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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
一章 禁忌の森の吸血鬼
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サフィアが変体して変態になった日

それは私が脱走してから1年が過ぎた日の事だった。

一度アイツに醜態をさらしてからはもう自分の感情を隠そうともせずにむしろさらけだして過ごしているわ。


「うるせーな」

「いいから! よこしなさいよ!」

私の肉を奪い取ったくせにうざったいとはなによ!

奪い合いの発生しているお肉は禁忌の森でもめったに表れない魔物バジリスクのもの。


魔物というのは食べれるものではないけどこのバジリスクに関しては別。

皮をはぎ取れば中身は柔らかくてジューシー。焼けばおいしく食べることができるの。


「はあぁー!」

ノクスの持っていた肉付き棒を掴んで剣の突きの要領で奪い取る。

「やった!」

ノクスの力は私より強いけど果敢に手を伸ばし遂に肉を奪い取ったわ。(ノクスが面倒になっただけです)



私は串にさしてある豪快に焼いた肉を口に頬張る。

『血』でも栄養は取れるけどやっぱり肉はジューシーね!

珍しくノクスに食事の奪い合いで勝利をもぎ取ったことから上機嫌になった私はお風呂に入ることにした。

なんでかって?

ノクスとの肉の取り合いで体が汚れちゃったからよ。


「ふうぅ」

私が幼いころからあったドラム缶風呂は改良されて今では人が五人入っても悠々とくつろげそうなぐらいスペースがある。

あいつは嫌いだけどこれを作ってくれたことに関しては素直に称賛するわ。

そうやって一人幸せ心地に包まれていると風呂専用の部屋が開いた。

ノクスかアイツかと思ってお風呂に潜ろうと構えた私だったけど入ってきたのは驚いたことにソフィーさんだった。

普段寝てばかりいるのにどうしたんだろうと思いながら再びくつろぎ始める私だったがなんとソフィーさんが湯船に入ってきた。


最初に出会ってから寝ているところしか見ていないソフィーさんが、だ。

「どうも」

だからそんな気の抜けた言葉しか出てこなかったわ。

アイツやノクスにだったら会う度に憎まれ口しか叩かない私が、だ。

「うん」

頷いて湯につかるソフィーさん。

高さや幅まで調節してあるから溺れるといったことはないけどソフィー様は見ていて心配になるかわいさだ。

……? 今私は何を

「サフィアちゃん! お姉ちゃんたちと仲良くして欲しいの!」

「無理です」

即答する。ちゃんづけで呼ばれたことに突っ込みたかったけれどそれ以上にそれは無理な案件だ。

「じゃあソフィーが今までのえっと、けいい?を説明するの!」

「はあ」

そういって身振り手振りを交えながら説明するソフィーさんはなんだかとても可愛かった。でも表情はころころ変わってリアルに面白おかしく説明してくれたから話がよく耳に入ってきた。


ソフィーさんの可愛さに惚ける反面。

話の全容を聞き終えた私にはかなりの変化があった。

それはどこかで聞いた話で『ソフィーさんが……《《クローフィー》》と出会ってから二人で過ごした日々』という内容だった。

正直最初は聞く気がなかったけどソフィーさんの可愛さにつられて聞かざるを得なかったのよ。

それで話を聞き終えて私は自分で自分が醜いと思ったわ。


生まれて初めて本気で凹んだわね。

才能がないからとだれの責任でも無い事を半ば八つ当たり気味に母とノクスに押し付けて。挙句の果てには天性の才能なんているかもわからない神に憤怒して。


我ながら醜いわ。そんなことをしている暇があるならば訓練を少しでも長く続けて、剣を研ぎ澄まして、才能がなくても腕を磨くべきだったのに。


私に才能がないことなんて知れたことなのにそれでも養ってくれてる……


そんな母さんに感謝すべきだったのかもしれないわね。

「ソフィーさん。私……」

「大丈夫。ソフィーはサフィアちゃんの味方なの!」

自己嫌悪に陥っていた私だけど励ましてくれるソフィーさんが可愛くてすぐにそんなの吹っ飛んだ


そうだ。それなら私はもっと強くなろう。

この人を守れるように。

そして今まで辛く当たってしまったあの人に一生仕えることにしよう。


――――

「……」

星々が暗い森を照らしている。

僅かにしか入ってこない光を見るためにサフィアは見晴らしのいい崖の上にいた。

一人空を見上げる。

「主様、母様私は強くなれたでしょうか」

返事は帰ってこない。

受け取るつもりもない。

だが、その後ろには無数の屍が転がっている。

全てサフィアが倒した魔物の腕や足といった剣で切り裂かれた残骸である。

サフィアには特別才能があったわけではない。

ソフィーのように魔法チートでもなくノクスのように戦闘センスに優れているわけでもクローフィーのようにステータスが高いわけでもない。

しかし、サフィアは既にノクスやソフィーと肩を並べられるほどの力がある。


それができたのは毎日寝る間を惜しんで剣を振り、瞑想し、魔物と日夜戦闘に明け暮れたからだろう。


実践を積み、訓練を繰り返し鍛錬を欠かさなかったサフィアは相手の一歩先を読んだ『剣』と『力』を得た。


本人に自覚はないが剣の技術だけで見ればクローフィーやノクスをすでに超えている。もちろん戦闘センスのあるノクスと本気で戦えば勝機は乏しい。クローフィーにもステータスで圧倒されるだろう。


だがそれでもサフィアには常人よりはるか上を行く強さがある。

決して弱くはない。


もし、人には真似できないことを才能と呼ぶのならばサフィアには『努力の才』が確かにあるのだ。

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