3話「手綱(たずな)」
3話 「手綱」
探偵が出ていってから、程なくして、少女だけになった部屋に、来客があった。
コンコンコン。
「はい。」
ドアが開き、白のスーツに、水色のシャツ、それに紺色のネクタイをした、男が入ってきた。
「やあ、小鳥ちゃん、こんばんは。」
その男は、童顔で優しそうな笑みを浮かべ、少年の様な声をしていた。
そして、目の前の少女、小鳥に話しかける。
小鳥は軽く会釈する。
すると、少年の様な声をした男は、小鳥の頭を優しく撫でた。
「陽平は?。」
「…」
小鳥は男を見上げた。
「あ~違うね。探偵さんは?」
小鳥の沈黙を受けて、男は言い直す。
「お仕事です。」
「そうか、僕の紹介したお客さん、来たんだね。」
そう言われ、小鳥は首をかしげた。
「写真の人を探して欲しいって言ってた、おじさん、来たでしょ?」
小鳥は先程、1000万の報酬を要求した相手の顔を思い出し、首を縦に振った。
「あれ、安西さんの、お客さん?」
「そう、僕が紹介したの。」
小鳥の目の前の男、安西は得意気に答えた。
「あの人はね、僕の仕事の取引先の社長さんなんだ。」
「しゃちょうさん」
小鳥は初めて聞かされた言葉のように、ぎこちなく繰り返す。
「小鳥ちゃんは、この事務所から出たことないから、分からないかな?」
安西はかがみ、小鳥と目線を合わせた。
「社長さんて言うのは、一つの建物の中で働く人を、束ねる人の事だよ。もしくは、雇っている人かな。」
「やとう。」
「そう。僕が探偵さんに仕事をお願いしているようにね。」
「安西さん、社長さん。」
「そうだね。僕は探偵さんの社長さんだ。」
安西は少年の様な可愛らしい声で答えた。
「探偵さんが帰ってきたら、また来るね。」
そう言うと安西は部屋を出ていった。
そして、一人になった廊下で呟く。
「陽平、僕は君の手綱を離さないよ。」
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また今回の作品とは雰囲気の違う小説も、投稿しております。
タイトル「初心者マークの勇者」です。
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