキリと言えば、可笑しくて笑うのも大変よと。」

「あら、言っていいのかしら?」

「う~ん、ダメ。序でに突っ込みも無しでお願い。」

「毎日の突っ込みなんて無駄だと思うな。」

「そんなことはないよ、お願いします。」

「癒衣ちゃん、バカなの?」

「はい、自分でもそう思います。」


 こうやって抜けた返事をするからバカみたいに思えるから、自分でも可笑しいと感じる。


 ……ププッププッ……


「あ、お姉ちゃん!!」


 この数日間で根を詰めて書き上げたから次が出てこなくなった。あ、ここは【後日消去文章】だよ。


「なんて?」

「うん、雨が上がったって。帰ろうか。」

「そうね。」


 2024年6月と7月は空梅雨で推移しているから、今日の出だしは史実に反している。だが偶々選んだこの日は雨が降っている。正解だぞ?


「才賀さん……寒い。」

「そうだね、梅雨寒と言うから走って帰りなさい。」

「そうする。三キロだものね、楽勝よ。」

「減量三キロは大変ね?」

「うわ~嫌み~。」

「最近……太ったわよ癒衣?」

「どうして帰路のキロが減量のキロに変わるのよ、んも~怒ったぞ!」

「ごめんね? 今日は予定があるからお八つに付き合えないわ。」

「うんいいよ、また明日ね。」


 才賀さんは古風なのか、おつと言った。普通は仮名書きなんだがな? 昔は「八つ時(やつどき)」に間食を摂ったから「おやつ」と言われるようになっても、二十二時でも私にとってはお八つなんだ。


 れい……才賀怜という名前だけあってさとくて頭脳がずば抜けている。が、何処かが抜けている。だから入試で二番手になった模様。本人は言いたくないのはね、問題が易しいと感じて手を抜いた、これだな。問題を解くにあたり馬鹿にしたら思わぬ処で足を掬われた……んだと思う。誰に? そこは意地悪な試験問題を考えた教授によ?


 ……でも現実は違った、実は私が「二番」だった。こんな秘匿情報が漏れ出る事はないから、烏滸がましいが「私が、一番だ」ぞ。


 その才賀怜さんは夏目坂辺りに住んでいる様子。最初の自己紹介の事覚えていますか? お墓の近くに住んでいると言えば、大学の近くか? と言ってきた。これこそ才賀さんの自宅近辺なんだと考えた。


「今度こそ所在地を訊きだしてやるのだからね、覚悟しておきなさいよね。」


 訊いても軽くはぐらかされて終わるのが常だったか。押しに強い子なんだな。



❖   ❖ 


 何故だか分からないが勉強中に寝落ちしていて、怖い夢をみてね、それで目を覚ましてしまった。実家の夢だったけれども、激しい雨が降り風も強く吹いていて玄関ドアが呷られて開くのね、仕方なく閉めに行けば外になにやら恐ろしいモノをを見た! モノは認識出来ても何がというものではなくて、もや~っとしたなにかだった。


 夢の現場が自宅の自室で寝ていたのではなくて、納屋の二階に寝ていたのね。この納屋の二階に寝ていて怖い夢を見たのは何度もあったな。


 プルプルと震えて寒気がしてきた。寝ると考えて時計をみたら声を出していた。


「二十三時なんだ……、」


 と一言ね。なんで遠い昔の夢と同じ夢を見たのかな。少しテレビを見て気が落ち着くの待つ事にする。二十三時を過ぎれば深夜番組へと移行するらしいが、殆どテレビを見ない時間帯の番組に興味は湧かなかったな。


 うっすらとだが母が出て来たようにも思えて複雑な思いに駆られた。夢に出てくるのは決まって母の方、どうして父が出てこない、ここは謎なんだとか考えてしまった。お父さん。


 お父さんみたく……ビールを飲みたい。でも冷蔵庫を開けて右手を差し入れるようなまねはしなくて、なんだか口寂しい思いもしていた。


「う~ビールもプリンも……ない!」


 やっぱ冷蔵庫を開けていた。



2024年5月9日……勉強部屋の机と椅子を寝室へと移動させた。


 どうしてって、ベッドに寝てネットで動画サイトを見ながら寝たいと考えたからで、軽い音楽を流しながら寝ると寝入りばなの怖い夢は見ないと思い出したからなんだ。


 波の音……煩いだけで眠れないのは何故? リラクゼーションにご利用下さいって言われても煩いのよね。ここは悠久の音楽……キタロウが最高かな? その中に綺麗な星空を流すものを観て感動した。


「わ~綺麗な星空、こんなにも多くの流れ星が見るられる処はいいな!」


 スマホで聴く音質と打って変わった素敵な音楽に心が救われた気分になったかも。独りの生活に慣れていたと思っていたが、なんだかお姉ちゃんを恋しくなった。これがホームシックというものかと妙に感心してみた。


「こんな時に素敵な男性が現れてきたら、即、恋落ちとなって行くんだろうな!?」


 女子医大を選択したのは後悔だったか、損した気分になった。



 【お姉ちゃん 怖い夢見た】とメールして寝てやった。返信は……【お姉ちゃんが出て良かったの?】


「なにこれ、笑わせてくれちゃってさ。んも~バカ!」


 でもこれ、お姉ちゃんが出て良かったの? とは、意味深で両方の意味に取れてしまう。何時もの姉貴のブラックジョークなんだろうか、考えてしまったぞ。


 お姉ちゃんが出る夢は毎晩でも見ていいんだからね、ちゃんと夢に出て来なさいよね。



2024年5月13日……大降りのお天気になった。


 今朝も傘を差して新見附橋を通れば声が聞こえた。



「見つけた……。」

「……、」


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