169、騒がしい者たち
『ミカノカミを抱いているその下等な種族の従魔だと?』
(あっ、マズイ)
「ミカノカミ、ダメですよ? 今、フェブナルさんは機械人形を脱いでますから……あーあ」
私の腕の中にいるふわもこちゃんが、またフェブナルさんに雷撃を落とした。そして、しまったという顔をしてる。
フェブナルさんは、雷撃でぶっ倒れたけど、ピクピクと動いている。感電死しちゃったのかな。ふわもこちゃんは神様だから、生き返らせることができるのだろうか。
(あっ、笑ってる)
雷撃を受けても、フェブナルさんは大丈夫だったみたい。強い雷撃じゃないもんね。部屋の中だから、ふわもこちゃんも配慮してたみたい。
『プププッ、うぷぷぷぷっ、あはは、あーはっはっは』
「デカいウサギが、急に頭おかしくなったぞ」
みっちょんが、ストレートすぎる指摘をした。雷撃は見えてないのね。
「みっちょん、今、ふわもこちゃん……じゃなくてミカノカミが、雷撃みたいなのをフェブナルさんに落としたよ」
「それで、ピクピクしてるのか。死んでないよな?」
(みっちょん……)
「ミッチョ、死んだ獣が笑うか?」
リゲル・ザッハが当然の指摘をすると、みっちょんは彼の方をパッと見て、思いっきり納得したように頷いている。
この二人の関係ってどうなってるのかな? みっちょんがリゲル・ザッハ推しなのは前世からで、今、リゲルさんの海賊団みたいな自警団の副団長だっけ。
恋愛感情の有無はわからないけど、リゲルさんがみっちょんを気に入っていることは確かだと思う。
『あーっはっは! パワースーツの性能は凄まじい! ミカノカミの戒めを受けても、風圧しか感じなかったぞ』
(魔導ローブだからね)
フェブナルさんは、やっと立ち上がった。風圧しか感じなかったのに倒れたってことは、相当弱い種族なのね。
魔導ローブだけでは、物理攻撃が防げない。やはり、機械人形の方が合ってるのかも。
私がこんなことを考えていると、腕の中にいるふわもこちゃんは、私をジッと見ていた。まんまるな目はかわいいんだけど……情報を集めているみたい。
『フェブナル、いつまで笑っている? もう前後の話を忘れたのか』
『あっ、そうでした。ゲームの契約をしなければ! メリルの魔物を抑えたというのは、本当か? こんな下等な種族に……いや、失礼しました』
フェブナルさんは、ふわもこちゃんに睨まれたのかな。でも、ニタニタしてて情緒不安定なウサギに見える。
「彼女の従魔は、元はメリルの奴隷だったんですよ。精霊ノキ様が、器を与え、彼を生かすことを決めたようですね」
するとなぜか、みっちょんが、りょうちゃんをキッと睨んだ。
「なぜ、アンタがそんなことを知ってるんだ? なんかモヤモヤするんだよな。私のことをからかってるだろ。言っておくけど、私の方が色っぽい女になるんだからな」
(何を言ってんの?)
みっちょんは、りょうちゃんに宣戦布告してるのかな。あっ、女装したりょうちゃんが、リゲルさんに妖艶な笑みを向けたりするから、嫉妬してる?
「へぇ、ミッチョは、コイツより色っぽい女になるのか。楽しみだな」
リゲルさんがそう言うと、みっちょんは真っ赤になって、何かを呟いた。その声は聞こえなかったけど、リゲルさんが優しい目をしてる。
(意外に良い感じかも?)
『ふむ、面白いな。このフィールド星雲で、我が知らぬモノはないと思っていたが、この個体だけでなく、この部屋の中にいる女性はすべて、別の星雲からの転生者なのだな』
(そんなことまで調べたの?)
ふわもこちゃんが、私を見てる。
「ええ、たぶん異次元かな? 前世は、魔法のない星にいたけど、この世界とゲームで繋がっていたの」
『なるほど、未知の星からの転生者か。我と同じ名を持っていたのに、神ではなかったようだな。だが、その名が、我をこの星へと誘ったのであろう』
「すごい偶然ね」
『いや、必然である。我をさらなる高みへと向かわせる出会いだ。アンドロイドというモノの方が、タムエル族の器に適しているのか。それをタムエル族が錬金するためには、価値観を学ぶ必要があるようだ』
ふわもこちゃんは、私の腕の中からふわっと浮かび上がった。すると、りょうちゃん以外には認識できなくなったみたい。
マーガリンさんが慌てた顔で、キョロキョロしてる。私から離れると、見えなくなってしまうのね。
『フェブナル、この星に我の神殿を作れ!』
(えっ!? 移住するの?)
『ミカノカミ、それは、この星を……はっ』
フェブナルさんの口をふわもこちゃんがふさいだ。内緒話か。確かに、マーガリンさんが見失ったことで、りょうちゃんにも言語が理解できなくなったみたい。
マーガリンさんの通訳って、すごい術だな。あっ、りょうちゃんの肩に、赤い光が一瞬見えた。彼の守護精霊ね。たぶん、言葉を伝えるんだ。
『他の星雲からの転生者が持つ知識は、我をさらなる高みへと導く。従える方法は、これから模索しよう』
(従える?)
私は思わず、口を開く。
「ミカノカミ、この世界の人達を従えるつもりなら、私達は何も協力しないわ。私達は、『フィールド&ハーツ』の世界観を守りたいの。それを壊すなら、タムエル族との契約は、お断りしますわ」
『なっ!? なぜ、下等な……いや、そうか、おまえは……』
フェブナルさんが何か言おうとしたけど、ふわもこちゃんが、また口をふさいだ。そして、私の腕の中に戻ってきた。
『ふむ、やはり、おまえには聞こえるのだな。植物に寄生されているためか、もしくは我と同じ名を持っていたためか……』
ふわもこちゃんは、実験をしたらしい。マーガリンさんは、ミカノカミが私に触れているときだけ認識できるようだ。
「精霊ノキの影響だと思うよ。ミカノカミと似た部分があるから、かも」
『ふむ、念話は波だからな。似た何かがあれば、そうなるか。それに、おまえの腕の中にいると、何もしなくてもマナが回復していく。我も、その植物のエネルギーを吸収できるようだ』
「スポンジの木は、マナの塊であり生命の源だからね。あっ、ノキ」
呼んでないのに、突然、ふわもこの精霊ノキが現れた。なんか、怒ってるみたい。
『おい! みかんの腕の中は、アタシの場所だぞ。いつまでそうしているつもりだ!?』
すると、みっちょんが、ガタンと大きな音を立てた。
「おい! コイツは転生者じゃないぞ! 他の女子はみんな転生者だけどな!」
みっちょんは、りょうちゃんを指差している。
(二人とも、何?)




