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170、ノキとふわもこちゃんの争い

 精霊ノキは、ふわもこちゃんを私の腕の中から排除しようと考えたのか、腕の中に飛び込んできた。


(二人というか二体は重い……)


「聞いてんのか? コイツは転生者じゃないんだよ!」


 みっちょんは、私の腕の中でノキと領地争いをしているふわもこちゃんに、詰め寄った。ふわもこなミカノカミは、ノキとみっちょんに同時にケンカを売られてるのね。



『おまえが指差している者は、提案者だな? 性別は、そっちの書類を持つ者と同じだ』


 ノキが乱入して来て、ごちゃごちゃしてる間に、ギルドマスターは、タムエル族の使者フェブナルさんとゲームの契約を始めていた。


 まだ、従えるという言葉の意味を聞いてないんだけど……。フェブナルさんは、私が反対したから契約を急いだのかな。


 未来を見る能力のあるりょうちゃんがニコニコしてるから、この契約は大丈夫みたいね。それに、ノキがこんな風に絡んでいくなんて珍しい。ふわもこちゃんは、ノキと仲良くなれるかも。なんだか似てるもんね。



「みかん、今、その陽炎かげろうは何て言ったんだ? 意味がわからないぞ」


 ふわもこちゃんは、みっちょん達の目には実体として見えてないみたい。私の腕の中でノキと押し合いをしてるし、温かな体温もあるんだけどな。


 みっちょんがそう言ったことで、マーガリンさんが慌てたようだ。彼女は契約を進めるギルドマスター近くにいたけど、こちらに駆け寄ってきた。


 通訳者という能力は、近くにいる方が正確に言語を変換できるのかも。


「みっちょさん、えっと、ミカノカミは、あの女性が男性だと言われたような……」


「どう見ても、無駄な色気のある女だろ」


「私にも女性に見えますけど……」


「脱がせるか」


(みっちょん……)


「ええっ? そ、そんなことは……」


 マーガリンさんは、みっちょんに振り回されてるよ。そんな様子を、リゲル、ザッハは面白そうに見てる。やっぱりリゲルさんは、みっちょんのハチャメチャな言動を気に入ってるよね。



 すると、りょうちゃんが近寄ってきた。


「みっちょさん、この顔に見覚えはないですか?」


「また、それかよ。これまでにも何度も同じことを聞いてきやがって。ちょっと私が忘れっぽいからって、バカにしてるだろ!」


(みっちょん……)


 りょうちゃんは、チラッと私に視線を移すと妖艶な笑みを浮かべた。そして、ギルドマスターの方を向いている。


「おい! 何とか言えよ! ちょっと色っぽいからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


 そう言われたりょうちゃんは、みっちょんを挑発するように色っぽい仕草をしてる。何か変ね。近寄ってきたのに、何も言わないの? あっ、タムエル族がいるからかな。




「よし、これで契約は完了した。別の使者に具体的な配信方法は説明済みだが、もう一度話しておこうか?」


『その必要はない。私は契約の使者だ。このパワースーツは、もらってもいいか?』


 フェブナルさんは、一応、時雨さんに確認をしてる。


「ええ、どうぞ。そのサイズは、この世界の大人には小さすぎるから、冒険者ギルドに流通しているよ。大きなサイズは流通しないんだけどね」


『それなら、ちょうど良い関係だな。我々に大きすぎるサイズは、冒険者ギルドで交換できるということか。すぐに戻って、近日中に配信を開始してもらおう』


(ん? ゲームだよね?)


 ゲームアバターが身につけるものは、現実には入手できない。当たり前だけどゲームだもの。


 たぶん私と同じ疑問を、時雨さんもマーガリンさんも抱いたみたい。


 すると、りょうちゃんが口を開く。



「タムエル族は、ゲームアバターではなく、直接来られるんですよね? ただ、ゲームであるという利点は、ゲーム内では死なないということです。その姿で参加されるのでしょうか」


 帰り支度をしていたフェブナルさんは、機械人形を身につけていた。


『この姿で直接参加するが、問題でもあるのか?』


「問題というほどではありませんが、現地人は、このゲームの存在を知りません。だから、見たことのない形の種族が大量に現れると、警戒するでしょう」


『配信中のゲームアバターも、現地人とは少し違うと聞いているが?』


「確かに少し違います。ただゲームアバターは、そのステイタスが成長するという仕様のため、初期は非常に弱いため、警戒は不要なのですよ」


 りょうちゃんは、フィールドでのバランスを考えているのかな? 


 確かに、強い機械人形が大量に来ると、現地人は侵略だと考えるだろうし、『フィールド&ハーツ』のユーザー達も、討伐を考えるかもしれない。


『だが、パワースーツのない弱き獣の姿で、魔物の巣に行くのは……』



「では、特殊な称号を取得されませんか?」


『称号? そんなものに何の意味がある?』


「この世界での称号は、いわゆる身分証であり、カードを発行することで分身を作ることが可能になります。タムエル族として代表者が称号を得れば、そのカードはタムエル族の皆さんに発行できますよ」


 りょうちゃんがそう提案すると、フェブナルさんは私の方を見た。あっ、私の腕の中にいるミカノカミを見たのね。



「おまえ、なぜそんな神託者のようなことを知ってるんだ? 神託者なのか?」


 みっちょんが、話をぶった斬った。すると、りょうちゃんは、ニヤッと笑うと、自身に何かの魔法を使った。


(メイク落とし魔法だ)


「あーっ! おまえ、りょうじゃねぇか! やっぱりネカマじゃなくて本物の……うぐぐ」


「みっちょ、うるさいぞ。話の邪魔をするな」


 リゲル・ザッハが、みっちょんの口を手で押さえてる。パッと赤くなるみっちょん。リゲルさんに後ろから抱きかかえられてるからかな。


(ふふっ、いい感じ)



「なぜ化粧を落としたの? りょうちゃん」


 時雨さんにそう尋ねられ、彼はふわっと笑った。


「タムエル族との契約が完了したからね。コソコソと隠れる必要もなくなった。まぁ、もう随分と前から、大丈夫だったんだけどね」


「メリルの脅威は去ったもんね」


 時雨さんの言葉に、りょうちゃんは、ふわっとした笑みだけを返していた。




「話を戻しましょう。タムエル族の……」


『タムエル族の王が代表となるべきなのだな? だが、今の王は、若すぎる……』


 フェブナルさんは機械人形の姿だから表情の微妙な変化はわからない。でも、困っていることは明らかだ。


『タムエル族の代表なら、われで良いではないか。赤ん坊の王よりマシだろう』


 ふわもこちゃんは、そう言った直後、私の腕の中からノキを蹴り飛ばし、ドヤ顔をしていた。



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