ep.02 白川遙子……
2024年1月2日 雪降る田舎の実家
*)白川遙子
私は白川癒衣、癒衣という言葉の響きがとても気に入っている十八歳の女子高生だよ? というけどね自己紹介なんて嫌だ、赤裸々に語るなんてできっこないわ。
そうだったわね、姉の名前を忘れていわ。白川遙子と言うのね。聞きしに勝る勢いで生きているような人だと思うわ。名前の意味はね、温厚でありながらもガメツイ性格、それでいて人の言うことを聞かない性格の、そうね……周囲(癒衣)には無頓着なダメ人間。
十二支は「狐」と言うような変人だった。神懸りなんだよね、と言う姉に信憑性は感じていなくてね。今では信じなくてごめんね、と仏壇に手を合わせている。
私が十八歳になってからだね、後付けをした姉貴の性格だ。親の意図している意味はね「優しくて周りの影響を受けにくく、世界へと飛び出すように」と付けられた。長子だものね、田舎から出て行け、そうして財を成して親の面倒を見ろ、だと思うわ。
だとしたらよ、癒衣の私は「結婚して実家に残りなさい、そうして親の面倒を見るのよ」だと思う。へ~そうなんだ、強かな親は母の方だからね。母は優しくてとても聡い女だったな。もしかして私……お母さんのお命頂戴してきたのかもしれない。罪滅ぼしに医者になって人を助けたいと思うようになって、それこそ言われたようにして医大を目指している。お医者さまはその先の目標なんだ。
あらら自己紹介をいつの間にしていたのかしら、だからもうお終い。
今から東京へ帰る姉を見送りに行き、そこで最後の立ち話をしている。
「最後を実家で過ごせていい思い出になったわ。」
「なに言っているの。でも私が出て行くから最後なのか~
「最後に言っておくわ。私は新婚なのよ、忙しいから電話に出られないと……心せよ!……ゥプッ。」
「なによそれ~だったらさ、ベッドから落とされたら電話を頂戴ね~?」
「離婚?……ないない。逆にしゃらしい~って私がお尻で落とす方だと思うな。」
「へ~とっても素敵な旦那様なんだ、妬けるな~♡」
「ふふ~ん、いいでしょ!」
「お土産が無くてごめんなさい。」
「荷物なんて持ちたくはないわよ。」
「うん、ありがと。」
「あ~私からの最後のお土産を忘れてしまう処だったか。」
「え~? なになに?」
「癒衣……私はお前を窮屈な世界から解き放ってあげるわ。ここに越して来なさい。」
「ふふ~ん、ありがとう。」
「予定していたの? 少しずうずしくないかしら?」
「どちらにしても、試験の日には押しかけていました~アハハ……、」
「はい、見取り図よ。下手でごめんね?」
「これ……なんのご冗談を? 川に橋が架かっていないね? 流石に歩けないと思うな。」
「あ~……ここを通るの、分かった?」
「うん!」
まだ見ぬ街の風景を消し去るような不味い出来の見取り図に、自分が求める正確さは全く解らない。
「東京で待ってる! 待たせるなよ?」
姉の遙子はそう言い放って部屋の鍵を手渡してくれる。
「直ぐに行くから、ご主人さまによろしくね。」
「あ~はいは。言っておきますよ。」
「いってらっしゃい。」
「待ってる……じゃぁいってきます。」
この時はこれが最後の遙子姉様だとは思ってもいなくて、マンションに越して行くまでは常にスマホからの指示だけだった。瀟洒なマンションの写真とノートの一枚に描かれた簡単な地図を見つめたのは、遙子お姉ちゃんを乗せる列車が遠くに去って見えなくなってから。
……大っきな窓……眺望が好いようだわ。
それを見たら……大っきな私の未来が眩しくて大きく拓けたように見えてきた。
大きく伸びをする。
「う、う~~ん……東京か~私も大学に受かれば花の女子大生♡ 最高だろ~な~。」
……ピュー……
「う~寒い、帰ろう。」
幸せそうな姉を見送れば私の心も温かくなってきた。
「さ~受験勉強を……頑張るぞ~~。」
と言って改札口に向かえば近所の小父さんが、大小で三個の荷物を置いて待っている?
