衝撃の事実
突然だけど僕たちは今、浴槽付きの宿に滞在している。
どうして急にこんな話をするのかというとそれは僕が今から世紀の大決戦に臨むから。
中世の時代。というよりこの世界ではお風呂は共同スペース簡単に言えば混浴が当たり前なんだけど、宿によっては予約制で個別、もしくは団体で入浴できるサービスが存在するんだよね。
そういう宿は大抵水晶に火と水を掛け合わせた属性魔法、まあそれがなくてもお湯を作れる魔法が使える人がだれかしらいるんだけど。
で、つまり何が言いたいかというと僕達が取っているのは個別予約制でお風呂を楽しめるプライベート入浴なわけだ。
しかし、ヨナが恥ずかしがってか一向に一緒に入れてない。
それで世紀の大決戦といえば。もうわかるよね?
そうNOZOKIのお時間である。
扉にかかる使用中の札を無視。
中に入ってばれないようにそーっと浴槽のほうへ進む。
わりと小さな浴槽だけど湯気さんが仕事しているので僕の姿は見えていないはず。まあヨナも見えないんだけど。
木製の小さな浴槽から少し距離を取って屈みながら恐る恐る顔を覗かせて……
「なにしてるの?」
後ろからかかる慣れ親しんだ声。
なるべく刺激を与えないようにそーっと振り向くと、そこにはいい笑顔のヨナさんが、なお、目は笑っていない模様。
「えと」
どうにかして誤魔化そうと口を開いてみたけど言葉が出ない。
うがー。まずいまずいぞこのままではヨナの信頼が急下降して地面を掘り起こして星の反対側に出てしまうかもしれない。
「テへ?」
どうしようかと迷った挙句取りあえず作り笑いをして頭に手を置いておく。
いわゆるぶりっ子ポーズである。
「いや、テへとか言われても。ね」
「……」
「今度は黙まり?」
「す」
「す?」
「すみませんでした……」
「……はあ」
浅く息を吐きだすヨナ。お?これは許してもらえるパターンか。そうであってルート分岐はなしよ?
「……別に悪いとは思ってないんだけどね。でもさ、こういうのは普通逆なんじゃないかなって」
ぎゃく。ギャグとかギャングの間違いじゃなく?
「どゆ意味?」
ヨナの言う逆の意味が分からず続きを促すように問う。
「どうって、そのままの意味だよ。ボク男だし。」
ヨナの言った言葉が脳内で処理しきれず男という言葉だけが反響する。
オ―トーコー。それって新種の魔物じゃなくて?
それかオトーコという新手の冒険者でもなくて。
男。ってこと。ヨナが?
いやいやいや。信じられんし、こんなかわいい子が男ってそんな男の娘じゃあるまいし。
そんな北極に来たつもりが砂漠のど真ん中に投げ込まれてたみたいな話。あるわけないって。異世界でもやっていいことと悪いことがあるって。
美少女の損失は世の男たちにとって世界の損失だけど、男の娘の消失は古今東西どこを探しても惜しむ人しかいないって。
……何考えてんだ僕。
「—ちゃん。フィーちゃん聞いてる?」
思考の沼にはまりすぎて出てこれなそうになったところをヨナの声に引っ張り出される。
「うん……」
「その様子だと、ボクが女の子だと思ってた?」
「はい!」
「なんでその返事だけ元気なのさ…… 自分でもちょっと気にしてるのに。」
「まあ、なんにしてもボクは男だから。」
「えー」
「えー。じゃないし。それに、その、さその時が来たらボクから伝えるから、ね?」
「え、それって遠回しにこくは――」
「大丈夫、いつかちゃんと男であるボクがリードするから。」
そういって僕の口を人差し指で塞ぐヨナ。
待って、ヨナのいたずらっ子の笑みのような、でもどこか艶やかな顔が近すぎて、緊張と興奮で頬が赤くなってる気が。
「ん、顔赤いね?」
指摘されるてより一層体が熱を帯び始める。
それと同時にヨナになら、なんて思考も沸いてきて徐々に陶酔感と悦楽の中に堕ちそうに……――
「あれ、気絶してる。からかいすぎちゃったかな?」
その後、寝室に運ばれたクローフィーが一日中ベットで悶えていたとか、いなかったとか。
オマケではない、唯の独り言
作者 「男の娘を出す予定はなかったんや……」
吸血鬼
「男の娘とは架空の存在であり、現実にいることは有り得ない。だからヨナは自分を男だと思い込んでいる女の子に違いないんだ。そうでないと僕の吸血鬼としての威厳が崩れる事になり、ソフィーの姉としても(以下略)」
作者 ちなみにヨナは本当のホントに男の娘です。
異論は認める。