ウルフ狩り
やってまいりました草原でございます。
右手をご覧ください。ウルフが獰猛な唸り声を上げて威嚇しております。
左手をご覧ください。醜い顔をした狼が今にもとびかかってきそうです。
斜め後方をご覧くださ――
四方から跳びかかってきたウルフを『裁きの血剣』で一閃します。
するとどうでしょう。ウルフ達が首を断ち切られ血を噴き出して地に沈み、物言わぬ肉片と化したではありませんか。ああ。なんと哀れなウルフ達。
僕に手を出したばっかりに。しかしこれも仕方のないことなのです。これは自然の摂理。弱肉強食。弱いものは強いものに虐げられる運命なのです。
ああ。残ったウルフたちが僕の力に恐れ、慄き、逃げ出していきます。自然界のなんと残酷なことか……
……はい。ふざけてる間にウルフ討伐完了。
資金確保!
やったぜ!(サ〇シ)といいたいところだけどそう、うまくはいかないんだなー。
「っや!っふ!」
必死に僕が貸した血剣を振るうヨナ。
僕が作り出した血剣なので切れ味は保証するけど、一発も当たっていない。
「下手」
「だってさあ。むずかし、いって、これ!」
ウルフの対応をしながら途切れ途切れに不満を口にするヨナ。
正直剣は素人のそれ、なんというか剣を振ってるというよりも剣の重さに振り回されてっるって感じだ。お世辞にも剣が冴えているとか太刀筋がきれいとかそういう感想は出てこなかった。
仕方なく僕が手早く殲滅する。
「ふはぁ。ありがと、助かったよ」
そういって座り込み、肩で息をするヨナ。
上手く攻撃はかわしていたようだけど、そんなことよりも気になることがある。
「魔法は……?」
「ん。あー魔法ねえ。ボク生まれつき魔力がないんだ。」
「?」
それは不思議だなー。エルフは生まれつき膨大な魔力を有していて然るべき種族のはずのなのに?(偏見です)
「ボク、エルフだけどハーフって話は前にしたよね。それでボクは獣人とエルフのハーフなんだけど、違う種族の親から生まれた影響か、突然変異なのか、魔力が生まれつきなかったんだ」
なるほど。合点がいった。
剣の振り方は仕方ないとして、戦闘全体の立ち回りや動きが悪くなかったのは獣人の血が流れていたからかー。
たぶんステータスは結構高いんだと思う。
「どうして?」
「冒険者?」
「んー。あー。それ聞いちゃう? 実はね。」
そうして唐突に語りだしたヨナの冒険者になった理由。
どんな経緯で冒険者になったのか簡潔に説明してくれた。
まあそれでも長いので一言でいえばこう。
お貴族様だったんだけど夜逃げしてきましたってさ。
……貴族だと身長高くなったりするのかな。
あれだ。代々受け継がれてきた秘術みたいな。