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転生ヒロインに国を荒らされました。それでも悪役令嬢(わたし)は生きてます。  作者: 古芭白あきら
本編

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12. 辺境の地、リアフローデン


 ガラガラガラ……



 私を乗せた馬車は辺境への街道をゆっくりと進んで行きました。



 王都で晒し者にされた恥辱が(こた)えていた私は完全に自失しておりました。


 鉄格子のみで視界を遮るもののない荷台から見える景色は流れていきます。それを私はただ黙って眺めていました。



 あの群衆の悪意に押し潰されてしまいそうになった王都から離れ、今はとても長閑(のどか)な田園風景に変化していましたが、それにも私の心は何も感じる素振りを見せませんでした。


 ですが、辺境までの道のりは長く数日も馬車に揺られていると、私は次第に自失から回復していきました。そして頭が働き始めると、今度は悲観的な思考に囚われるようになってきたのです。



 視線を落とした先に見えるのは、手に()められた枷――



「死にたい……」



 ――それは私の名誉と権利が奪われた証し。


 顔を上げた私の視界に入るのは、鉄格子だけで剥き出しになった荷台――



「消えてしまいたい……」



 ――私の尊厳を踏み(にじ)った象徴。



 生きる希望を失い揺れる檻の中で私はただ自死したいとばかり考えていました。


 ところが不思議なもので、死にたいと思い、死ぬことばかり考え、死のうと決心した筈なのに、いざ自決しようとしても体が動かなかったのです。


 未来への望みを失くし、全てに絶望した筈なのに死ねませんでした。


 矛盾しているようですが、人は死ぬのにもかなりの気力と活力が必要なようです。


 私は死を選べるくらいに思考は働いていましたが、まだそれを実行する程には回復していなかったのです。牢の投獄で疲弊した心身が皮肉にも私を生かしたのでした。



「辺境の地に入ったぞ!」



 先頭で馬を走らせていた騎士の通告に、他の騎士達の気も張り詰めたのが分かりました。



「ここがリアフローデンか」

「話に聞いたよりも普通だな」

「おい、気を抜くなよ」

「ああ、既にここは『魔獣』共の領域(テリトリー)だからな」



 今まで護送中に私の前で口を開かず黙っていた彼らが、急に(せわ)しく会話を始めました。きっと彼らも不安なのでしょう。



 ――辺境の地『リアフローデン』……



 ここは数多(あまた)の魔獣が跋扈(ばっこ)する、国から半ば見捨てられた領土。


 慣れない土地、不便で貧しい生活、魔獣の脅威に(さら)される日々……

 それが私のこの地へ訪れる前に持っていた辺境への印象でした。


 希望を失い、死んでもよいと自棄になっていた筈でしたのに、私も辺境に入ってから恐怖という感情が湧き上がってきました。



 ガタッ、ガタガタッ、ガタッガタッ……



 街道の状態が非常に悪いらしく、車輪がうるさく音を立て、車体が何度も跳ねました。


 道中での檻の外は、人の手が入った田園の長閑(のどか)な景観が多かったのですが、辺境に入るとまだ開拓途上の文明の匂いが感じられない自然の溢れる土地へと変貌しました。


 ここだけを見れば、騎士の一人が漏らした感想が正しく、確かにただ自然の多い普通の土地でした。しかし、ここは森の奥、岩の陰、あるいは空から、いつ『魔獣』が出現してもおかしくない大きな危険を(はら)んでいる場所なのです。



「私は立派な聖女になるべく一生懸命に努力してきました……」



 この様な辺鄙な場所へ追いやられ、私が涙ながらに頭に浮かぶのは王都で研鑽(けんさん)を積んだ日々。



あの娘(エリー)が遊んでいる間も私は聖女として真面目に務めていました……」



 エリーが聖女としての修練を(おこた)り、自分のやりたい『聖務』だけを行っていたのに対し、私は王家の為に、クライステル伯爵家の為に、民達の為に、そしてアルス殿下の為に聖女の務めを果たしていたのです。



「どうして私がこの様な目に……」



 アルス殿下はエリーを選び、王城では誰も私を擁護せず、お父様もお母様も私を見捨て、民衆は私を罵倒しました。彼らの全てを護ってきた筈なのに。護ってきた人々から何故これほど酷い仕打ちを受けなければならないのでしょう?



「私が彼女(エリー)の言う『悪役令嬢』だから?」



 いったいそれは何だと言うのでしょう?


 どれ程の善行を積み上げても、ただ『悪役令嬢』という一言で全て覆されてしまうものなのでしょうか?



「町が見えたぞ!」



 先行していた騎士からの報告で皆がほっと安堵した表情になりましたが、私はその余りにも荒涼とした町を見て絶望の色をより強くしました。



 ここは王都とは比べるべくもない文明の開けていない未開の地『リアフローデン』。それだけに人よりも『魔』の勢力が強いところ。


 聖女である私には土地に満ちる『魔』が強く感じられて、この場の誰よりも辺境の恐ろしさが嫌でも分かったのです。



 そんな光景を檻の中から見ていた私の口から、自然と諦念の言葉が漏れ出ました。



「ここで……私は生きなければならないのですね……」


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[一言] ああ、なんという事ヨ(´;ω;`)
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