表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインに国を荒らされました。それでも悪役令嬢(わたし)は生きてます。  作者: 古芭白あきら
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/75

19. それは天よりの贈り物


「ええ、構いませんよ」



 私はシエラを抱いて戻った足で、シスター・ジェルマに孤児院でシエラを引き取りたいと申し出ました。てっきり反対されると思っていたのですが、彼女は笑ってあっさりと頷いてくれました。



「自分で頼んでおいてなんですが……本当に宜しいのですか?」

「孤児院はその為の施設ですし、今は余裕がありますから。それに――」



 シスター・ジェルマは、私の腕の中で寝息をたてるシエラを覗き込んで穏やかに微笑みました。



「――きっとこの子は貴女の光になるわ」

「私の光ですか?」

「ふふふ、自分では気が付かないものね」

「?」


 シスター・ジェルマの笑いの意味が分からず、私は小首を傾げました。



「だけど1つ大きな問題があるわ」

「問題ですか?」



 シスター・ジェルマは困ったわと頬に手を当てていますが……なんでしょう?

 私には皆目見当がつきません。



「そうなのよ……実は私は赤児(あかご)を育てた経験がないのよ」

「えっ!?」



 それからの孤児院は戦場でした――



 孤児院では乳飲み子を受け入れた経験が無いそうですし、当然ですが私にも然様(さよう)な経験はありませんでした。だからシエラの養育は全てが手探り状態だったのです。



 最初はおしめを取り換えるのに悪戦苦闘しました。

 もらい乳の為に奥様連の方々にも頭を下げました。

 夜泣きするシエラを一晩中あやしたりもしました。



 シエラが熱を出して苦しんでいる時などは、私がずっと添い寝をして看病をしたものです。


 この時に初めて知ったのですが、赤子の熱を無闇に『神聖術』で治癒してはいけないのだそうです。シエラの発熱を知った私が大慌てで治そうとして、シスター・ジェルマに叱られてしまいました。



 こんな風に、シエラの子育てには本当に色々な事がありました。


 いつもシエラの姿を確認し、四六時中シエラの事を考え、毎日毎日シエラの為に駆けずり回りました。


 育児とは本当に大変なものです。ですが、そのお陰で私は様々な経験をし、たくさんの事を知り、そしてとてもとても心を満たす温もりをもらいました。



 そして、いつの間にか私は普通に生活を送れるようになっていました。気が付けば慌ただしい日常に、私の胸の奥にあったエンゾ様を(うしな)った悲しみが薄れていたのです。



「きゃっきゃっ……」

「ふふふ……シエラは今日も元気ね」



 シエラの無邪気な笑い声に、私もつられて笑みが(こぼ)れてしまいます。


 シエラの笑顔を見ると、私の胸の中に心地の良い熱が宿るのです。それは芯からじんわりと温めてくれる穏やかな、そして暗がりを微かな明かりで先を示してくれるような灯火。


 一寸先も闇夜で見えぬ迷い人にとって、それはどれ程心強いことか……



「これがシスター・ジェルマの言っていた光なのでしょうか?」



 彼女の言っていた意味が何となく理解できた気がします。


 私はエンゾ様を喪った悲しみに囚われ、一歩も前に進めなくなっていました。そんな私のもとにシエラはやってきてくれたのです。


 この子は私の行くべき道を明るく照らし、一歩を踏み出す力を与えてくれました。



 だから思ったのです。



 きっとシエラとのこの出会いは、情けない私を見かねたエンゾ様の天よりのお計らいだったのではないかと……



誤字報告ありがとうございます(∩´∀`)∩

おかしな点や誤字などの報告、感想などいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 赤子に強いエネルギーを当てるのは健全ではない気がしますし、当てたせいで免疫とか機能しなくなる可能性がありますしねぇ。当てていたらどうなっていたかと思うとちょっと怖いですね。 そして……誰か…
[良い点] 赤ちゃんを育てるのは本当に大変だから、落ち込んでる暇もなくて無我夢中の毎日……無気力でぼんやりしてられませんもんね(*'ω'*)
[良い点] やっぱりシスター・ジェルマはいい人ですね ミレーヌが子育てでショックから立ち直れると踏んでいたのかな これからミレーヌがシスター・ミレとしてどう生きるのか短編になかった部分が面白そうです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