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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
二章 小さな村 サリエラ編
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眠りへの探求心が留まるところを知らない

 あれから僕らは順調に依頼をこなして遂にこんにち。

ギルマスさん権限でのCランク昇格条件を得た。


そんなわけで僕らは今日も冒険者ギルドを訪れていた。

初期の頃は、女子3人のパーティーでさらに僕とソフィーは健全なロリ体系のため狙われるのでは?


と身構えてたんだけど、魔力波による威圧と僕がBランクゴリラゴリラ(学名)を倒したこと、飛び級Cランクの噂が功をなしたようで変に突っかかってくる人はいなかった。


一人を除いて……

「姉ちゃん!」

僕の事をそう呼んだのはローグという少年だ。


身なりがいいとは言えない、悪く言えば貧相な格好で清潔とは言えない。

顔は割と整ってはいるけれど、僕のイケメン八つ裂きレーダーに反応がないのでちょっとかっこいい程度だと思う。

そんでもってこの村の農家で働いてる子。


いやー。子供のころからお仕事お疲れ様です。

僕はこの村に来てから遊び惚けてばかりです。

頑張れ少年! 僕は応援しているぞ。グワハハ。と最初に村で見かけたときは能天気にそんなことを思ってた。



それなのにどうしてこうなった。

それはEランクに指定されるウルフ討伐の依頼をこなしていた時のこと。


ささっと依頼を終えて村に戻ろうとしていた途中、僕たちのいた森の方面からやってきた鳥がいたのでパパっと討伐しといたんだけど。



そこを偶然、採取系の依頼をこなしてたローグが目撃。

その時は森という孤独最高空間で珍しく一人で依頼をこなしていたので、コミュ障を発動し、即刻その場から立ち去ったんだけど、冒険者ギルドにいるところをローグに見つかり、すっげーすっげ―コールを浴びせられた挙句になぜか弟子入り志願されて今に至る。


もちろん断った。しかしそれを素直に受け止めず『姉ちゃん姉ちゃん』と付きまとうようになった。すごくうざい。なのでサフィアにやめるように促してもらおうとしたんだけど、なぜかサフィアまで肩入れする始末。


変態を頼った僕がバカだった。

これからは自分で解決しよう。そうしよう。

「なあ、教えてくれよ姉ちゃん! 剣の振り方」

「そうですね。私も教えるべきだと存じます。主様」

だー! うるさいうるさい!

僕が人にものを教えるとかそういうのキャラじゃないし。

第一さあ


「ローグ。剣持ってない」

「そこをどうにか! 俺はよ姉ちゃん。どうしても冒険者になりたいんだ。この小さな村を飛び出して世界を飛び回って立派な冒険者になりたいんだよ。男なら一度は憧れることだろ!」


ふむ。確かに。冒険という言葉はそれだけで男子の心に刺さるものがある。

僕の世界ではそんな職業がなかったから現実味がないものの、この世界では身近に冒険者と呼ばれる勇敢でカッコいい存在がいる。

世界を駆け回り、弱きを助けて悪を征伐するそんな憧れの冒険者が大勢。



僕も一応心は男なわけだし、冒険という言葉に惹かれないものがないわけではない。

けどね。


「そんな面倒より、寝て過ごしたほうが何倍も楽しい」

結局はこれだ。

その言葉にローグが呆気に取られている間にささっと避難する。

どこにって?

それはついてからのお楽しみ。











物が散乱した部屋をかいくぐりソファに座る。

おう。相変わらずふかふかやね。

是非ともお持ち帰りしたい。やらないけど。


僕が座ったのは中央に設置されたテーブルの前につけられたソファー。

反対側にもテーブルを囲むようにしてソファーが置かれていて、そこに座る人物がふやけきった顔で爆睡している。


さてここまで来たらわかったかな?

