ええ……(困惑)
あれから一夜明け、翌日。
僕たちは冒険者ライセンス取得とギルマスがお呼出しとあと暇潰しもかねて(これが主)再びギルドを訪れていた。
職員に案内されやってきたのはギルマスの部屋。そこで聞かされた内容がいろいろと衝撃過ぎて僕は現在、絶賛困惑中であります。
「それは。ホントにですか?」
「イヤ下手な敬語はいいって。俺も一応元冒険者なわけだしさあ。言った内容は全部事実なんだけどなー。まあ、なるべく早く決断してくれると助かる。俺も早く寝たいからさ」
コミュ障あるある。全くの他人のほうが受け答えがはっきりする。
バカ緊張するけどね。
あとこのギルマスとは共鳴というかなんといいますか、自分と似た気質を感じて意外と口が回る。
これは直接回るのではなく比喩という難しい(以下略)
「お言葉ですが、ギルドマスター。あなたはまだ仕事が山ほど残ってー……おい寝てんじゃねえぞ。この怠惰野郎」
僕の長い思考の間に眠ってしまったギルマスの話を要約するとこう。
冒険者としてギルドに登録する際、ライセンスという、前世の保険証みたいなのを渡される。
そこに書いてあるのは自分のランクと登録した名前くらいなんだけど、問題は契約するときの書類に記載しなくちゃならんもの。
ずばりステータスである。
冒険者ランクというものは基礎能力であるステータス、依頼達成率、実力、戦闘技術などを参考に決定されるのだが、B+ランクのえーと…… ゴリラでいいいや。
そいつを倒してしまったもんだから初期値とされるFランクを登録する前に一気にCランクからスタートしてくれんかという相談。
相談。といっても冒険者はランクごとに適材適所な依頼をこなすため僕らの強さでFランクで燻っていてもらっては困るという事らしい。
ちなみにランクはギルマスの権限でCランクまでなら上げることが可能だが、最低限10個の依頼をこなす必要がある。
これにはいくら戦闘能力が高かろうが、冒険者だろうが常識をうんたらかんたら。
めんどいから省くけどようは強いだけのあんぽんたんが出ないための処置。
パーティ名をつけることもできるらしいけど変に名前を考えると後々黒歴史になりそうなので却下。
で、話が逸れたけど、やっぱり目下の問題はステータス。
自慢じゃないけど僕には相当強いと自負してる。
っていうか実際強いと思う。
ゴリラ相手に倒れたのも眠かっただけだからノーカンだし。
……ノーカンだし!
決して、敵が思ったより強くてナメプするのに苦戦してたとかじゃないからね。
いやホントに、ホントだから!
そういうわけで僕らはめっちゃ強い。
だからステータスを見られると軽く騒ぎになりそうで怖いのであります。
あと他の町に移動したときに厄介ごとが置きそうで面倒なのであります。
こういうとき隠密系スキルとかあると便利よね。
もってないけど。
「ステータスの公開拒否とかは……」
「無理だ。これは規則で決まってる。ステータスってのはいわばポテンシャルだし。実力も確かに重要だが、基礎が強いか弱いかじゃ天と地ほどの差があるわけで。実際ギルド創設初期のころはステータスの公開拒否が可能だったらしいが、実力に合わない依頼を受け死亡する冒険者が多発したために撤廃されたらしい」
「ってわけでステータスの公開は冒険者になるうえで絶対だ。ちなみに確認は受付嬢、またはギルドにかかわる人物が行う決まりになってる。ステータスを公開し、変動があった場合、再度報告し、記述する。以上これが冒険者に登録する上でのルール」
「……分かった、見せる」
ソフィーとサフィアに目線で確認を取る。
「主様の仰せのままに」
「ソフィーお姉ちゃんとお揃いがいいの!」
「安心しろどんなステータスであれ適当に処理しておくからさ。……アレンがさ。 あー。一仕事終えたら眠気、が……」
眠気と言いながら机に伏して寝始めたんだけど、このギルマス。
恐ろしく速い就寝。僕でなきゃ見逃しちゃうね。
というかこのギルマス目の下にクマがあるし死んだような魚の目ってくらいに細めだね。ちょっと暗めの金髪はいい感じに切りそろえられているけど寝癖がぴんぴんしてるし。
なんだかねえ。
前世の僕だったらイケメン。排除だ排除! っていいたくなるぐらいには顔は整っているというのになんとも勿体ない。
眠そうな瞳で気だるげな動作。僕の中のギルマスターのイメージってもっとなんかこう出来る人。っていうか。苦労人というか知的とかそんなイメージだったんだけど。
まあ、こっちの軽い雰囲気のほうがコミュ障を発揮せずに済むのでむしろ気が楽ではあるけど。
あと、とりあえず寝る時間が至高なことだけは深く同意しておく。
「眠いと言いながら寝ないでくださいギルマス。あ、ダメだこれマジで寝てやがる…… 給料下げるように上にいっとこ」
「「「?」」」
最後のほうが小声でよく聞こえなくて3人で頭に?マークを浮かべる。
それに気づいたのか秘書さんがどこか慌てたように口を開く。
「すみません。このアホにはよく言って聞かせておきますので。御安心ください。このバカの代わりに私がステータスを拝見させていただきます。」
はぁ……
大事にはしたくなかったんだけど、これも吸血鬼の定め、か。
致し方なし。
ならば見せてやろう。
度肝を抜くほどに鍛え上げた我々の圧倒的なステータスを!
さぞテンプレのように恐れ己くことであろう。
いくぞ!
「ソフィー、サフィア」
「はい」
「うん」
(「「「ステータスオープン」」」)