表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖怪探偵 サイコロ眼(がん)  作者: 真ん中 ふう
2/10

2話「見抜く眼」

2話「見抜く眼」


少女は写真を持ち、薄暗い廊下を歩く。

そして、一つのドアの前に来ると、ノックをする。

コンコン。

返事がないのは分かっている。

少女は、部屋の中へと入った。

「探偵さん。」

そこには、机の上に、足を乗せて椅子に体を預けている男がいた。

白のシャツに、黒のベスト、そして、赤のネクタイを緩めて首に掛けている。

そして、黒のズボンに、手入れの行き届いた、黒の編み上げブーツをはいている。

男は乗せていた長くて、スラリとした足を下ろし、少女の持っていた写真を受け取った。

そこには、大学生位の、若い男が写っていた。

「ほんとに、受けるの?この依頼。」

少女は、抑揚のない、平坦な言葉で訊ねる。

「あぁ」

男はそう言いながら、無造作に伸ばされた髪を掻き上げた。

すると、意思の強さを感じさせる、切れ長の目と、整った顔がはっきりと現れる。

「くだらない、依頼。」

少女がそう言うと、男は口の端を上げて、鼻で笑う。

「人間てのは、そう言う生き物だからな。」

そう言って、男は壁に掛けていた黒のジャケットを肩に乗せ、部屋を後にした。

その男の後ろ姿を見送りながら、少女は呟く。

「さぁて、今回は幾つの眼で、解決するのかな。」



男は、人通りのない、路地に入ると、立ち止まり、ビルを見上げた。

男が見据えるのは、ビルの屋上。

ビルには使われる事の無さそうな、錆びた階段や、室外機を置くスペースの出っ張りがある。

男は軽く足を曲げると、一つ目の出っ張りに向かってジャンプする。

シュッ。

まるで瞬間移動のような速さで、一つ目の室外機の上に着地した。

そして、すぐ次の室外機へとジャンプする。

幾度かそれを繰り返し、目的のビルの屋上へとやって来た。

男は屋上の柵の前に立つ。

眼下には、色とりどりのネオンが煌めいている。

時折、車のクラクションの音が響く。

(うるさい奴らだ。)

男は苦々しい顔をしながら、顔を上げ、まっすぐ前を見る。

どこまでも続く、灯り。

そして、都会を包む、灰色の霧のような幕が広がる。

男は両目を閉じ、意識を集中させる。

すると、男の額に、横に一本の赤い線が現れた。

長さ、5センチ程の赤い線は、次第にメリメリと音を立て、粘膜を引きながら上下に口を開けた。

そこにはギョロンたした、両生類の様な眼が現れた。

その眼は、上下左右に動きながら、何かを探している。

「どこだ。」

男は呟く。

すると、動き回っていた額の眼が、ある方向を向いたまま止まった。

男の脳裏に、ぼんやりとした、景色が映る。

そこは、海岸の近く。

どこかのホテルの一室らしき景色が混じる。

それは、だんだんと色を持ち、輪郭を露にしていく。

そして、そのホテルの部屋に、一人の男性が見えた。

その男は、若い。

「見つけた。」

男はニヤリと不気味な笑みを浮かべ、持っていた写真を握り潰す。

閉じられた両目を開ける。

先程まで開いていた、額の眼が閉じられる。

「今夜のカクテルは、ブラッドハウンドか。」

肩に乗せていたジャケットを羽織ると、男はビルの屋上からダイブ。

近くのビルの屋上から、次のビルの屋上へと、跳ねるように軽やかに、駆けていく。

そして、夜の街の闇へと消えていった。











読んで頂き、ありがとうございました。

次回も是非、ご覧下さい。


また、今回の作品とは雰囲気の違う小説も、投稿しております。

タイトル「初心者マークの勇者」です。

こちらも、是非、ご覧下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