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118/196

118、カードに特殊能力が記載されてる

「なぜ、夕方以降だと断言でき……あー、確かにそうか」


 さっきまで目を吊り上げていた影武者さんは、空の星さんの説明で納得したみたい。だけど、私にはさっぱりわからない。


「時雨さん、どういうこと? メリル星の異世界人は夜行性なの?」


 私は小声で時雨さんに尋ねたのに、彼らにも聞こえたみたい。


「みかんさん、メリル星の異世界人は、ユーザーを邪魔してゲームをサービス終了に追い込む気だろ? 朝から昼間にかけては無課金のライトユーザーが多いけど、夕方から深夜にかけては課金者が増えるからな」


「課金の有無って、サービス終了と関係あるの?」


 私がそう聞き返すと、説明してくれた空の星さんは、少し困った顔をしてる。


「おまえなー。運営は、課金者がいなきゃ成り立たないだろーが。ゲームはタダじゃないんだぜ? 課金者が離れてしまえば、サービス終了に追い込まれるだろ」


(影武者さん、怖いな)


 そっか。彼らは当たり前の一般論を話してる。たぶん『フィールド&ハーツ』は課金者がいなくても、サービスは終了しない。終了するのは、ユーザーがいなくなるときだと思う。


 でもこれは、りょうちゃんから聞いた話で、私がそう思っているだけかもしれないけど。



「影武者、おまえは言い方がキツイんだよ。ほとんどのユーザーは無課金なんだから、運営の収益構造は知らないんだよ」


「ふん、あまりにも無知だな」


(いや……まぁ、そうね)


 確かに、課金者が運営を支えているのよね。


「だが無課金者がたくさんいることで、課金の意味が出てくるんだから、そんな言い方をするなよ」


 空の星さんは、正義感が強くて、ちょっと先生っぽい所もある。神殿の人だからかな。




「何をケンカしてるのー。また、影武者?」


 ベティさんが合流すると、ガラッと雰囲気が変わった。彼は、今日は紺色のリボンでツインテールにしているけど、服装はワンピースではなく、冒険者風の軽装だ。でも、やはり女の子にしか見えないけど。


「は? 無課金者の無知を……イテッ」


 影武者さんの頭を、みっちょんがパチンと殴った。


「いつまでも過去の栄光でマウント取ろうとしてんじゃねぇよ。この世界では強い人が偉いんだからな」


(いや、みっちょん……)


 この世界では身分差が激しいから偉いのは……いや、今は冒険者のミッションとして、メリル星の異世界人を排除するから、強い人が偉いで正しいか。


「みっちょさん、正論だね。強い者が偉いのは正しい。冒険者ランクのことじゃないよ? 海底ダンジョンではランクは関係ないからな」


 空の星さんは、影武者さんを牽制したみたい。影武者さんは、Aランク冒険者らしいもんね。



「チッ、とりあえず、みんなカードを出せや。6人でウロつくより、3人ずつに分かれる方が効率がいい。海底ダンジョンの海からの入り口付近と、地下2階層に、待ち構えやすい場所があるからな」


 影武者さんがそう言うと、みんなカードを出している。それを見て、組分けするつもりみたい。


(私、恥ずかしいよね)



「みかんちゃんも出して。名前を気にしてる? みんな、みかんちゃんの家名は知ってるよ」


 時雨さんにそう言われては、拒否できないか。私は、手にカードを出して見せた。




 ────────────────


【称号】名を授かりし者


【名前等】ミカン・ダークロード(9歳)


【総合レベル】 91


【冒険者ランク】 C

【商業者ランク】 B

【製造者ランク】 S


【特殊能力等】 創造者


 ────────────────



 久しぶりに見たけど、かなりレベルが上がってる。商業者ランクや製造者ランクは、メラミンスポンジの影響だと思う。特殊能力がついてるのも、メラミンスポンジのことかな?



「みかんちゃん、もうすぐプラチナカードね。すっごく早いね」


「ん? たぶん、製造者ランクの影響だと思うよ」


 なぜか、みんな私のカードに釘付けだった。製造者ランクがSランクだからかな。私が……というか精霊ノキが、メラミンスポンジを作っていることは、時雨さんとみっちょんは知ってるはずだけど。



「みかんの製造者ランクは、100均だろ? 創造者って何? 100均の発明?」


(みっちょん……)


 私は、他の3人にはメラミンスポンジのことは、知られたくないんだけどな。


「私も久しぶりに見たから、特殊能力は今初めて気づいたよ。今度、ギルドマスターに聞いてみる」



 すると、空の星さんが口を開く。


「みかんさん、創造者という特殊能力は、守護精霊や加護が強いことを差してるんだよ。カードは身分証として使うから、重要なことは言葉を変えて記載するんだ」


「へぇ、すごく詳しいのね。あっ、そっか、神殿の人だから」


「それもあるけど、ランカーは皆、知ってるよ。情報は何より重要だからな。創造者は、見つけたら味方にするべきだね。でも、複数所持者には気をつけないといけない。欺く能力が高い」


「えっ? 複数所持者って……」


(りょうちゃんのことだ)



「おい、それって、りょうのことか?」


 みっちょんは、隠し事ができない。


「みっちょさん、その人って何者?」


「りょうは私達のフレンドで、しんた……じゃなくて、えーっと、とりあえず、りょうはりょうだ」


 みっちょんが神託者だと言いかけたのを、慌てて時雨さんが小突いて止めた。



「ふぅん、フレンドか。じゃあ、ソイツは無害だろ。ヤバイ複数所持者は、そのことを隠すからな」


 コミュ障なはずの影武者さんが口を開いた。


「りょうは、ヤバくないぜ。ちょっとニタニタするキモイところがあるだけだ」


(みっちょん……)


「ヤバイ複数所持者は、身体の複数所持者だ。どれが本体かわからないくらい高性能なダミーの身体を操る。忍者の分身の術どころじゃねぇぜ」


(ん? 何か変だな)


 りょうちゃんは複数所持者だけど、その見た目はすべて異なる。影武者さんの話は、まるでクローンのように聞こえた。あっ、複数所持者にはいろいろなタイプがあるんだっけ。



「影武者、その複数所持者ってのは、身体が増える分身のことか? それとも、カードの複数所持者か?」


「は? カードは一人一枚だろ? 何を言ってんだよ」


「影武者、それは有益な情報だ。メリル星の技術で、クローン人間を造ってるんだな。だから、どれだけ斬っても異世界人が減らないのか」


 空の星さんは、なぜか私を真っ直ぐに見たあと、他の人達をぐるりと見回した。



「2人ずつ3組に分けよう。メリルを潰す組、メリルを欺く組、そしてメリルを集める組だ」


 彼は、意味ありげに、ニヤッと笑った。



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