ドラゴンさんのその後①
ドラゴン視点です
思わぬ形で第一村人を発見した後、戦うことを避けて逃走を選び平穏に事を終わらせた俺は上機嫌で空を飛んでいた。
上空には俺が転生した時から変わることのない巨大な結界が張り巡らされており森からの脱出を妨げている。
この森から脱出を試みたのも一度や二度ではない。
無駄と分かっていながらも結界にブレスを吐き続けたこともあった。
まあそんなごり押しが通じるはずもなく一月が過ぎるころにはすっかり脱出はあきらめたんだがな。
俺はファンタジーでは最強の生き物とされるドラゴンだ。訳も分からず気づいたらドラゴンになっていたが、それなりに強いと自負している。
事実。この森にすむ魔物の中で俺と肩を並べるほど強い魔物は見たことがない。
大抵は竜の息吹一発で片が付くし、強い部類に位置する魔物でも火魔法を付与した火竜の息吹に耐えられた魔物は今のところ現れていない。
完全に俺TUEEE状態だが、一つ問題があった。
それは人の姿をとる手段がないこと。
今までは生活するうえでその必要性を感じていなかったがこの森に人がいることが判明した以上できるいことならば何らかの手段で会話をしたい。
ましてや片方は間違いなく俺と同じ日本からの転生者。
そんなわけで『人化』とか『念話』とかそういった手段が手に入らないかと森をさまよっていた。
――――
70年の月日を費やしたが俺は念願の意思疎通が可能なスキルを習得した。
この世界におけるスキルの取得方法は定かではないが俺の見解ではこうだ。
スキルの取得条件はおそらく2種類。
一つは生まれ持った才能。
もう一つは力を求め修練に励み、その究極系としてスキルという形で自分の力となるということ。
俺が念願の意思疎通ができるスキル『念話』を取得したのは後者のほうだ。
意思疎通を図るスキルを手に入れるために木を人と見立て毎日ひたすら心の中で話しかけた。
なんというか拷問みたいな日々だった。
しかし、そのかいあってか今では木がナチュラルに話しかけてくれるようになった。(空想)
名づけるならエア木達のモクくんだな。
モクくんは優しくてかっこよくて陰険……
知的眼鏡。話し上手で聞き上手、ステータスはオールSで身長190cmで精悍な顔立ちのメガネクイクイ系イケメン。難儀な性格をしていることもあってか、彼女いない歴=年齢の非リアとサブカルチャー好きのオタクの味方。
さらには、知らない人に道を聞けるほど逸脱したコミュ力を持つ。
俺の中学生らいの大親友だ。
しかも、絶対にいなくならないのだ。
ちなみに、一緒に冒険者ギルドに行ったこともある。(脳内冒険者ギルド)
初めは恥ずかしがっていたモクくんも今では俺の顔を見るとカンストしたコミュ力で『っふ。また来たのか子猫ちゃん』などと冗談を交え、受けこたえしてくれる。(ただの幻聴)
閑話休題、長い期間を費やしたが俺はモクくんとの苦楽の末、『念話』を手に入れたのだ。
人になることは叶わなかったがそれでもいい。
だって俺、わりとこのドラゴンとしての生を満喫してるし。
でもやっぱり人間と会話したい衝動に駆られることがある。俺元人間だし理性なき獣のはずなドラゴンに意思があるんだから仕方がないことだと思う。
知ってるか? 毎日一言も人と会話しないと結構寂しいもんなんだぜ。
もうそれは嫌いな奴とでもいいからちょっとでも会話したいと思うぐらいにな。
あ。でもだからって俺みたいなマネはするなよ。正直頭おかしくなるからなエア木達って。
作者 この時代に、エア友達のネタがわかる人なんておるんか否か……
クローフィー いると思います。(食い気味) 僕達ボッチちゃんの必須スキルだもん。
作者 元ネタが知りたい人はエア友達で検索すればたぶん元ネタでるってばよ。