チートな吸血鬼、震えるコカトリス
自分の運命を悟った感じで目をつむったけど、いつまでたってもその時が来ない。
半開きに目を開いて確認すると、そこには先ほどまでの歓喜に満ちていたような表情はどこへやら、一変して驚愕に目を見開いているコカトリスが僕の目に映っていた。
「あるぇ?」(巻き舌)
これはあれかな? やっぱりチートかな?
3m近い巨体で僕を覆い隠すほどの足に踏みつぶされているのに、僕の体には何ら異常はない。
試しにコカトリスのどでかい腹にパンチを入れてみる。
するとどうだろうか、放った拳は、へこむどころか、めり込んでやすやすとコカトリスの羽毛を貫通していった。
そのまま殴り続けるとコカトリスは「ヒューヒュークッドゥ」といううめき声を残して倒れこんでしまった。
周囲を見渡せば先ほど逃げて、追走してきていたようなコカトリスは、とんぼ返りのように逃げ出していた。
ふっ…… そっちから襲撃しておいて逃げ出すとは、なんて無様な姿だろうか。
とはいえ、僕も鬼ではないので、恐怖に引き返した生物をわざわざ追いかけるような真似はしない。
というか今僕が一番したいのは現状確認だ。
あの巨体に踏みつぶされて、無傷かつ腹パンだけでコカトリスを倒してしまった僕はもしかしたらかなり強いかもしれない。
それに、物理法則的にたぶんあんな質量をもつ巨体の足に踏みつぶされて何ともないなんてことはだ。おそらくあれがあるだろう。
僕は天を仰いで興奮気味に叫ぶ。
「ステータス。オープン!」と。