第1話: 「勇者召喚?ただしスキルは地味系」
「もう無理…ほんと、限界…」
28歳の桜井香織は、今日もデスクに向かいながら心の中で叫んでいた。終わりの見えない残業、山積みの資料、そして無数の「至急対応」のメールが彼女を襲い続ける。体力も精神も限界だ。
「誰か…誰か助けてよ…」
そうつぶやいた瞬間、突然周囲がまばゆい光に包まれた。次に目を開けると、そこは見知らぬ場所。目の前には一人の魔法使い風の老人が立っていた。
「勇者よ!ようやくお出でになられたか!」
…ん?勇者?え、なにこれ、夢?
混乱しながらも、香織は何とか状況を把握しようとする。
「えっと…何が起きてるんですか?」
「おぉ、勇者様!我が【ゲンマール王国】が滅亡の危機に瀕しておるのです!貴殿は異世界から召喚された、我らを救う唯一無二の勇者にございます!」
「はぁ…勇者、ですか…」
香織は眉をひそめながらも、冷静に状況を見定めようとする。だが、どう見ても現実とは思えない。なんでこんなファンタジーな世界にいるのか…まさか、召喚されちゃった感じ?
「まぁ、せっかく異世界に来ちゃったし、現実逃避にはちょうどいいかも…」
そう自分に言い聞かせつつ、ふと目の前に光る画面が現れた。
【召喚スキルを確認してください】
「え、これってまさか…」
香織は恐る恐る画面をタップ(みたいな動作)してみた。そこには彼女が新たに得たスキルが表示されていた。
スキル: 経営コンサルティング
「えぇ!?魔法とか、剣とかじゃなくて…コンサルティング?」
なんかこう…派手な魔法とか、伝説の剣でバシッと倒すみたいな展開を期待していた香織は、これには完全に拍子抜けした。
「ちょっと待って、これってどういうこと?なんで異世界でまで仕事しなきゃいけないのよ…!」
だが、文句を言っても現状は変わらない。香織は溜息をつきつつ、改めて周囲を見渡した。どうやら本当にファンタジーな異世界らしい。そして、この国を救うために彼女が選ばれた勇者だということも…まぁ、半信半疑だけど。
「とりあえず、この国がどんな感じか調べてみるか…」
香織は魔法使いに連れられ、ゲンマール王国の首都に向かうことにした。
街に到着すると、香織は思わず目を見開いた。建物は古風で美しいが、その裏側に広がる光景は、まさに地獄のようだった。働く人々は疲れ切った顔で、重い荷物を運んだり、休むことなく労働を続けている。
「なにこれ…まるで私が働いてたブラック企業そのものじゃん…」
香織はゾッとしながらも、彼女の「経営コンサルタント」としての血が騒ぎ始めた。この国の労働環境は彼女が知る限りの最悪レベルだ。王族や貴族たちは労働者を搾取し、貧富の差はどんどん広がっている。
「えーと、これって私が何とかする流れってことよね?」
香織はしばらく悩んだが、結局、持ち前の冷静な判断力で決意した。
「まぁ、やるしかないか。とりあえずこの国、変えちゃおう。スキルが地味でも、できることはあるはずだし!」
そして、香織は王国の腐敗したシステムにメスを入れるため、まずは労働者たちの声を集めることにした。
「ちょっと、君!疲れてない?何時間働いてるの?」
「え、勇者様ですか?えっと…今日は12時間くらい働いてますが、それが何か?」
「は?12時間?それでもう帰らないの?」
「帰るなんてとんでもない!まだ8時間残ってますからね…ははは…」
「…どこかで聞いたような話だわ…これ、現実と変わらないじゃん…」
香織は改めて、この国の闇の深さを実感する。
「いいわ、分かった。まずはその労働時間を半分にしよう。休む時間を確保して、効率的に仕事を進めるんだから!」
「えっ、そんなことできるんですか!?」
「任せて!私はコンサルタントだからね!」
こうして、桜井香織の異世界経営改革が始まった。
「よし、まずは現場の声を集めて、改革案を作成して…次に悪徳貴族をぶっ倒す!…あれ?なんかこれ、勇者っぽくない?ま、いいか!」
香織は笑いながら、新たな冒険へと踏み出す。
「異世界経営革命」の第一歩は、まさにここから始まったのだ。
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