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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
二章 小さな村 サリエラ編
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ベントの意地 冒険者の誇り

刀を振るう。

しかしかえってくるのは肉を裂く感触ではなく硬質な皮膚に剣が弾かれた衝撃。


それでも雷魔法の俊敏さを活かして民家の壁を跳ね回りながらできうる限りの攻撃を仕掛ける。


遠距離攻撃である雷の矢も隙を見て放っているが、効く様子はない。

「まいったな」

物理、魔法ともに高い耐性をもっているようで生半可な攻撃では傷一つつきそうにない。

生半可な攻撃ならば。


「ぐぎええあ!?」

轟く雷鳴。

響く轟音。

音をも置き去りにして迸った神速の紫電がマンティコアの体を焼き焦がす。


痙攣して崩れ落ちるマンティコア。

瞳から既に光はなく、生気は感じられない。

完全に死んでいる。


雷魔法の最上位に位置する天雷魔法。

天候をも操る強力な魔法で文字通り天変地異をも起こしうる俺の最終兵器。


それをまともにくらったマンティコアは何が起こったのかもわからずに地に伏しただろう。


「ふう」

といっても消費魔力はかなりのもの。

疲れないわけじゃない。

っていうか疲れた。

今夜はよく寝れそうだ。


「すげえ!」

「俺、ギルマスのこと見なおしたわ」

「助かったぜベント!」

「俺が倒そうとしたのにいいとこ持ってきやがってよ」

「やるじゃねえか。このこの~」

「流石俺の盟友だな」

「おなかすいたー」

「風呂入りてえ」

「ワシより先に倒すとはな……」


後ろで俺とマンティコアの激戦の行方を固唾を飲んで見守っていた冒険者たちが口々に声を上げる。

ホット安堵の息を吐くもの。


なぜか自分が倒す気でいたもの。

どついてくるバカ。


能天気な奴。

切り替えが早いアホ。

反応は様々だが皆が活気を取り戻していく。

まだマンティコアに殺されて殉職した冒険者たちの死体が残っている。


しばらくは後始末で憂鬱な日々が続くだろうが、元凶が死んだのだ。


先ほどより周りの顔は明るい。

いったんは休憩という形で解散し、体を休めるように指示を仰ぐ。



俺の考えを聞いて次々と散っていく冒険者たちに続き、俺自身もギルドへ引き返そうと脚を動かそうとした。



その刹那、後ろに感じる巨大な気配。それも複数。

咄嗟に振り返り、後ろに下がる。次の瞬間。地響きが鳴り響きマンティコアがその場を埋め尽くした。




余りの光景に愕然とする。

周囲の冒険者たちもそれに気づき、顔が恐怖に染まる。

死の、余りにも濃密な死の気配が辺りを満たす。



この場にいる誰もが絶望したはずだ。

まだ。悪夢は終わっていないのだと。


それでも俺達は冒険者。

依頼で無理難題のような魔物に挑む馬鹿はそういない。

が、村や町が凶暴な魔物に襲われ、それを撃退しようとして散っていく奴は意外と多い。


それは偽善でもなんでもなく一か所にとどまりその場しのぎで過ごす事が多い冒険者にとって村や町こそが冒険者の守るべき存在であり、自分たちの生活が懸かっているから。


だからそんな危険を伴う仕事を生業にしている者たちに感謝しているものは多い。


時には子供が冒険者に憧れたり支えてくれるような人たちまでいる。


そんな大切な存在を魔物や山賊から守るのが冒険者の本来の義務なのだ。

手を血に染め魔物を倒す荒くれものの集団であろうとそこには譲れない誇りがある。



「ふっー」

余計な息をすべて吐きだす。

少しでも戦闘に意識を持っていけるように。

少しでも多くの人々を守れるように。


紫電を纏った刀にさらに魔力を込める。

光の増した刀を閃かせ、マンティコアを一体屠る。


両断された皮膚から雷が迸り他のマンティアにも感電させる。

大したダメージは与えられないがそれでもいい。

長期戦になるならば継続して傷を入れることは大事だ。

「ぐぎょえあ」

「ぐごおあ」

瞬時に一匹を倒した俺を警戒してか四体のマンティコアが俺を囲う。

冒険者たちも必死に応戦しているが一匹一匹が強すぎて相手になっていない。


このままではいずれこの村が壊滅する。

最悪の予想が脳裏をよぎる。

駄目だ戦いに集中しねえと。

守るものも守れなくなっちまう。


刀を振るい、壁を走り、動き回って傷を受けないように立ち回りつつマンティコアを屠る。


が、多勢に無勢。

徐々に傷が増えてくる。爪が掠り、尾の薙ぎ払いも巨手による振り下ろしも対応が追い付かなくなる。


「ぐっ」

それ故か。傷を負った。油断していたつもりも慢心していたつもりもない。


ただ圧倒的な数の暴力にねじ伏せられた。

肩にマンティコアの爪が深々と食い込む。

痛みで動きが鈍ったところを好機とみてか他のマンティコアが俺に殺到する。


既に致命傷を負って満身創痍の俺にそれを避けるすべはない。

それでもまだ俺にできることがあるとすれば。

「ーぉおお!」

今ある数少ない全魔力を雷に変えてこの身に纏わせ、一体でも多く敵を屠ること。


無論、魔力が完全に尽きればマンティコアは殺到してくるだろうが、戦場に来た時から覚悟は決まっている。


「せめて何匹かは道連れにしてやんよ」

「いやいやそれはダメでしょ」


飛来した影が、漆黒の巨大な剣が、マンティコアの体を真っ二つに斬り裂いた。


「いっちょ前にカッコつけてるところ悪いけど、加勢するねー」


悪夢と化した戦場で能天気な声を上げる。

そんな奴、俺は一人しか知らない。


「遅せぇ、ぞ」

吸血鬼という謎の種族であり、睡眠同好会の盟友。

クローフィーしか。

ゴールデンウィーークっ!!

今週から来週にかけて多めに更新します!(おそらく6回)


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