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135、空の星さんの様子がおかしい

「なぜ、こんなに広いんだ?」


 空の星さんの転移魔法で、私達は第三層に繋がる通路に移動した。


 転移魔法を使うほどの距離じゃないけど、魔物やモンスターに遭遇しない。影武者さんが転移魔法を指示したのは、メリルの襲撃者に邪魔させないためだと思う。


 そして第三層の空洞に直接移動しなかったのは、ゲームアバターに気づかれないようにするためね。通路なら、第三層の空洞にいるユーザーの画面には表示されない。


(二人とも賢いな)



「レオナード様、さっきの地震は、空間操作を施すエリア拡張魔法でしょうね。厄介な異世界人は、魔法が得意ですから。魔物が湧き出す壺を使うために、空洞を広げたのでしょう」


 レオナードくんの問いに、イチニーさんが答えた。イチニーさんはレオナードくんに説明しつつ、私達にも理解できるよう、丁寧な補足もしている。



 メリル星から来た異世界人は、魔法にけてるんだったよね。奴隷からクローン人間を作って兵器にするくらいだもの。


 以前、レグルス先生の姿の彼が襲われたとき、岩ゴーレムという魔物が使われたことを思い出した。あのときも、地震があったと言ってたけど。


 大量のマナが溜まりやすいベルメの海底ダンジョンは、魔導士には有利だ。あっ、だから、メリル星から来た異世界人は、ベルメの海底ダンジョンをすべて占領しようとしているのかも。


 そんなことになると、この近くにあるザッハの孤島が持たないという話も聞いたっけ。ザッハの孤島には、神が住むと言われていて、神殿もある。たぶん、この世界のチカラの中心なんだと思う。


 私は、精霊主さまの住居があるんじゃないかと思ってる。いずれにしても、侵略者に奪われてはいけない場所だ。




「何してるんだ? 早く助けに行こうぜ」


 みっちょんは、もう両手に剣を握ってる。


「ミッチョさん、たぶんタイミングをはかってるのよ。私達がこの人数で乱入すると、誰が敵か味方か、わからなくなるよ」


 時雨さんにそう言われると、みっちょんは剣を鞘に戻した。みっちょんは時雨さんの言うことは、ちゃんと聞くのよね。



 ベティさんが何かを言おうとしたけど、開いた口を閉じた。


(話しにくいよね)


 レオナードくん以外は、『フィールド&ハーツ』のユーザーだけど、ユーザーミーティングで私と同じテーブルだった人達は、イチニーさんのこともゲームを知らない現地人だと思ってる。



 すると、イチニーさんが口を開く。


「奴らが通るのは、この通路しかないですよね?」


「は? ダンジョン内は転移魔法が使えるぜ」


 即座に影武者さんが反論した。ほんと、イチニーさんをライバル視してるよね。


「それは大丈夫です。転移阻害をすれば、友好的な異世界人は脱出できますが、襲撃者達は転移できないですよ」


 イチニーさんは、時雨さんに丸くて透明な水晶玉のような物を渡した。テニスボールサイズね。


「まぁ! イチニーさん、こんなレアアイテムを持ってたんですか。この空洞の広さなら、転移阻害どころか魔法の発動を制限できますよ」


「ふふっ、このベルメの海底ダンジョン内で見つけました。あらゆる魔法が発動できない、ベルメのヘソと呼ばれる場所があるそうですが、その場所から流れ出た何かの結晶のようです。割れば、すぐに気体化して魔法の発動ができなくなりますから、取り扱いには気をつけて」


(ベルメのヘソの結晶?)


「わかりました。保護の魔道具を装着しても大丈夫かな?」


「ええ、大丈夫ですよ。素手で持っているとジワジワとマナを奪われてしまいますからね」


「ええ、そうね。知識はあるから任せて。奴らが逃げ出そうとしたときに使うね」


「いえ、追加で異世界人が来たときに使ってください。この通路を塞いでいれば、転移魔法で入ってきます」


 イチニーさんは、何を想定してるのだろう? 援軍が来たら、レアアイテムを使ってベルメのヘソのような状態にするってこと?




「キミは、詳しいね。奴らと戦ったことがあるのか」


 空の星さんは、イチニーさんに鋭い視線を向けた。


(なんだか、様子がおかしい)


「私は、奴らの呪いを受けて、死にかけたことがありますからね。シグレニさん、それは他の人の手には触れさせないでください。いろいろと危険ですから」


「ええ、わかってるわ。私が責任を持って預かるよ」



「じゃあ、女性3人は、通路の封鎖をお願いしますね。レオナード様は、彼女達を守ってあげてください」


「おう、わかった。任せろ」



 バリン!


 陶器が割れる音がした。


 バリン! バリン! バリン!


(魔物の壺?)


 シューシューと湯気のようなものが、空洞内に広がっている。ゲームアバターが叩き割ったのかと思ったけど、どうやら違うみたい。クローン人間達が、壺を放り投げてる。


(あれ?)


 ゲームアバター達の中に、淡い光を放ってない人が居る。あれは、メリル星から来た異世界人? どういうこと?




「さぁ、ミカンさん! 行きますよ」


 イチニーさんは、私の手を掴んだ。


「えっ? 女性3人は、通路で待機じゃないの?」


 すると、彼はニヤッと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


「女性3人は通路を塞いでもらいますよ。ミカンさんは、女の子なので」


「へ? 私だけ子供扱い? ってか、ベティさんは……」


(男性だよ)


 だけど、ベティさんは首を傾げて、可愛らしい仕草をしている。完全に女性のフリね。イチニーさんも知ってるはずなのに。



「自分は、通路担当をしますよ」


(あれ? やっぱ、おかしい)


 空の星さんって、影武者さんに匹敵するほど戦闘狂だと思うんだけどな。


「そうですか。じゃあ、3人で行きましょう」


「イチニー、それなら俺も……」


「いえ、レオナード様は、通路にいてください。妙な術を察知する能力は、私達の中で一番優れていますからね」


「あー、まぁ。だけど、ものすごい数の魔物だぞ」


 イチニーさんは、レオナードくんを通路に居させたいのね。トリッツ家の後継者だから、危険な目に遭わせたくないんだ。いや、レオナードくんには厳しいと判断したのかも。



「大丈夫ですよ。私は、カゲムシャさんと勝負するので」


「ふふん、俺の方が強いって言ってるだろ。行くぜ!」


 影武者さんとイチニーさんは、同時に飛び出していった。そして、次々と、魔物を斬っていく。



「おい、ミカンも通路担当か? イチニーは俺に、ここから浮遊するアンデッドを攻撃しろってことだと思うけど」


(なるほど、それもあるのかも)


「ん〜、私も一応、行ってくるよ。あの二人、またケンカしそうだし」



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