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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
四章 ライガ獣王国 王都編
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因果応報は肩車の刑だった件

「いや、弱くない?」

試合を終えて返ってきたヨナが開口一番そう口にした。

うん。まあ、確かに弱かった。

だけどそれは僕達から見ての感想であって一般的な感想じゃない。


少なくともあの舞台には世間的にCランクとされる人達や2mを超えそうな筋骨隆々の獣人もいたのに。


そもそも戦いの勘が優れていたり、相当な目を持っていない限りヨナの方こそ場違いだと思っていただろうし。


え? その化け物じみた強さのヨナ《かいぶつ》を鍛えたのは僕だろうって?

シランシラン。僕の事からかってくる暴走武闘家男の娘なんて知らん。

「そうだね」

「何か不名誉なことを考えられた気がする」

「ないない」

「多分。『このことんでもない子に育っちゃたな』とか思われてる気がする」

「な、ないない」

「まあ、今回は不問にしといてあげるよ」


そういいながらも疑念の籠った瞳を向けてくるヨナ。

怖いです。

僕のほうが年上のはずなのに怖いです。

もっと威厳があれば立場が逆になってたはずなのに……

どうして。


あれか、奥さんの尻に敷かれている旦那さん方もこんな気持ちなのか。


最初は可愛いと思って近づいたら数年後には変貌を遂げて自分に牙を剥いていたみたいな。恐ろしや恐ろしや。


「さあ、始まりました。二回戦。一回戦では少女がまさかの即効で勝負を決めてしまいましたが、なんとあの少女は最近巷で噂の『紅と蒼の戦姫』の蒼だったようです。さてさて急遽始まった二回戦。一時は呆気にとられた会場も思わぬ猛者の登場に今は最高潮で盛り上がっています! そして私の気持ちも昂りまくっています! さあさあ、舞台に集まった冒険者達よ。次なる闘いでは如何なる姿を見せてくれるんだァー!」


大会の運営側は観戦者を退屈させないためか急遽前倒しで二回戦を行うらしい。

それにしてもヨナの紹介。

まるで強すぎたダークホースみたい。

ちょっとカッコいいなぁ。

羨ましい。


あ、でも『紅と青の戦姫』って呼び名はやめてもらいたいです。


二重の意味で。

一つ目は黒歴史になりそうなので

「だれが少女だって?」

ピクピクと口端を吊り上げて怒りを露わにするヨナ。

「待って」

もう一つはこうやって、ヨナがガチ切れするから。

お願い。お願いだからヨナさん。こんなところで殺気を放たないであげて。

周りの人達が怖がってるから。



「うーん。フィーちゃんは可愛いなあ。命拾いしたな、実況の女。フィーちゃんの可愛さに感謝するんだね」


デレデレと柔和な笑みで殺気を留めるヨナ。

それを見てホッと胸を撫でおろす。

マジで追放になったらソフィーとの約束も果たせなくなるしね。助かった。


「よっと」

「ふぇ!?」

そう安堵したのも束の間だった。

いきなり視線が高くなったと思ったらヨナにオブられていた。

それもただのおんぶじゃない。

お父さんとかが子供にやるようないわゆる肩車の姿勢で。


「ちょっと」

「気にしない。気にしなーい」

いや気にするよ!

視線が急に高くなるし、そのせいで周囲の人たちがこっちを凝視しているのもわかっちゃうし。

要するに恥ずかしい。


こっちはコミュ障で繊細で内気な人見知りの吸血鬼なんだぞ。

ヨナは僕の事を悶え殺そうとしているのか。

「うぅ……」

思わず赤面してヨナの頭に顔を埋めてしまう。

「もー。フィーちゃんてば猫みたーい」

羞恥プレイにさらされたせいで大会をまともに観賞できなかった。


僕を注目なんてしないで大会を見ろよぉ。

微塵も目を離さない周囲の人たちにそう念じるしかなかった。


なぜヨナの暴走を止めようとした優しい僕がこんな目に……

解せぬ。

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