「癒衣ちゃん、元気がいいね~。」
「あ、小父さん。あけおめ~。」
「娘が迎えに来ているよ、一緒に乗っていくかい?」
「はい、親子の仲を邪魔させて頂きます!」
「ハッハッハ~……邪魔するなら置いて行くよ。」
「え~大人し温和ししておきますからお願いします。」
「分かったよ、行くよ。」
「一つを持ちますね。」
「ありがとうね。」
私は必然的に善い行いをする羽目になる、要は荷物運びを遣らされる訳だ。
「はい、お邪魔します。」
「あら癒衣ちゃん、お姉さんは帰ったのね。」
「そうですよ~寂しくなります~ぅ。」
「家に来る?」
「いいえ、勉強あるのみ。」
「荷物を積んだぞ。」
「はーい、出発します。」
ここは東北でも豪雪地帯になる。だからと雪が多い事もない近年で、いわゆる地球温暖化の恩恵を受けていて今年も雪は少ないみたいだ。でもそれなりに雪は積もるものだ。
「キャ~、」
「おっと、滑ったか。」
「曲がり角でブレーキを踏むからだろうが。」
「キャ~、」x6
「…………、」x12
運転に怖くてキャ~と叫ぶのは私だけ? 小父さんは娘さんの運転に慣れているのかしらね。驚くそぶりが見受けられない。
娘さんはお尻をフリフリして進むからとうとう脱輪をしてしまうも、私はこの親子を見捨てる選択肢を選ぶ。
「小父さん、楽しかった。ありがとうございます。」
「おいおい……見捨てていくのかい。」
「お父さん、癒衣ちゃんは受験勉強をするのよ。ここで右手に怪我させてもいいのかしら?」
「俺の嫁に、」
「叩きますよ!」
親子にそんな冗談は出ていない、私は妄想逞しい女子高生なんだ。
「ただいま~。」
「……。」
また独りか、早く学校へ行きたくなった。私はスマホを手に持って画面を見つめている。
「未練タラタラ……こんな私を好きじゃないよね、お姉ちゃん!!」
ピラポピラポ……とスマホが鳴り出す。
「あ、お姉ちゃん? なんだ小父さんか~……はい……う~後ほど受け取りに伺います。」
小父ちゃんが忘れ物だよ、と言うから私の忘れ物かと思えば違った。合格祈願の贈り物でね、だるまさんの絵が描かれたお菓子だった。受験生にだるまさんはないよね?
だるまさんが転んで起きるのはいい、受験生が転んで起きるのは……やはり不合格よ。
この日もストーブで脚を温めながら勉強に励んだ。卓上カレンダーを一枚だけを捲る。来月の十五日は東京へと登り、お姉ちゃんのマンションに泊まる予定だ。
……あと一月が勝負だ!
2024年2月16日 東京千代田区
*)姉のマンション……素晴らしい
夜行列車で来た。東京は恐ろしいよ、ホームに降りてからが勝負! あは~聞いて聞いてやっと改札を出て駅前の通りに出る事が出来た。私が住まうマンションはね、ありがたい程に近い千代田区の神田川沿いに建っている。
「どちらまで。」
「分かりませんが、この地図で行けますか?」
「……お嬢さん、夢を見ているようですわ。住所は?」
「あ、はい、九段北4丁目5−20です。」
「その地図は間違っていたのですね、マンションの写真がありますので取り敢えずはそこまでお願いします。」
「この時季ですね、受験応援しますよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「着きました、二千二百円です。」
「はい、ありがとうございます。」
いくら自分が知らないとはいえ、この運転手さんは東京駅を出て南に下って、それから西周りの大回りしながら九段北4丁目5番まで来ていて、大きく遠回りをされていたわけだ。北回りだったら直ぐに着く距離だったのにね。
いや~実に残念な田舎娘なのだ。
ありがたくタクシーから降車させて頂く。とにかく狭い道で降ろされて頭上を見上げながらマンションを見て、視線を左手に落としてまた見上げる。これを何度も何度も繰り返してようやく目的のマンションに到達出来て良かった。
「へ~凄いじゃん。……鍵、鍵っと。これがマンションの玄関と部屋の鍵も兼用だなんて凄いじゃん。」
エントランスの何処にキーを差すのかが判らない? 冷静に考えて差し込む穴を見つけた。
……ピー……と言う音と共に解錠が出来た。綺麗なエントランスホールも綺麗で素晴らしい。
「だってさ、田舎人なんだからね。」
エレベーターで十二階まで……五秒ほどで止まる、あり得ない速さに驚いた。地上四十メートルだよ? 呼びベルを押して……玄関ドアを開けて……イザ!
