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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
一章 禁忌の森の吸血鬼
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戦闘狂のあこがれ

ノクス視点です

あれは俺がまだ十歳になったばかりの頃だった。

俺は天才だから大丈夫と言っているのに母たちは全く取り合ってくれず退屈な日々を過ごしていた。クローフィー。アイツは強すぎるし母さんはいつも寝てるし、()()()()()()()()()()


奴ら(家族)の包囲網を突破して外に冒険に出たその日。俺はあの人に出会った。あの時はまだあの人があんなにすごい人だなんて思ってもみなかったが。


――――――――

「やっと抜け出せたぜ。ったくあいつらしつこいんだよ。おれはつよいっていってるのによお」


俺の外出を全力で止めてくる母たちは鬱陶しくてしょうがなかったし、家で鍛錬と訓練を繰り返す日々も飽き飽きだ。

実践をしてこそ意味があるってものだぜ。

全速力で森をかけていると数分とせずに歩き回っているゴブリンを見つけた。

「すげえ。母ちゃんが言ってたのと全く同じだ」

やせこけた身体に手には棒のようなものを武器として持ち浅緑の皮膚を持つ畏敬の魔物。ゴブリン。

だけどこいつはこの森の中じゃ最弱って言ってた気がする。

まあ腕試しにはちょうどいいか。


「おらあ!」

「グギョェ!」

剣に火魔法をまとわせて切りつければ簡単にゴブリンの首が飛んだ。

「はは。なんだよこんなもんか。魔物なんて大したことねえじゃねえか! 母ちゃんたちもビビりすぎなんだっつーの!」


次の瞬間、後ろに気配を感じて振り返る。

そこには軽く視界に収まらないほどのゴブリンの群れがあった。


「っは! いいねぇ! そうこなくっちゃ!」

俺は迫りくるゴブリンの攻撃をかわしながら炎の剣(サテライト)を肩に担ぐ。

ゴブリンの攻撃はどれも単調でなってない攻撃だ。

こんなへなちょこな攻撃がいくら襲ってこようが俺には当たらない。


「おら! おらおらおらおら! おらぁ!」

縦横無尽に翻弄し周囲に立ち並ぶ木や地面の高低差までも利用してゴブリンを一匹一匹斬り払う。



それを一分も続けていれば目に見えてゴブリンの数が減ってきた。

視界に収まらないほどの数がいたゴブリンは今やその数を10匹まで減らしている。


「つまんねえな。数が多くてもしつが悪い。こんな奴らいくら集まっても俺の敵じゃねえな」

そこからはもはや作業的に全てのゴブリンを斬り伏せた。

しかし倒し終わってから気づいた。

十匹いたはずのゴブリンの死体が九個しか転がっていないことに。



一瞬思考が止まり体が硬直する。

後ろから感じた悪寒にハッとしてそれを躱そうと身を翻すが、相手の攻撃が届くほうが早かった。


「っぐ!」

前回りの要領で前進して攻撃してきた何かから距離をとる。

左手がすっぱり切断されていて、すぐには動けなくなるほどの致命傷だ。

普通ならな。


「ぉおお」

『再生』と回復魔法は同じようで全くの別物だ。

回復は使用者の魔力を使うだけで何のデメリットもない。

しかし、再生はいわば亡くなった個所を無理やり直しているようなもんだ。

そのため『再生』を使用すれば身体には激痛が伴う。


まあ俺は痛みには慣れているから大したことはないがな。

『再生』で傷を修復した俺は右手に持ち替えていた剣を両手に構え直し、体を慣らす。


そうしたところで後ろに殺気を感じ、首を引っ込めた。


刹那。フォンと頭上で風を切る音が通り過ぎ、空を紫色の剣線が彩った。

体をひねって体勢を変え相手と向かい合う形をとる。

「ひゅうぅ! あっぶねえ!」

そこには通常のゴブリンと背丈こそ変わらないものの鍛え上げられた肉体と立派な刀を担いだ魔物がいた。

