眼鏡
眼鏡のエピソード
椅子をグルグル回してどれだけ耐えられるか。
子どもの頃に大多数の人が経験したであろう遊び。
私も兄と一緒に例に漏れずその遊びを楽しんだことがある。
「グルグル、グルグル、グルグル…」
勢いづいた椅子は回り続けて、その遠心力でぐらついた私は椅子ごと倒れそうになった。
でも、危なかったが倒れなかった、よかった。
…よくはなかった。私は大丈夫だったが、眼鏡はそうじゃなかった。
持ち上がった手が眼鏡にあたり、顔から外れてしまった。
吹っ飛んでいった眼鏡はものの見事にタンスに命中。
レンズにひびが入り、フレームは歪み、私の眼鏡は悲惨な状態となってしまったのだ。
当時、子供用の眼鏡は種類も少なく、レンズも今ほどの耐久性もなかった。
しかも、私の目は特注でなければ手に入らない度数のレンズで
フレームと合わせてとても値段も高かった。
「あんたら…」
普段は感情をあまり出さない(と私は思っていた)母が涙ながらに声を震わせていた。
母はうなだれていた。
まあ、当然である。
あんな母の姿を見たのは、最初で最後だったように思う。
その時にもしかしてうちは貧乏なのか?とうっすら考えるようになった。
眼鏡は体の一部です。
もしかしたら眼鏡が本体という可能性も捨てられない。
大切に大切に扱いましょう。
読んでいただきありがとうございます。