獣王国 最南端『ソル』の百合? 異文化革命
「なあアイン。例の宿で『赤と青の戦姫』見た?」
「いんや。さっきは奥で執務作業をしていたからな。なんだ、まさか二人の間に進展があったのか?」
「そうなんだよ! なんかななんかな。前まで赤い子が指揮とってたのに最近はそれがめっきり減ってヨナさんにからかわれてるみたいなんだよな。」
「それは、また萌えるな」
男たちがしている会話はまるで好きな趣味について語り合う現代人のようだ。
ちなみに萌えるという言葉は『ソル』の冒険者たちが最近考えた言葉。
炎のように胸が熱くなる。幸せだ。などから意味を取って『萌える』という言葉は『ソル』の冒険者の間で日常用語になりつつある。
「おう。情報伝達したのは俺だからな。新しく記事書いたらすぐ俺にくれよ?」
このギルマス。
暴君とか言われながら隙間時間にヨナと吸血鬼を見てからその二人の絡み合いを参考にした薄い本を書く趣味を見つけたらしい。
今ではその手の人気作家になりつつある。
それどころか副業であるこちらも本業と同じくらい稼いでいるとかいないとか、ちなみに嫁達には黙っているらしい。
バレなきゃどうってことないの極みのようなことをする、大胆な男である。
「でもさ、赤い子がやたらと飯を頬張ってるなあって思ってたら、ヨナさんが手を引いて出て行っちゃったんだよな」
「おー。いよいよ本格的な告白でもするのかねえ」
「さー。ま、なんにしても楽しみだよなー」
「おう」
男たちは会話を弾ませる。
それはまるで毎週のアニメを生きがいにする現代人のようであった。
獣耳をダラーんとさせてなんも可愛くない自分に凹んでいる。
既にこのギルドはヨナとクローフィーのいちゃつき模様に感化され獣王国屈指の謎ギルドになっていてそしてなぜか、近隣の町からも冒険者が押し寄せて一種の観光名所のようになっている。
まるでアイドルのもとに押し寄せるファンの大群。もしくは記者のように。
「あ、そうだギルマス。ボクら今日でこのギルド最後だから。よろしく」
そして唐突に『赤と青の戦姫』は町から出ていった。
しかし熱烈なファンの群れがついて後を追いかけ吸血鬼及び、男の娘に発見され半殺し状態になる輩がいたとかいなかったとか。
真相は定かではないが、少なからずヨナ達は『ソル』の町に影響を残して去っていった。二人が町から消えたのをいい事に、土魔法で二人の姿を象った人形や二人が残した功績や事件、騒動が纏められた紙。
異世界の町に小さなオタク文化が根付いたのはクローフィーの知らぬところ。
それをみたどこかの戦闘狂が大笑いしながら購入して去っていったとかなんとか。
「さあさあ今度のはアレンさんの最新作、『ヨナとクローフィーの日常?』年齢制限在り大人バージョンだよ」
「マジ、あのアレンさんが」
「ヒャッハー! この瞬間のために今日を乗り切ったんだぜ俺は」
「あの、私も買っていいですか!」
「これ最近話題のアレンさんのか。いいなー僕も欲しいなー」
「ひょほ。店主や儂にもそれを一冊おくれや」
さらにはグッズ専門の店が経ち並び、どれも繁盛していい感じに売り上げを伸ばしているのだ。
晴れ渡る空の下。
今日も『ソル』の町は平和で平常運転である。
ブクマが444。
つまりゾロ目。
なんかいい事ありそう。