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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
一章 禁忌の森の吸血鬼
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吸血鬼という名の種族 しばしの別れ

お世話になったプレハブさんを眺める。

思えば長かった。異世界に転生して勝ち組人生を確信して、現に前世にはなかった魔物に対抗しうる力を生まれながらにして持っていたものだからそれはもう舞い上がった。


前世のコンプレックスとか不安とか悩みとかそういったものを何も抱えないお気楽な人生がやってくると思って疑わなかった。


でも現実はそんなに甘くなくて。

調子に乗っていた所をマンティコアに呆気なく敗北。

挙句の果てには耐えがたい死の恐怖に外に出ることも恐ろしくなり『血に飢えた獣』に体を明け渡した。本能のままに血を貪り食らうとはいえ僕のスキルであるからか、行動も言動も大した変化はなかったけれど、吸血鬼という種族の欲望には貪欲だった。


それで無謀にもマンティコアに戦いを挑み破滅の道をたどろうとした僕をソフィーが颯爽と現れ助けてくれた。

(クローフィーの想いで補正により一部美化されています)


あれから100年以上の時が過ぎたけどソフィーを守るという信念は変わっていない。


だけれども僕は正直あんま殺伐とした吸血生は送りたくない。いや自分の種族に嫌悪感を覚えたというべきかな。


『血剣』から滴り落ちる血液も木々に飛び散った魔物の血の匂いも。

本来異臭であるはずなのにどうしようもなく甘美な匂いに感じてしまうんだ。

一度だけ許可を貰ってソフィーの血を啜ったことがあるんだけど、まるで蜂蜜のように濃厚で甘かった。

それでいて口から鼻を通り『血』の匂いが強く残り頭が真っ白になりそうなぐらい心地よかった。


本来始祖である僕が『血』を飲む必要はてっとりばやく栄養を吸収するという事だけのはずなのに必要以上に吸いたくなってしまうぐらいには。

冗談でもなんでもなくそれで守る対象のはずのソフィーを息が絶え絶えになるまで吸ってしまったから。


寸でのところで止められたから良かったけれど一度でもソフィーを殺しかけてしまったことには自己嫌悪しか沸いてこない。


……思うに吸血鬼という種族は他の生物の『血』を吸うことで生きながらえることができるという驚異的進化を遂げた人間だとおもわれる。


だとしたら進化のもととなった人間の血を必要以上に吸いたくなってしまうのは本能からくるものなのかもしれない。別に人間以外の『血液』でも問題なく栄養摂取できるというのにも関わらず……だ。



そんな危険な理由もあって僕は出来ることなら残りの命。300年ぐらいは出来ることならばお貴族様の護衛にでもなってひっそりと余生を送りたかった。


まあ、だけど仕方がないことだね。

一度ソフィーに救われている僕がソフィーの行動にとやかくいうのは恩をあだで返すようなものだし。


感慨深くプレハブを眺める僕の前を黒い影が通り過ぎていく。

ノクスだ。

「俺は先に行くぜ。まだ見ぬ強敵が世界中で俺を待ってるからな。 次に会うときは名実ともに世界最強になって帰ってくるぜ。だから師匠。次合うときは俺が勝つ! じゃあな!」


動きやすいように改良された漆黒のローブを揺らし、ノクスが爆速で駆けていく。一瞬姿がぶれたかと思うと、視界からノクスが消えていた。相変わらず早いな。


その後に魔物との交戦音だけが森に断続的に響きやがてそれも小さくなっていく。


嵐のように去っていったノクスを誰も咎めることがないのはなんだか見ていて不思議な気分だ。いつもは魔物に猪突猛進に突っ込んでいくノクスを皆で抑えるのが恒例行事と化してたからね。


『ぐおおおー! 待てぃノクス! 行くでない! 我、これ以上のボッチ生活は耐えがたいのだぁーーーー!』

懇願するように叫ぶドラゴンに僕たちも別れを告げる。

昨日の戦闘の恨みも込めて煽りたっぷりに。


「そんじゃねドラゴン! 達者で暮らすんだぞ! 夢にまで見たボッチ生活。がぁんばってねぇー(煽り)」

「バイバイなの!」

「お先に失礼致します。」

『貴様! いつまでも憎まれ口を叩き追って! 我許さんからな! いつか絶対に貴様らを血祭に上げに参上する。その時まで首を洗って待っているのだな!』

最後まで憎まれ口を叩くのはどっちだ。

と内心悪態をつきながらも進んでいく。

喧嘩友達? という奴なのかな、正直に言えば一緒にいてそこまで苦ではなかったかも。それどころか存外楽しかったし。まあ一方的に嬲られたりしたこともあったのでその恨みは死んでも忘れるつもりはないけど。


手を振って最後まで煽り通し、回れ右をして全速力で森を翔ける。後ろは振り返らない。

帰りたくなってしまうから。悲しくなってしまうから。

頬に伝う塩水を拭いひた走る。

僕たちを閉じ込めていた牢獄は仲間がいたから帰る場所となった。


きっとどこにいても繋がっている。僕たちは再開が来るその時までどこにいたって仲間かぞくなのだから。


これにて一章完結です。

キリがいいので、ブクマ、下の評価等、よろしくです。


新作書いたってばよ。

タイトル 

TSノート 


説明 

ノリと勢いだけで書いた短編。一話完結。TSラブコメ。


タグ 

妹、TS、日常

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