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28、サラと親しい黒服グラス

「ミカン様、今日から、異世界人さんがたくさん来るみたいですよ。授業はすべてお休みだそうですぅ」


(運営さんのテスト開始かな)


「そう。じゃあ、サラはどうする?」


「サラは、もちろん、ミカン様とご一緒しますよぉ」


 この半年サラは毎日、私の付き添いで、授業に出たり図書館に行ったりしてくれていた。


(サラだけ、休みがないな)


 もう一人の侍女は、私が部屋に居ない間に掃除などをしてくれてるけど、それ以外は自由時間だ。黒服に留守番を任せて、外に出かけることもあった。黒服3人は、シフトを組んで交代で休んでいる。


 でもサラは、休みが欲しいとは言わない。私の付き添いは、使用人の中ではサラしかしないから、休みたくても休めないよね。


 秋の新入生の入学式の日は、付き添い不要だったのに、サラは会場で私を見守ってくれていた。半年前に私が襲撃されて以来、サラは休みをとっていない。


(責任を感じてるのかな)



「授業がないなら、サラは休みでいいよ?」


 そう言ってみると、サラは慌てたような血の気が引いたような顔をした。


「ミカン様には、サラは不要ですか」


(なぜそうなる?)


 なんだか泣きそうな顔をしてるサラ。すると、もう一人の侍女が、私の気持ちを察してくれたみたい。


「サラさん、ミカン様は貴女を心配してくださってるのですよ? この半年間、全く休みを取ってないでしょう?」


「ええ〜っ、サラはいらない子ですかぁ?」


(本気で泣きそうだよ……)


「サラさん……ミカン様の方がしっかりされてますよ?」


「ミカン様は、とっても優秀で、とっても努力家なんです! 私よりしっかりしてるのは当たり前です」


(いやいや、6歳児だよ……)


 扉を守る黒服が、ぷぷっと耐えきれずに吹き出した。サラさんに睨まれて、コホンと咳払いしてるけど。


 あの黒服って、たぶんサラさんと仲が良いみたい。黒服3人の中で一番若いけど、彼が内扉の警護をしているときのサラさんは、のびのびとリラックスしてる。


(あっ、そうだ!)


 二人が一緒に出掛けることができれば、ある意味デートよね? サラさんの息抜きになるかな。


 あの黒服は名前を授かってないけど、使用人達の間では、グラスと呼ばれている。黒曜石から作られたガラス製の食器が好きで、ダークロード家に仕えることになったためらしい。


 黒曜石から作られる食器は、とても高いみたい。でも、黒いガラスという感じで、オシャレなのよね。


 ダークロード家は、剣術に優れた貴族だから、黒服になるには、ある程度の剣の技術は必須らしい。ふふっ、治癒魔術に優れたサラとの相性が抜群な気がしてきたっ。



「ねぇ、サラ。じゃあ、今から買い物に行かない? 私、この町を歩いたことがないから、散歩しながら町の様子を見てみたい」


「えっ!? 町のお散歩ですかぁ? とても素敵なんですけど、護衛の人に連絡しないといけないから、ちょっとお待ちいただけますか」


「大丈夫だよ。みんな、異世界人さんのお世話で、グリーンロードの街に行くでしょ? ユフィラルフの町は、いつもよりも人が少ないと思うよ」


「だけど、危険ですぅ」


 サラは、やはり、私への襲撃から守れないかもしれないって、臆病になってるよね。



 私は、体内のマナの循環を覚えたから、たぶん魔法が使える。図書館でいろいろな本を読んだ。基本的な魔法は、乙女ゲーム『フィールド&ハーツ』と同じみたい。決められた詠唱、もしくは詳細なイメージで、魔法は発動できると思う。


 それに、左腕に刺さる枝から生えている白い新芽……えのき茸のことも、わかってきた。一年経っても色は変わらないから、邪木の可能性は消えたと思う。


 そして、聖木スポンジの木は生命の源でありマナの塊だといっていたギルドマスターの認識は、少し違うこともわかった。


 自然に自生しているスポンジの木は、ギルドマスターの言った通り、マナの塊らしい。ポキンと折ったら、ヘチマタワシのような見た目に変わり、ぎゅっと握れば魔力を大きく回復できるそうだ。また、水を含ませれば、治癒薬を生み出すみたい。それが生命の源と呼ばれる理由ね。


 だけど、人の体に刺さって新芽を出したスポンジの木は、自然に吸収されるまでは、その環境に適応しようとするみたい。スポンジの木の枝が、まるで意思を持つかのように生き延びようとする症例が、ちょっと難しい植物学の本にたくさん記録されていた。


 私の左腕に刺さっているスポンジの木が、人の悪意に反応するのも、そのためだと思う。悪意に反応するという症例は見つけられなかったけど、攻撃から守るために新芽が大きな盾のような形に変形する、という記録は見つけた。


 ただ、私の場合は、学長さんが封印してくれてるから、そんなオバケキノコにはならないと思うけど。



「ミカン様ぁ? 拗ねちゃいました?」


 私が考え事をしていると、サラは心配そうに顔を覗き込んできた。


「うん? どうしようかなって考えてただけだよ。黒服さんが一人付いて来てくれたら大丈夫じゃない? グラスさんは、剣もできるでしょう?」


「えっ? ぼ、僕ですか。は、はい。少しだけなら……」


 私があだ名を呼んだためか、内扉を守る黒服は、すっごく驚いた顔をしている。


「じゃあ、3人で、散歩に行きましょう」


「ええっ!? ミカン様、本気ですかぁ? 怖い人がいるかもしれませんよぉ」

 

「怪我をしたらサラが治してくれるし、剣を装備したグラスさんが側にいれば、怖い人も寄ってこないよ。あっ、二人とも私服に着替えて! 冒険者のフリをすれば、より安全だよ」


「あー、なるほど。確かに……ですが……」


 サラは一瞬納得したみたいなのに、やはり不安そう。私は常に狙われてるもんね。


 校内でも、サラはいつも警戒していた。大抵、私の方が先に、悪意のある人を見つけるんだけど。


「大丈夫だよ。私は目がいいの。最近は、怖い人を華麗に回避してるでしょ?」


「わかりました! ミカン様がそこまでおっしゃるなら、サラは本気で冒険者に変装しますよっ」


 張り切った表情で、使用人の部屋に駆け込むサラ。黒服のグラスさんは、私に一礼をして部屋を出て行った。


 扉の外側を守る黒服が叫ぶ声が聞こえた。でも、特に止められることはなかった。


(お嬢様のわがままは、止められないよね)



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