「ピンポーン……。」
「お姉ちゃ~ん……居るの~?」
「……。」
「おっ邪魔しま~す……ぅわ~凄いお部屋だわ。うんうん凄いな~♡」
直ぐに荷物を置いて窓へと駆け寄るのよね。
……シャッ……シャッ……
「見晴らし……最高よ♡ お姉ちゃん! う~ん憧れのベランダ……東京は暖かいな~最高よ。」
風景と描かれた地図を見比べる……? そこには基点となる東京駅も目印さえもが描かれていない。川だって名前無しよ、これでどうやって行けと言うのかしら。その川に描かれた道路とは地下鉄だったという落ちだ、濠に落ちろではなくて良かった。
「タクシーさんも困惑するのも分かる~……。お姉ちゃんの性格も丸わかりよ、方向音痴だったんだね。」
これは音痴じゃなくてズボラなのかな?
そんな適当な地図であっても受験の大学までは歩いて行けそう、そんな予感がした。列車で凝り固まった身体をほぐす為と、今日の食事の買い出しにと受験の大学まで行ってみる事にした。でもその前にお部屋の探検よね。
「それと寝室は~……お姉ちゃんの下着が満載だったらいいな~♡」
入ってみたら……普通以下。殆ど残されていなくて残念。少し草臥れた下着に洋服類、高校生だった時の制服と大学時代に着ていたであろう服の数着が掛けられていた。
生活感が全く感じられない寝室に寒気を覚える。
「お部屋は綺麗だよね、埃もないわ、ありがとう姉貴!」
一つの写真立てに姉の笑顔が眩しいぞ、高校生だった時と大学時代の写真だと見て取れる。台所は~……道具は少ないな。家から持って来るのが大変そうね。でも綺麗なキッチンで料理が楽しくなりそう。
居間だけは少し使われた痕跡が激しいな? ここで過ごしていたのだと丸わかりな様子。カーペットの汚れが~あぁ~……。
居間には大っきなテレビがど~んと据えられていて、憧れのパソコンは……もう一部屋に置かれている。ここが私の勉強部屋となる訳だ。通路側で小さい部屋、これならば暖房の節約にもなりそう。
最後は女の子にとって大事なトイレ……普通に好い! 洗面所、ダブルのシンクで広々だ~朝シャンも楽に出来そう♡♡♫ お風呂は~実家と比較してはいけない……ように綺麗だった。ナメクジの跡がないよ?
もう一度ベランダに出る。北向きの部屋というのはとてもありがたい。朝日も夕陽も入らないのは寂しいと思えど、熱帯夜が続く都会のマンションは北向きが二百%もありがたい。
お花見はこのベランダから出来そう♡
【お姉ちゃん着きました】と姉にメールを送ると【ご苦労さま】と間髪を入れずに着信あり。
それから食器棚よりコップを取り出してお水を飲む……のは急遽取りやめた。だってお腹を壊しそうに思えたからね。テレビを点けてソファーで寛いでまったり。
何故にテーブルには白いエプロンが置かれているの?
「ひと休みしたから大学への道を確認しておかないとね。」
いそいそとマンションを出て、コンビニで串団子と地図を買い求めて受験の大学へと下見に行く。
2024年2月18日……受験。
2024年2月19日……受験。
2024年2月20日……受験、帰りにタヌキケーキを二個も買う。
帰りは余裕綽々だ、周りの景色が面白いように目に入ってきて、それで絆されてタヌキケーキを二個も買う。帰って丸々一個を食べて胸焼けをする。きっとお昼に食べた天ぷらそばに中ったんだわ!
