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130、ベルメの海底ダンジョンを占拠する者たち

 精霊ウンディーネ様はそう告げると、パチンと弾けるように消え去った。


(あっ、結界も消えた)


 ゲネト先生が張っていた防音結界も、パッと弾けるように砕けたみたい。やはり大精霊って、精霊ウンディーネ様のことを言っていたのね。



「あーあ、ウンディーネは、結界のすり抜け方も知らないのか。ガサツな精霊だな」


 少女の姿に化けた精霊ノキは、思いっきり呆れ顔を作ってみせた。ガサツか否かは関係ないよね? たぶん、ゲネト先生の防音結界は、中から何かが出て行くと壊れるようになっていたのだと思う。



「話も終わったことだから、問題ないだろう。ミカンさん、もう厄介事に巻き込まれないでくれよ? 解散だ」


 ゲネト先生がパンパンと手を叩くと、時雨さんやみっちょんが、歩き出した。今の声には不快な響きを感じたから、また、ゲネト先生は声に術を乗せたみたい。


「時雨さん、みっちょん、ちょっと待って」


「ん? みかん、帰るだろ? あれ?」


 みっちょんは、自分でそう言って首を傾げている。


「ゲネト先生が、言葉に術を乗せたんだよ。いつもの悪い癖なんだよね」


「げっ? 私は操られそうになったのか」


 みっちょんは、キョロキョロしてるけど、もうゲネト先生の姿はなかった。りょうちゃんも消えてる。


(りょうちゃん、大丈夫かな)


 私が心配させたせいかもしれないけど、りょうちゃんは、ゲネト先生とここに来てからずっと、表情を作っていた。紅茶病の話では辛そうだったし、メンタルが疲れてないか心配になる。



「あの二人は、亀の棲家を整えるために、ベルメのヘソに行ったよ」


 私の考えを覗いたのか、ノキはそう教えてくれた。


「そっか。あっ、カメキチに説明しなきゃね」


「説明はいらないだろ。それより、亀に尋ねることがあるなら、今のうちに済ませておく方がいいぞ」


(ん? 尋ねること?)


 ノキは、私に何かを聞けと言ってるみたい。だけど、ノキは口に出せないらしい。カメキチに、私の方が序列が上だと教えたせいだよね。



「ベルメの奴隷は、他には居ないのか?」


(影武者さん、ナイス!)


 たぶん、ノキはそれを尋ねろと言いたいのね。すると、時雨さんが口を開く。


「この付近にいたメリルのクローン人間は、みんな影武者さんの方へと誘導したよ。私の魔道具での反応があった奴らは、全部倒せたんだと思う」


「量が多くて大変だったぜ。まぁ、壺のモンスターは、みかんが強烈な魔法をぶっ放してたけどな」


(魔法じゃないんだよね)


 説明すると面倒なことになりそうだから、黙っておく。壺から出て来たモンスターを一掃したのは、私じゃなくてノキで……透明なえのき茸が丸飲みしたんだよね。


 異世界のマナを取り込むことで、ノキは、メリルの奴隷だったカメキチの身体を作ることができたのだと思うけど。



 私は、カメキチの方へと近寄っていく。


「カメキチ、このベルメの海底ダンジョンの中に、メリルから来た人が何人いるかわかる?」


「はい、ご主人様。あぅ、数え方が分からないので、思念共有します!」


 カメキチはそう言うと、淡い光球を私に放ってきた。それに触れると、たくさんの写真のようなものが見えた。


 私から見た景色とは違って、色に濃淡があるし、ゲームアバターっぽいものは、光の塊にしか見えない。現地人と転生者では、色の濃さが違って見えるのね。


 だから、メリルの奴隷やクローン人間は、私達を襲撃できたんだ。見た目があまりにも違うもの。


 ということは、メリル星から来た異世界人にも、私達のような転生者はすぐに見分けがつくってことね。


(魔法に長けている種族だからか)



「どれがメリル星から来た異世界人かわかる?」


「はい、この感じがメリルの奴隷で、これはメリルの人です」


(わ〜、便利ね)


 カメキチの説明がどの人物を指すかが、はっきりと伝わってくる。たくさんの写真は、ベルメの海底ダンジョンのあちこちのものだ。


 この感じが、という意味もよくわかる。オーラのような湯気のようなものが、身体から出てるみたい。序列を知るためのオーラだろうと直感した。


 メリルの奴隷のオーラは不規則にユラユラと、湯気のように見えるけど、指揮官らしき人達のオーラは全く揺れない。オーラの色も無数にある。メリルの人達の間では、オーラの色と安定性で、序列を表しているのだと感じる。



「みかんちゃん、どれくらいいるの?」


 時雨さんにも見せたいけど、私にはそういう魔法は使えない。


「えーっとね、たくさんいるよ。数えきれない。メリルの奴隷は、本体とクローンがいるんだと思うけど、カメキチにはその区別は難しいみたい。指揮官らしき人は、あちこちに2〜3人ずついるかな。映像の枚数が22枚だから、カメキチが知る範囲で、22ヶ所に潜伏してるね」


「かなりの数ね……。本当に、ベルメの海底ダンジョンを占領しようとしてるみたい」


「うん、あっ、そういうことか!」


 精霊様達が、カメキチの棲家を決められなかった理由は、きっとこれだ。棲家に出来そうな場所は、ほとんどすべてにメリル星から来た異世界人がいるのね。


「みかんちゃん、何?」


「ん? いや、カメキチの棲家が決まらなかったのは、これかなって」


「そうね、確かに。ベルメのヘソには居ないの? みかんちゃんがレグルス先生と一緒に罠にかかったとき、ベルメのヘソに……」


「ベルメのヘソには、人は住めないと思う。魔法が発動できないからね」


「なるほど。じゃあ、魔法に長けた種族は、潜伏しにくいね」


(でも、入ってくるけどね……)


 カメキチの棲家が、ベルメのヘソだなんて、大丈夫なのだろうか。あっ、逆に安全かも。




「ご主人様、精霊様から呼ばれました。もうすぐ転移魔法が発動するみたいです」


 カメキチは、不安そうな表情を見せた。


「カメキチ、もし、棲家の居心地が悪かったら、近くにいる精霊様にそう伝えなさい。ノキの耳に入るわ。そしたら、棲家を変えてもらうことができるからね」


 私がそう言うと、カメキチはつぶらな瞳をキラキラさせた。


「ご主人は、なんと慈悲深いのでしょう。ありがとうございます! 必ずや……」


(あっ……転移魔法の光)


 カメキチは、話の途中で、転移魔法の光に包まれた。だけどきっと、頑張るって言ったのよね。




「俺達も、そろそろ戻ろうぜ。こんな騒ぎがあったんだから、奴らは、しばらくは動かないだろ」


 影武者さんはそう言うと、空の星さんとベティさんに合図をした。


 私達は、空の星さんの転移魔法によって、みっちょんの村へと戻った。



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