サフィアの生まれた日
禁忌の森に一人の少女が誕生した。
そのものの名はサフィア。
クローフィーの『眷属生成』の効果により創造された吸血鬼である。
――――
「ここは?」
ベットのようなところに綿のようなものが敷き詰められた温かい空間。
そんな場所で幼女は目を覚ました。温もりの感じる温かいベットから這い出て床に足を着く。生まれたばかりにも関わらず、だ。
冷たい足の感触に違和感を感じ幼女は部屋を見回して……
気分が悪くなった。
監禁とかに使われそうなぐらい閉鎖感のある部屋だ。
気も滅入るだろう。
慣れとは怖いものでクローフィーもソフィーも既に大して気にしていない。
魔物達の侵入を阻むためにはどうしても耐久性重視でなければいけなかったのだ。
ただ単に色を変えれば済む気もするが実はクローフィーの覚えている頑丈そうな家のイメージがプレハブしかなかったのである。
……白でも黒でもおかしくなりそうだが。
ちなみに普段だったら防弾ガラスを通して日の光や星々の光が照らしたはずだがクローフィー自身本当に成功するのかどうか半信半疑だったために試験的に用意した子供部屋だっだりするのだ。
灰色の部屋。
二メートルと少ししかない圧迫感のある天井。
それには異質な王族貴族が使いそうな高価そうなベット。
生まれたばかりにも関わらず歩み始める子供。
既に常人がみたらカオスであろう室内に扉の開く音がした。
「!」
「……?」
それぞれ固まる幼女達。
あまりの驚きに扉を開いたポーズのまま硬直し、目を瞬かせるソフィー。
その後ろでガッツポーズを決めるクローフィー。
状況が分からず呆然とする少女。
傍からみたら幼女三人が閉鎖感漂う密室で出会うという意味不明な状況。
そんな謎空間の静寂を破ったのは吸血鬼だった。
「やった! 身代わり人形が完成した!」
興奮のあまり叫ぶクローフィーに状況に追いついていない二人が視線を向ける。
幼女二人の視線を受けた吸血鬼はというと気まずそうな顔でそっぽを向いた。
「おねえちゃん」
回れ右をしてダッシュしようとした吸血鬼の手をソフィーが掴む。
その目が闇を孕んでいることに気が付いた幼女が気を聞かせて声をかける。
「えっと……」
が、生まれたばかりで状況の呑み込めていない幼女が何かできるはずもなく一瞬ソフィーを振り向かせただけでどうにもならなかった。
闇を孕んだ瞳のままに笑みを浮かべて優しく……
《《優しく》》問い詰めるソフィー。
吸血鬼は俯き縦に首を振るだけ。
その体は小刻みに震えており、まるで生まれたばかりの小鹿のよう。
なんとなく自分がこの状況を作り出しているんだと察した幼女は不憫そうな目で吸血鬼を見つめる。吸血鬼の瞳は情けなくも幼女に助けを訴えていたが自分も巻き込まれたくない幼女はサラッと無視した。こういうところは親に似ているのかもしれない。
とまあこれが幼女とエルフと吸血鬼の初めての出会いだった。