刀からは紫色の魔力波が収束しており他のゴブリンとの格の違いを示すようにも見えた。


ゴブリンジェネラルと呼ばれる魔物って母ちゃんたちが言ってたっけかな。

「おらぁ!」

「グギェェ!」

お互いの得物がぶつかりあい激しく火花を散らしあう。

ジェネラルは通常のゴブリンと違いしっかりとした足取りで剣を振っている。

それが振るわれる度に、淡く紫に輝く魔力光がどれだけ奴が強いのかを現している。


これまで幾度となく剣を交えてきたからわかる。

この魔物は他のゴブリンと違い剣を武器であることをしっかりと認識している。

技術こそ大したことはないが、その剣には躊躇いがない。


生き残るために、本能のままに振るわれた剣は人間のような迷いがなく一寸の曇りもない。早く、鋭く、迅速に敵を殺すためだけの剣だ。

「いいねぇ。楽しくなってきた!」


「グギェェ!」

上段から振りかぶられた刀を剣を横に構えて弾き返し、勢いを利用して横なぎに剣を振るう。

が、しゃがむことで躱され頭突きを食らう。

吹き飛ばされるが足の踏ん張りで止め、向かってきた袈裟斬りをつばぜり合いの形に持ち込んで弾き返す。


一進一退。一歩も譲らぬ戦いだ。

技術では俺が勝っているが、ステータスでは奴に分がある。

いいねえ。ぞくぞくする。

自分の髪を刀がなでる。

相手の眉間を俺の剣が掠める。

拮抗した両者の決着は終わりを見せることなく幾度となく空に剣線が描かれる。

いつまでも続けていたいところだが俺も魔物を倒さなきゃ強くなれねえ。

「楽しかったぜ! けどな。遊びは終わりだ。俺はまだ本気を出してねえんだぜ!」


バックステップで距離をとり炎の剣を上段に構えると火魔法の火力を最大にしてそのまま振り下ろした。

『サテライトインフェルノ!』

剣はゴブリンジェネラルの体を真っ二つに裂き、炎で骨まで焼かれたゴブリンの体は灰となって散らばり辺りにはゴブリンだったものの燃えカスだけが広がっていた。


不意に後ろに巨大な気配を感じて振り向く。

そこにはとんでもなくでかい竜が滞空していた。

母ちゃんたちから遭遇することがあったら迷わず逃走を選べと言われているがそんなことは関係ない。

あんなデカくてやばそうなやつと戦ったらどれだけ楽しいのか想像するだけでもワクワクするぜ!

『ブラッドスピア』

槍を打ち出して先制攻撃をかましてやるが竜は攻撃する動作を見せない。

取るに足らないものとみなして立ち去るならわかるんだがその様子も見られない。

まあ楽しいからいっか。


槍が効かないとわかったので今度は木を駆け上がって上空から剣で切り裂こうとするが、これも硬質な皮膚に弾かれ傷1つつかない。


サテライトを起動して『サテライトインフェルノ』も放ったが気にする素振りすら見せない。


「スッゲエ!」

だがそれでも俺の心は興奮に満ち溢れていた。

俺が全力で放った『サテライトインフェルノ』なら母さんたちにさえ傷の一つや二つ付くはずだというのにドラゴンは全くの無傷。それどころか気に留めてすらいない。


「おらぁ!」

そのまま多種多様に攻撃を続けていると急にドラゴンに動きがあった。

俺の攻撃にいも介さず滞空していたが翼を大きくはためかせ立ち去ろうとする。

「おい。待てよ! 逃げんのか!」

それに怒りを覚えて追いかけようと足を動かすと急に目前に隕石が追突したようなクレーターが出現した。


いや、竜が攻撃してきた。

速すぎて今の俺には知覚できない速度だっただけで確かにクレーターには魔力波が残っている。


俺はその光景を見て打ち震えた。

剣一本を振るってる俺ではまだ到達できない次元に触れた気がした。

俺が目指す強さの最終地点。

天から舞い降りた神のように個の気まぐれだけで天候までも左右し、世界の在り方が変わる。


まさしく天災。まさしく最強の在るべき姿。

飛び去っていくドラゴンの姿は夕日にように美しく太陽のように眩い輝きを放っているように見えた。







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