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116、新たな出会い

「主要なメンバーは、皆、集まったな? これより晩餐会を始める」


「ゲネト、何が晩餐会だ? ユーザーミーティングだぞ」


 今、私達は、港に停船している豪華客船内の、大きなレストランにいる。ユーザー本部と同じく、薄紫色の霧がうっすらと漂っていた。この霧は確か、精霊主さまの一部なんだよね?


 ゲネト先生とギルドマスターが、レストランの奥にいる。ギルドマスターは服を着替えていて、いつもの軽装に戻っている。



「みんな、席に座ってくれ。船屋の好意で食事を提供してくれた。腹が減っている人は、自由に食べてくれていい」


「ほらな、やはり晩餐会じゃねぇか。ミッチョさん、ありがとうな。俺は朝から何も食ってないから倒れそうだったぜ」


 ギルドマスターが仕切ろうとしているのを、ゲネト先生が邪魔している感じ。この2人は剣術学校で一緒だった時期があるから、親しいのね。


 りょうちゃんの姿はない。まだレグルス先生として、ベルメ海岸にいるのかもしれないな。




「みかん、こっちだ」


 みっちょんが私の腕を掴んで、窓際の方へと移動していく。その先には時雨さんがいた。


 時雨さん以外にも、こちらを向いて手を振ってる人がいる。みっちょんの知り合いだろうか。



「みかんちゃん、大丈夫? いろいろ大変そうだけど」


「時雨さん、ありがとう。大丈夫だよ」


 ちゃんと説明したいけど、知らない人もいるから、変なことは言えない。


 私達が座ると、その6人席は満席になった。



「みかんちゃんは知らないよね? 紹介するね。端から、空の星さん、影武者さん、ベティさんだよ」


(ひぇ、皆、有名なランカーだよ)


「みかんです。初めまして。ランカーさんだらけだと緊張する」


「みかん、私はランカーじゃないから気にするな」


(みっちょん……)



「みっちょさんも、初めて会ったときは同じことを言ってたね。私は、この漁村の村長の子に転生したよ。ここでの名前は、ユーザー名と同じくベティだよ。よろしくね」


「この村の村長さんの……。あ、はい、よろしくお願いします」


(みっちょんが睨んでるよ)


 みっちょんと仲が悪いのかな? でも、みっちょんは、すぐに忘れる性格だから、大丈夫よね。


 ベティさんは、確かゲームで一度、オープンチャットで話したことがある。落ち着いた大人って感じだったけど、今の見た目は、私よりわずかに年上という感じ。クルクル巻き髪に、ふわっとした可愛らしいワンピースを着ている美少女ね。



「空の星だ。ここでの名前は、ソラノホシ。この世界の発音だと、相撲取りみたいに聞こえて嫌なんだけどな。ザッハの孤島にある神殿が、自分の家だ。小さな教会みたいな感じだけどな。まぁ、よろしく」


「ザッハの孤島の神殿ですか。素敵ですね。よろしくお願いします」


「神殿とは言ったが、自分は、海竜の加護は得てないけどな」


(ん? どういう意味?)


 海竜の加護を持つライネルスさんは、ザッハの孤島の聖職者の家系に生まれた人だっけ。たぶん、その神殿ってことよね? 空の星さんは、聖職者ではないと言ったのかな。


 空の星さんは、イベントランキングではいつも5位以内に入っていた超有名人だ。毎月何十万も課金してるって噂があったっけ。みっちょんと同じく20歳前後に見えるけど、声は男性? 見た目は、男性にも女性にも見える。



「俺は影武者だけど。何? 名前を言うイベか?」


(俺って言った!)


 見た目は10代後半くらいで、髪の長い綺麗な顔の人だから、女性に見えるけど?


 影武者さんは、オープンチャットで話している所を見たことがない。いつも無言というか、ユーザー同士の付き合いをしない人だと思ってた。イベントのときは、いつ寝てるのかわからないくらい、ずっとログインしてたみたいだけど。


「影武者は、コミュ障だからね。彼のここでの名前は、カゲムシャ。これでもAランク冒険者だよ。暗殺ばかりやってるヤバイ奴だ。グリーンロードの本家に仕える近衛兵の息子だぜ」


「は? 空の星こそ、人斬りだろ」


(なんか、仲悪い?)



「ケンカしないの。この二人は彼女募集中だからか、女の子がいると、こんなことになるのよ」


 ベティさんがそう言うと、二人は口を閉じた。


「空の星さんと影武者さんは、男性なんですか」


「ん? 私達三人とも男の子だよ」


「えっ? ベティさんも?」


「うん、そうそう。私は男の子が好きだから、『フィールド&ハーツ』をプレイする権利があると思うんだけど、その二人はネカマだからね」


「へぇ……」


(まぁ、うん。そういうユーザーもいるよね)


 私はどう返せばいいか、ちょっとわからない。



「ふふっ、みかんちゃんが困ってるよ。空の星さんと影武者さんみたいな人は少なくないよ。いろんなゲームをやってたんだって。『フィールド&ハーツ』のイベは、報酬がいいし、アイテムはネットオークションで売れるからね」


 時雨さんの説明で、しっくりきた。バイト感覚で『フィールド&ハーツ』をする人もいるんだった。フレンド同士の贈り物機能があるから、アイテムをネットオークションで売る人がいるのよね。


「時雨さん、理解できたよ。確かに、なるほどね」


 ベティさんは男の子が好きで、空の星さんと影武者さんはアイテム売却目的で、『フィールド&ハーツ』をやってたのね。


 これも、開発者であるゲネト先生達の狙いかもしれない。女性だけでなく男性も、この世界に招待できるもの。




「……と、いう感じでよろしく。自由に歓談後に解散。以上だ」


(あっ、聞いてなかった)


 ゲネト先生が話を締めくくったけど、離れた席でしゃべっていた私達は、何も聞いてない。


「時雨さん、話、聞いてた?」


「さっきも同じ説明をしてたよ。明日から特別ミッションをイベに組み込むみたい。魔物が放出される壺があって、そこから出てくる魔物を倒すと、高価買取の魔石がドロップされるみたい。あと、ダンジョン内を浮遊しているストーカー貝の討伐数ランキングも追加だって」


「えっ? その壺は異世界人の……」


「海底ダンジョンに繋がる洞窟では、今、明日からのイベに有効な武器ドロップのブースト中だ。俺達には、ユーザーに味方のふりをして近寄る異世界人の排除をしろってさ」


 コミュ障の影武者さんが喋った! ゲームのことになると変わるのかも。



「テーブルごとにチーム分けされたよ。明日から私達も、異世界人の排除ミッションが始まるよ」


「チーム戦だ。ちゃんと働けよ?」


 ユーザーを妨害する異世界人を排除するのね。


(さすがゲネト先生、策士ね)


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