表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/196

47、出演者登録と神託者

「わっ! びっくりした! 水晶玉から出てきたんですか」


 この水晶玉を触ろうとしていたことを隠すかのように、私は神託者さんに早口で尋ねた。


「いえ、ただの転移魔法です。この水晶玉にそんな力はありませんよ。触ってみますか?」


(あっ、バレてる)


 神託者さんは、占い師のようなローブを着て、顔もベールで隠しているけど、すっごくニヤニヤしてることはわかる。私は恥ずかしくて無言で首を横に振る。今、声を出すと、裏返ってしまいそう。



「ゲームの案内人じゃねーか」


 みっちょんが、神託者さんに気づいて……めちゃくちゃ睨んでるよ。


「こんにちは、ミッチョさん、それにシグレニさんもお久しぶりですね」


 この神託者さんは、みっちょんと時雨さんも担当したのね。神託者さんは顔が隠されているから、久しぶりと言われても返事に困るよ。


「みっちょさん、彼はこの世界では神託者だよ。いつかの夢以来ですね、神託者さん」


 時雨さんの夢にも出てきたのか。そういえば、名前を授けた人の夢に一度だけ干渉する権利があると言っていた。私の場合は、2度も出てきたけど、あれはリゲル・ザッハからの連絡によるもので特例なのだと思う。



「神託者か何か知らねーけどさ。顔を隠してるのは、なぜなんだ? やましいことがあるからか」


(みっちょん……)


「ミッチョさん、神託者は素性を隠すことになっています。それは、ある勢力に潰されないためです」


「ある勢力って何だよ!?」


 みっちょんが即座に反論したけど、神託者さんは少し口元を緩めただけだった。


 神託者同士で争いがあるみたいだから、素性を隠すんだろうな。この仕事以外にも、きっと彼らには別の居場所がある。素性が知られると、その家族も含めて危険が及ぶのだと想像できる。



「まずは、仕事を済ませてしまいましょう。乙女ゲーム『フィールド&ハーツ』の登場人物としての登録をということでしたが、間違いはありませんか」


「ええ、間違いないわ。私達3人まとめて、出演者側の登録に来ました」


 時雨さんがそう言うと、みっちょんも素直に頷いている。私も、まだ迷いはあるけど、一応頷いた。


「わかりました。では、順に登録します。水晶の近くへお願いしますね。乙女ゲームのユーザー期間の長い方から登録しますので、えーっと、ミカンさんからお願いします」


「はい」


(緊張する〜)


 私達は順に、水晶玉に手を置き、出演者の登録をした。私の後は、みっちょん、そして時雨さんの順だった。時雨さんは一度アンストしてるけど、二つのアカウントの経験値を引き継ぐと説明された。



「登録は完了しました。これで、皆さんに話せることが増えましたよ。今の状態は、ゲームユーザーのアバターと会話できるだけの状態です。さらに物語への参加を付け加えていきます。どのような役を演じられますか?」


(役を演じるの?)


 もしかしてエリザも、悪役令嬢を演じていたのだろうか。そういえば、異世界交流の監視委員会っていうものに参加したっけ。


「役って、何なんだよ? ゲームに出てきたキャラクターは、皆、そういう役を演じているのか?」


 みっちょんが即座に反応した。


「ミッチョさん、この世界で生まれ育った現地人は、何も演じていません。配信された物語ストーリーは、神託者が描いた物語です。未来を見る能力のある神託者達の意見を反映して、乙女ゲームという世界観に合うように描かれた創作物です」


物語ストーリーは、攻略対象を選んで進めるやつのことか? でも、途中のミッションで、モンスターを何体倒せとかの条件がでてきただろ」


 乙女ゲーム『フィールド&ハーツ』では、数話読むごとに、ミッションがあった。そのミッションをクリアしないと次の話が読めない仕様になっている。


 私はチマチマとフィールドに出てたけど、課金者は課金アイテムを使って、ミッションはすぐにクリアできるのよね。



「フィールド部分は、これから、この世界にアバターが来て行います。物語ストーリーとフィールドでは、少しキャラクターに違和感がありましたよね?」


(そういえば、そうね)


 物語ストーリーでは、クールな攻略対象も、フィールドで会うと優しかったりした。そういうツンデレ要素だと思ってたけど。



「よくわからねーけど、まぁ、いいや。それで私達は、役者のように演じるのか?」


「ええ、そうです。演じるという表現が的確なのかはわかりませんが、皆さんには普段の生活とは区別して、乙女ゲーム用に行動してもらいたいのです。登場人物の追加募集は、新たな物語ストーリーを配信するための準備です。特徴がないと、キャラクターとして際立ちません」


(際立つキャラクター作り?)


 たぶん10周年という節目に合わせて、ドカンと宣伝するのよね。サービス終了が近いのではないかと噂されるくらい、かなり過疎ってたもの。


 とは言っても、配信直後はすっごいダウンロード数だったから、まだかなりのユーザーがいる。ログボ生活になっていた最近のイベントも、ちょっとやったくらいでは、しょぼいアイテムしかもらえないランキング50,000位にさえ入れなかった。



「それで、ゲームユーザーだった私達に、出演者側に回らせようと考えたのね。この世界に転生させたのは、それが目的なのかしら」


「シグレニさんは鋭いですね。当初の目的は、ゲームを通じてこの世界を気に入っている人達に来てもらいたかった、という単純なものです。ですが、悪役令嬢として描かれたエリザがより一層の悪役になるようにとの企てから、『悪役令嬢の妹』への襲撃が始まってしまいました。そこで、物語の方向性を多様化するべきだということになり……」


(えっ? 何それ)


 物語を描く神託者からも、私は狙われてるんだ……。だから出演者側に回れという提案を、リゲル・ザッハはしてくれたのね。彼も神託者だから内情を知ってるんだ。


「あー、もう、難しい話はいらねーよ」


 みっちょんが、神託者さんの話をぶった切った。すると、時雨さんが口を開く。



「ゲームでエリザを悪役令嬢として描いて、それで実際にはあまり悪役っぽくないから、妹を殺すということなの? その発想って狂ってない?」


「シグレニさん、残念ながらそう考える一部の神託者がいます。だから、私達はそれに対抗するために、新たな登場人物を募集したのです。『フィールド&ハーツ』をよく知る皆さんだからこそ、その役割をお願いしたいのです」


(何なの? これが神託者同士の争い?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