人里を目指して
まだ見ぬ世界と冒険を夢見て故郷を飛び出した僕たちは人里を目指して森を進んでいた。
今は休憩をとって即席で作ったプレハブの天井を見上げているところ。
僕のステータスならば1日で森を抜けることもできるけど、これは一人の旅じゃない。
「すぅ、すぅ……」
すやすやと気持ちよさそうに眠っているソフィーの髪をなでる。
眠っているというのに嬉しそうにはにかむソフィーの姿は微笑ましくてキュンと来る。なにこのかわいい生物持って帰りたい。
「いよいよ、か……」
閉鎖的な森の中の生活からおさらばできるのはうれしい。
ソフィーと一緒に旅をできることもうれしい。
それなのに僕の胸には悶々とした気持ちで満ちている。
旅への不安。
旅をするということはソフィーを危険にさらすという行為に等しい。
人間に渦巻く感情は魔物よりよっぽど欲深く醜いものだと思う。
だって魔物のようにあからさまに負の感情を表に出すことはしないのに、心の奥は欲に溢れているんだから。
ソフィーは純粋だ。
この先旅をする中で悪意を持った人間に出会うこともあるかもしれない。親密な関係を築いたうえで裏切られるなんてこともあり得る。
そうならないためにも僕は付き合う相手を慎重に判断してかないといけない。この先何が起ころうとも誰が敵に回ろうとも必ずソフィーを守り通して見せる。
新たなる誓いを胸に僕はソフィーの体をギュっと抱きしめソフィ二ウムを取り込みながら夢見心地に眠りについた。
―――――
「おきてください主様、母さま。」
「ふみゅ」
まどろみを解き瞼を開くと唐突に美女の顔が視界に入った。
「……なんだサフィアか」
「なんだとはどういう意味ですか主様。」
一瞬美女が僕の布団に入ってきた! と歓喜したけど無情にもただの変態だった。
ごめんソフィー。ほんのわずかでもサフィアなんかに見ほれてしまった僕を許してほしい。
「うみゅ」
「うぐ……」
ソフィーの抱き着きホールドが強くなった。
バレたのか。と焦ったけど寝ているしいつもの甘えん坊モードか。
「尊い、尊いです!」
「そこの変態! 一人で悶えてないで早く助けてくれないかな!」
全く何を考えてるんだこの変態は。僕元男だし、尊いとか言われても反応に困るしさ、だから突っ込むことしかできないんだよ。
「嫌です。もっと百合二ウムが欲しいです」
「黙れ変態! 助けろって言ってるのが聞こえないのか!」
「聞こえません。メイドが百合を邪魔することは万死に値する大罪なので」
「変態が作った法律なんて破っても誰も悲しまんし! 早く助けんかいこの変態娘!」
結局その後一時間ぐらい放置されソフィーが起きるまで抱き着かれていた。
苦しくはないんだけどクスッぐったし、近いからソフィーの匂いが……
それに目と鼻が届くほどの至近距離にいるとソフィーが美幼女すぎて興奮し。
――なんでもないから! 今のは忘れて!
地平線に日が沈み始め、空が茜色に染まり始めたころ、僕たちは再び森の中を進みだした。
「お姉ちゃん! あれ!」
「うん。やっと着いたね!」
道中の魔物をなぎ倒しながら進んでいくと小さな村? が見えた。
その頃になると完全に日も落ちて僕は『夜目』を使っていた。
住民は寝ているのか、村からは物音一つしていない。うーーん。そういえば何かの資料で中世の人たちって日暮れとともに寝ていたって読んだことがある。
魔法があればそれも別だと思ってたんだけど森の近くにある村ではそれだけの物資、経済力がないのかもしれない。
ステータスのおかげで予想より早くついてしまったみたいだ。
辿り着いた新天地。せっかくだからのんびりとくつろぎたいとけど、村の人たちを起こすのも忍びないし、今夜だけはプレハブ生活かな。
あるゲームにハマりすぎて更新遅くなって申し訳ない。
反省してます、はい。 ……てへぺりんこ!