朝食と喧嘩
今日の朝のメニューはパンとシチューのようなスープ。
実に質素な感じで何ともファンタジーっぽい。
夕食はもうちょっと豪華になることもあるけれど、なにぶん僕の『血液創造』だけでは素材や調味料は出せても料理後のほかほかご飯は出せない。
ひょっとしたら僕が調理の才能が壊滅的だから料理後の物が出せないのかもしれない。稲とかだしたら調理できるのかな?
うーーん…… わからん!
結果できるのは肉を焼いたりだとかすることだけ。
調味料は出せるので個人の好きなように味変できる。
「ソフィーおきて朝ごはんだよ」
朝食も用意できたようなのでこのあどけない寝顔を見れなくなるのはちょっぴり寂しいが仕方ないので起きるように声をかける。
「……ん」
それでも起きないので肩を軽く揺さぶってみるけど全く目覚める気配がない。
うーん。
どうしたものかと頭を悩ませているとサフィアが『母様。朝ごはんですよ。』とソフィーに声をかけると頑なに目を開かなかったソフィーの瞳が一瞬で開き、開かれた瞳はご飯に目が釘付けになっていた。
あれ? なんかソフィーの行動が欲望に忠実になってない?
「お姉ちゃん」
僕が考えてることがばれたのだろうか。ソフィーが笑みを浮かべてこちらを見ている。だというのに目は闇をはらんでいるように見える。
これが目が全く笑っていないというやつか。
まさか実物をこの目で見る日が来るとは思いもしなかったよ……
「おいふぃ」
久しぶりにとった食事がおいしくて言葉に出てしまった。
温かいスープが口の中に広がって味覚を刺激する。質素に感じるパンもちょっともさもさしているけどあじけないわけではない。
おそらくバターか何かを使っているのだろう。
しばらくとっていなかった食事の楽しさをしみじみと感じながらこんなおいしいものを提供してくれた変態疑惑の浮上している娘。(サフィア)に感謝の視線を送っておいた。
向こうは鋭くもそれに気がついたようで食事をとっていた手を止めて頭を軽く下げてくれた。うん家族との繋がりって素晴らしい。変態だけど。
「食事なんて毎日同じようなもんだろ? それに俺ら吸血鬼は血さえあれば常時健康体なんだから食べる意味ないと思うがな」
僕とサフィアのやり取りが気に食わないのかノクスが何か言っているがこいつは筋肉と戦う事しか考えてない戦闘狂なので無視しておくに限る。
「ノクスちゃん。そんなこといっちゃだめだよ! 食事は作ってくれた人に感謝しなきゃいけないってお姉ちゃんが言ってたもん!」
純粋な瞳でそれに抗議するソフィー。
かわいい。
「母さんはそいつに影響され過ぎなだけだろ? 人っていうのはそれぞれ価値観が異なるってバーンさんもいってたからな! だから俺は食事はとらねえ! それでいいだろ」
「何もよくありません。というか主様と母様に対してなんて口の利き方をするんですか。殺しますよ。」
「あ? 殺りあうのか? 喧嘩なら喜んで買うぞ!」
打って変わって喜色満面に話すノクス。
「戦闘狂に付き合うのは面倒ですがそのひねくれた性格を直すためならいくらでも潰してあげましょう」
一瞬でサフィアの前に『血剣』が現れてそれに対抗するようにノクスが『紅蓮剣』を構え、一触即発の雰囲気が漂い始める。
互いの魔力波がつばぜり合いを起こすようにぶつかり合い周囲に常人では立っていられないような圧迫感が掛かる。
そのまま両者の間合いがつぶれて剣線が吹き荒れる。一進一退の攻防を尻目に僕とソフィーは食事を終える。
カオスな状況に見えるが実は結構日常的にみられる光景なので特に気にせず自室へと戻って僕とソフィーは昼過ぎまで惰眠をむさぼった。
ちなみにその後起きたら食事場ではサフィアとノクスが二人仲良く寝ころんで? なんか喧嘩を終えた後の仲良しムーブを吹かせていた。
……この翌日にはたぶんまた喧嘩始めるだろうだけどね。