翌日は昼前に起きてから頑張って食べて、それでコーヒーを飲み過ぎる。
2024年2月21日……受験から解放されて喜んだ日。
ゴミの収集なんてまだ知らないよ。袋にゴミが目立ち始めたからベランダに出しておいたが良かっただろうか。
2024年2月22日……夜行列車で帰る。
高校もまだ学期の途中だから夜行列車で帰る事にした。東京の散策もしていないという未練は……合格発表まで大事に残しておきたい。いや、電報で受け取るから上京しないんだったか。
2024年3月1日に姉から電話がかかってきたんだ。何時もの脳天気な口調は健在で安心する。もう旦那様と同居していてね、ラブラブだと言うのよね。また缶酎ハイを飲んでいるらしいのか、口うるさい程に舌が回る様子だ。
今回の電話は長くて、笑えて、安心できて善かった。
「滑り止め受けていないんだろう?」
「うん、落ちたら塾へ行く。」
「二回目の受験はね、浪人生は減点されてしまうからね。なにがなんでも一発で合格しなさいよ。」
「お姉ちゃんさ、それを今になって言う言葉なの?」
「え~受験は今週よね。」
「もう~……終わりました。後は天命を待つだけだよ。」
「わ~ごめんなさい合格祝いは贈れないのね。」
「いいわよ、素敵なマンションだけでいいのよ。」
「そう言ってくれると信じていたわ。合格することを祈っているわよ。」
「うん、三月の四日に電報が届くのよ、それまでは針の蓆だわ。」
「そうね~お姉ちゃんもそうだったな~。」
「嘘ね、独りの生活を楽しんでいた癖して善く言う~わ~。」
「知ってた、あは~妹だものね。また電話するね。」
「うん、待っています。」
あと三日だ、お姉ちゃんの電話で生き返ったような心境で心がウキウキしてきた。女子高生の友人らも何処に行く、就職が決まったよ~と言うのよね。タコが言うのよね。大学の合格発表まで数日、合格発表の遅い早いはあるけれども、卒業式前から地元を離れる事は……私には出来なかった。
……誰だかが不明? 噂だろうか、祝言を挙げた友人がいるらしい、嘘だと思いたい。
2024年3月4日……合格の電報が届いた、やったー!!
2024年3月14日……念願の卒業式の日に姉貴から電報が届いた、やったー!!
もう荷物の整理は済んでいる。合格しようがしまいがここから旅立つのは決定事項だ、嫌だよ~と言ってもこの家からは追い出される運命でもある。鬼の田中さんが阿亀ひょっとこになっていたんだ、良かった善かった。……田中さんが良かっただけだった。
2024年3月16日……引っ越し業者へ荷物を託す。
2024年3月17日……独り寂しく夜行列車に乗り込んで上京した。
2024年3月18日……東京駅に降り立ち、姉貴に着いたと報告のメールを送る。
東京駅を出てタクシー乗り場へと向かうと、【ププッ……ププッ……】とメールの着信音が聞こえた。
「お姉ちゃんだ! なになに、」
【駅を出て左に曲がって銀行前の宝くじを買ってからタクシーに乗りなさい】と書いてある。もう棒書きだ。言われたとおりに「バレンタインジャンボ宝くじ」の一枚を買わされた感じだ。指定どおりに買って前の道路でタクシーを見つけた。
コンコン……後部ドアが開かれた。
「よろしいでしょうか。」
「どちらまで。」
「はい、九段北4丁目5−20です。」
「朝の渋滞ですが、なに、直ぐに着いてみせますよ。」
「お手柔らかにお願いします。」
朝の交通渋滞をものともせずに快く走るタクシーだった。バスレーンを走ったらしいが知らないよ。
「着きましたよ、九百九十円です。」
「え?……速すぎます。それにこの前は二千二百円でしたよ?」
「は~お嬢さん、田舎丸出しに見えていたんでしょうね。すみませんね同業者が悪くて。」
「いえ、いいんですよ。大学の合格発表で受かりましたから。」
「良かったね~只でいいよ。次回からは俺を指名してくれよ。」
「周防 (すおう)さん……ですね。はい利用の時はお電話いたします。」
「今日から東京人だね、おめでとう。」
「ありがとうございます。」
いいカモにされていただなんてね知らないわよ。カモにされていたと気がつくのは本格的に転居した、この日だ。同じように四苦八苦しながら東京駅を出てタクシーに乗れば九百九十円でした~って落ち。それ以上にタクシー料金が足して二で割れば丁度って、冗談でも嬉しく思った。優しい周防さんで善かった。
今度は落ち着いてマンションへと入った。郵便が届いている筈だからと「1212」という数字を探してダイヤルを回す。……2548……ポストに大学の入学案内と恐怖の授業料の納付書が届いていた。大きな封筒を小脇に挟んで部屋にとうちゃ~く。
早速、着いた封筒を開封すれば、**+**+**+**+**=はぁ~??