そう。ここ避難場所はギルマスの部屋でーす。


この男は何気に仕事はちゃっかりこなしてしまう。出来る睡眠ギルマスなのだ。

寝ることが至上の喜びの彼にとって仕事は睡眠を邪魔する雑務でしかないのだろう。僕は知っているこの男がいかに偉大な存在であるのかを。


寝ている時間12時間以上という常人では考えられない睡眠時間。

それには狂気を感じると同時に同じ睡眠を愛するものとして尊敬するものがあった。


結果。志を同じくするものとして魂の共鳴を感知し、今ではこの黒色空間ぎるますのへやを組員のみが利用できる隠れ蓑として使用している。


時にはソフィーも交えて3人で夜中まで睡眠についての真理を語り合った。

あの瞬間は至福の時であったぞ。(寝てただけです)


そんな奇妙な睡眠仲間の僕達だけど今日来たのは寝るためではなく違う要件。

僕達のランク昇格を認めてもらう、これが本題。



だというのに机の上で幸せそうに眠っていらっしゃります。

邪魔するのも悪いと僕も眠りに入ろうとしたところで待ったの声が掛かった。

「すぐに起こしますので。というかなんであなたまで眠ろうとしてやがるんですか? 殺しますよ」


おう。こわいですよ。

仮にもマンティコアを倒して恐怖を克服したはずの僕が怖いですよ。

その凍てついた瞳で見るのやめてくれませんかね。

怖いですアレンさん。


そんなに怒ってるとしわがふえ――

「殺しますよ」

凍てついた瞳がさらに冷ややかにさめ、心なしか室温までも下がった気がする。

なにこれこわい。


「おう。久しぶりじゃん! 元気してた?」

戦々恐々としていた室内の空気がギルマスが起きたことによって露散する。

なるほど。アレンさんには触れない方針ですか。僕もそれを真似させていただくぜ!


「いや、夢の中で何度もあったでしょ?」

「ん? あーそれもそうだな。あれは楽しかった」

「ソフィーも楽しかったの!」

「また3人で開催したいよね!」


意気投合して語りだす一同。

それぞれの眠りへの想いが溢れだして、雑談が知らぬ間に議論へと発展していく。

起きるタイミング、眠りへ誘う枕の整備への施し方。眠る前のマッサージ。

さまざまな議論が生み出され、それについて意見を交わし、賛同したり反対したり眠りについてひたすらに探究する。



まるで旧知の仲にでもなったかのように僕らの距離は近づいている。

睡眠的な意味で。


「そうだろうそうだろう。さすがソフィー君はよくわかっているね。うん。クローフィー君の意見も素晴らしい! 眠りに入る前のストレッチとは考えもしなかった」


白熱する僕たちのトークに耐えられなくなったかのように秘書さんが退室していくのが見えた。こんなにも栄誉な議論をしているのにどうしてだろう?




それからしばらく議論が続き、会議も佳境に差し掛かり睡眠へと移行しようとしたところでソフィーがおもむろに立ち上がった。


それから僕とギルマスを交互に見やりしばらく唸っていたけど、やがてパッと顔が明るくなり軍人のように胸に手を当てると

「『安眠への心得』第12条。惰眠を貪ることは知的生命体に課せられた絶対の使命である」

予想外の発言に一瞬場が静まり返る。

「お姉ちゃんと一緒に眠るのは幸せだけど、惰眠を貪りながら(狸寝入り)をしてお姉ちゃんに抱き着くのはもっと好き!」

「素晴らしい! 君はなんて才能の持ち主なんだソフィー君」

「感動した。感動したよお姉ちゃんは」

「他の条約も考えようあとは――」

会議は夕刻まで続いた。




「諸君。本日は会議のために貴重な睡眠の時間を割いてくれてありがとう。君たちのおかげで長く意味を持たず沈黙の時間となっていたこの会議すらも大変有意義なものとなった。 それでは。お楽しみの就寝タイムの時間だ。電気を消せぃ! カーテンを閉ざせ! ではまた夢の中で会えることを願っているぞ! ぐう」


「すう」

「ぐう」

あれ? なんか忘れてる気がする。

んー。まあ、忘れてるってことはそこまで重要なことじゃないでしょ。

そんなことよりすいみんすいみん。



なぜこんな展開になった?

他ならぬ作者が一番驚いてます。

あ、でもまえに見てた魔王城で寝るアニメの影響かもしれないです。


クローフィー「睡眠は大事なんだよ。ぐう」


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