此処はどこですかぁ?
120年の修行で反動を軽減する術は会得したけど、それでも5分ぐらいは未だ、まともな身動きが取れない。
まあ当初『吸血鬼化』を発動すると一時間以上身動きが取れなかったことを思えば成長してるんだけど、暇である。
幸い仰向けに持っていくことはできたので今はボーっと空を見上げている。
吸い込まれてしまいそうとかいうありがちな(たぶん)感想しか出てこないわー。
……空を裂けるようになればドラゴンも倒せるかな。
万物を、森羅万象を斬るための修行でも始めたほうがいいかなー。
でもあの『死の血剣』
結構自信作なんだけどなー。
そもそも5秒にも近い膨大な時間を詠唱に充てるから剣の強度も通常の血剣より何倍も高いはずなのに。
結論。僕が弱いわけじゃなくてドラゴンが強すぎるだけだと思いました!(小学生の日記風)
それにしても5分て意外と長いな。
日向ぼっこして眠ると魔物に襲われそうだから頭を回すことぐらいしかやることないなー。
……まあ、ドラゴンと殺りあえばなんとなくこうなることはわかっていたよ。
だって戦うたびに毎回結界まで吹き飛ばされていたからね。
それでも今回は『死の血剣』を使うことで勝算があったから挑んだんだけど。
大体。切り札である『霧化』まで使ったのに剣が折れるとか……
なんかもう怖いよ。
物理攻撃への絶対耐性を得たというのに勝てないとか。
ホントどうやったら倒せるのんですかねぇ。あのドラゴンさん。
思考に集中するために閉じていた瞳を開くと視界に顔が移り込んだ。
ん。顔?
「空から人が降ってきた?」
不思議といった感じに湖のように輝く髪を揺らし、金色の瞳を覗かせる少女。
でもそんなことは些事でそれよりも先に目に入ったものがあった。
「耳……」
コミュ障らしからず声を漏らしてしまうぐらいには衝撃的だったのだ。
「うん? あ、この耳のこと? よく気付いたねボクはエルフだよ。ハーフではあるけど一応はエルフに入るかな」
意味ありげに視線を逸らすエルフの少女。
その瞳は悲しさと悔恨の念を含んでいるように見える。
正直言って普段からソフィーを見ている僕だからエルフということがわかるのであってパッと見ほとんど人間と変わらない。
よーく見ると少し耳がとがっている程度のもの。
普通の人が見たらただの愛らしい少女と思うんじゃないかな。
けど、そんな些細な違いでも世間が気づいていたとしたら、あの意味ありげな様子はつまり奴隷なのだろうか?
かといってソフィー以外のエルフについては興味も干渉する気もない。
……ごめん嘘。正確に言えば今まではなかった。
だってさあ。うん。かわいい。メッサかわいい。
保護対象に入れるべきか否か僕が本気で悩んでいると向こうから声が掛かった。
「どうかした?」
「……」
少女の言葉で正気に戻った。
そういえばまだ現在地も把握できてないジャァン!
うん。場所の把握。これ大事ね。最優先事項ね。
初対面の人との会話という鬼畜ミッションをこなすこととは話は別だけど……
「どこ?」
僕の言葉に首を傾ける少女。
うん。主語がないか。
守護いうぞー。違った主語っしゅごいうぞー!
「ここ?」
ハーフエルフちゃんに現在地を問う。
まあ、たぶんサリエラのような『禁忌の森』周辺に位置する村のはずれみたいなとこだと思うんだけど。
「獣王国ガースの最南端に位置する『ソル』だよ」
へー。獣王国ってあのギルマスが言ってた所かー。へー。
……ええ?
2章本編はこれにて完結です。
次話から、閑話に入ります。