村
あれから一夜明けて朝。
……よく考えたら、森とはいえ村が近いのだからわざわざプレハブほど頑丈にしなくてよかったのでは?
まあ、口には出さないけど。
長い付き合いのある二人に失望されると割と凹むから。
こういう所は国境とかあって門番に止められるイベント、もしくは通行料とかあるかと懸念してたけど、特に話しかけれることもなく普通に中へ入れた。
畑や農地、木造の家々が立ち並んでいてなんかどこぞのゲームの勇者一行が育っていく旅立ちの村みたいな感じ。
森に長くいすぎたせいなのか高低のない整備された道に若干の違和感を覚えるけれどそんなことを感じる日が来たという事実をうれしく思い自然と頬が緩んだ。
鬱蒼とした森の景色ではない、見慣れない街並みに目を奪われながらも歩き続けること数分。
「どちらに行くつもりですか? 主様」
「どこ行くのお姉ちゃん!」
うん。いわれて気づいた。
……行く場所決めてないやん。
落ち着け。クローフィー。クールになるんだ。
すーはーすーはーはーはーはーーーーー。 ―は! 閃いた!
こういう時はあれだ。冒険者ギルドに立ち寄ってクエスト受諾。からの金を稼いで宿に泊まる。これでしょ?
たぶん!(テキトウ)
いやー解決解決。なぞは全て解けた!
っふ…… この程度の苦難など、我にとっては無きに等しいのだよ。
……ギルドの場所知らんくね?
となれば村の人間に話しかけるというコミュ力MAX、僕にとっては天変地異が起きてもやりたくないような案が脳裏を過った時、希望の光が見えた。
周囲の木造の家とは一線を画する程に大きい石造の建物。
酒場みたいに提げられた看板には竜に立ち向かう騎士の姿が描かれている。
「あそこに行ってみよう!」
「行先。決めていなかったのですね」
サフィアの精神攻撃を軽く受け流しつつ中に入る。
僕は寛容だからさっきのは聞かなかったことにしてあげよう。はい!
「おおー!」
視界に飛び込んできたのは屈強な男たちがテーブルで酒を酌み交わす姿。
他にも細身の男性、ちょっと美人なお姉さんから年端のいかない子供たちまで老若男女様々だ。受付嬢と思われる美人なお姉さんの姿も見える。うん? なんか男性職員ぽい人たちもいるな。
どうしてだろう? 受付嬢といえば美人なお姉さんのはずなのに(偏見)
早速僕らは一番美人な受付嬢のお姉さんのところへ向かう。
男のところに行かないのかって? ハハハ僕は基本欲望に忠実だからそんな勿体ないことはしないのだよ。(コミュ障)
「あの!」
「はい。依頼の発注ですね」
「あ、えっと…… その」
「冒険者登録をお願いします」
ぐう。サフィアに出番を取られた。
変態の癖になんてコミュ力だ。
「―これは、失礼しました。では手数料として銀貨一枚をお願いします」
お金?
おかね、おかね? おっかねー? えーー
……持ってないんだけど
僕の名前はクローフィー。森からやってきた天下不滅の無一文! なんでーす!
いえーーい!
「貸して?」
「出来ません」
即答された。くっそ! ノリで行けると思ったのに! 僕わりと美少女ぞ! ちょっとぐらいお小遣いくれてもいいんじゃないですかー。
はい現実逃避終了。
どうしよう、このままだと冒険者人生始めることすらできない。
俺たちの冒険を始めることすら出来なくなってしまう!
「それと、大変申し上げにくいのですが…… 10歳以下での冒険者ライセンスの取得はできない決まりでして」
「……14歳!」
おうおうおう? 僕が子供にみえる言うのか。目ん玉くりぬいて治療してやろうかコラぁ。あれ?こういう時はオラあだっけ?
「失礼しました。ですが後ろの方は……」
「ソフィーは105さ――」
ソフィーの口から衝撃の一言が迸りそうになったので速攻で口を塞ぐ。
危ない危ない。
全く。何言ってくれちゃってるんだこのソフィーは!
……可愛いから許すよ。
「母様はこう見えても105歳なので大丈夫だと思います」
安心してたら変態がやらかしてくれた。
「はあ……そうですか」
105歳とかいうからすっごい怪訝な目で見つめてきてるよ。
まあ、でもそういう年ごろなんだと思ってくれるでしょ。
……中二病、っう。頭が。
でもマネーはホントどうしよう。
「……金銭不足ならばあまりお勧めはできませんが盗賊狩りをしてはいかがでしょうか? 最近洞窟で盗賊を見かけたとの報告が低ランクの冒険者たちから届いておりまして。武器屋で剣や道具を換金すればかなりの金額になりますし。まあでも盗賊団のランクは推定Cと高いですし――」
やったよ!これも日々の行いがいいからだね! うん? うん!
「了」
「そうですよね。やはり無理でっ……はい?」
「ソフィー、サフィア」
「うん!」
「どこまでもついていきます」
猛ダッシュでギルドを後にした僕の耳に遠くで「待って! 本当に大丈夫!?」と叫ぶ声が聞こえた気がしたけど。多分気のせいだと思う。