「ギャポチャンポ……一千百万……円。う~おねぇちゃ~~ん、助けてよ~!」
気落ちしていたら紙袋が置いてあって……、
「チャンポギャポ……二千百万……円。う~おねぇちゃ~~ん、ありがと~ございました~。」
二千万ものお金は大学の学生課に相談して百万だけをとっておいて全額を納付した。
「あの~すみません。」
「はい、どうされましたか?」
「入学金ですが、余分にお金を持ってきました、前納は出来ますでしょうか。」
「♫~はい、この用紙に金額を書いて送金されて下さい♪」
「はい、帰り次第に送金いたします。」
九百万は前払いで利息も付かないけれどもね、特別な納付書を受け取り、無くすよりもましだと即日に送金しておいた。
学生課の受付では?
「ねぇ佐藤ちゃん、もしかして?」
「えぇ、あの子も首席ね。あ~憂鬱だわ。」
「どうして?」
「また……代表挨拶をお願いする身にもなってよ。」
「あ~はいは……い。また頑張れ!」
「そうね、素直でいい子だかた安心したわ。」
「渡したその納付書は……裏口じゃないの?」
「いやね~田所さん違うわよ。……あらイヤだ、大学の隠し口座ね。」
「だと思った。次年度に調整しておくからね、ピザパイをご馳走しなさいよ。」
「はい、承知しました、」
「アハハ……、」x2
上司への稟議書は田所さんが出す。他人の不始末は笑って書けるから面白いというのが理由だそうだ。
帰路に就くにあたり、付近の探索に出かけてスーパーとコンビニを発見するも、瀟洒なレストランには目もくれないで通り過ぎる。寂しいかも……★
2024年3月20日……引っ越しの荷物が届いた。部屋に入れたくはない男性だ、荷物は通路に置いて貰った。後は中身を引きずり出して箱も引きずって玄関まで運んだ。身の回り品と台所用品くらい。タンスなどはよ、田中さんの息子さんに婿入りの道具にされてと言って押しつけた。
桜並木の道を選んで、学内散歩へと毎日のように通っていた。部活なんて出来ない帰宅部で勉強するのみ。桜のつぼみが膨らみかけている、咲いたら綺麗だろうな~♡
「今日から頑張るぞ~♫」
2024年4月2日……人生初のお花見をした。
……ピンポーン……と呼び鈴が鳴らされて、すわお姉ちゃん!! と喜べば?
「クソが~ピンポンダッシュかよ、悪戯は勘弁して欲しい。」
毎日ではない、こうやって偶に呼び鈴が鳴るから気持ち悪い。だからと管理会社へと連絡して点検を受けるも異常なしだ。
呼び鈴が鳴らされのは決まって夕方の日没後になってから。でも、鳴るのも決まって居間で寛いで居るときのみ。勉強部屋にいたら鳴らないとか、見張られて居るようで気持ちが悪かった。
実家に帰る事も転居も出来ないのだから困った。私の日常が変わる……逢魔が時。




