平和な日々と片鱗
僕の世界は現在ソフィーを中心に回っている。
ソフィーのために食を生み出し与える。
ソフィー専用の服も作った。決して趣味でやったわけじゃないから。違うから。
着替え前のソフィーの恰好が見ていられなかっただけだから!
まあ、僕も服の事はうといので『血液創造』で魔法使い感のある服装をイメージしたら、ゆったりとした若緑色のローブにフリルをあしらった純白のミニスカートができたよ。
魔導士然といった服装でありながらも日常的に使っていても違和感がなく、可愛らしい。
『血液創造』さんは本当にいい仕事をしてくれたよ。
下着? そ、それについては、の、のーこめんとで。
主に自己満足で作ったのだがソフィーがとても気に入ってくれたので作った僕としてはこれ以上の喜びはない。
ちなみに靴も作った。(外に出てないため未使用)
っふ…… もはや僕にはソフィー以外必要ないかもしれない。
なんて思っていた矢先ソフィーがついに僕の最も恐れていたことを口にした。
「そふぃーもおそとにでたいです!」
「ダメで~す~! ソフィーにはまだ早いのだよ! お外はとっても危険なところだっていつもいってるでしょ!」
「それもうきいた~! それにそふぃーつよくなった!」
正拳突きをして強くなったことをアピールするソフィー。
か、かわいい
「うぐっ…… ダメなものはダメなの!」
「やー! そふぃーもおそとでたい~!」
納得いかないのかそふぃーはソファーの上で手足をじたばたさせてだだをこねている。
……なんだこの可愛い生物は!
この世にうまれてきてくれてありがとう!
ちょっとぐらいならいいかな……?
イヤだめだよね。
いいよ!と言ってしまいたくなるのをぐっと押さえて、頭を降って思考を再起動する。
「と、とにかく。 今日も探索に行ってくるからソフィーはここでお留番! いいね!」
それでも唇を尖らせて抗議するソフィーに口を滑らせそうになるのを必死に耐えながら、僕はプレハブを出た。
危険な森の中の生活。
それでも僕には『力』があるから不便なく暮らせている。
いまもこうして森を抜けることを目指して道を進んでいる。
だけど、探索は一向に進んでない。
当たり前だ。これはゲームじゃない。
セーブポイントから進めるわけじゃないんだ。
『ステータス』のおかげなのか一日はぶっ通しで活動できるけど、それでも睡眠は必要なのだ。
つまり無限ループ。
じゃあ何のために外に出るのかって?
……それが僕にもわからないんだよね。
前世の僕は家に引きこもることが苦じゃなかったはずなのに、なんだかどうしても『外』に出なければいけない気がして、それでひたすら魔物との戦闘を繰り返して家に帰るんだけど、吸血鬼の本能なのか、時々『吸血』をしたくなって血を飲むんだけど、不思議なことにその後の記憶が全くないんだ。
目覚めるといつも激しい倦怠感と虚脱感に襲われるけど、周囲の魔物は切り裂かれたような跡を残して死んでいる。
これが俗にいう怪奇現象ってやつかなぁ?
って思いながら家に帰るんだけど、そのたびにソフィーに心配される。
心配してくれるソフィーが可愛くて演技をして帰った日もあったぐらいだ。
だから本当に偶然だったんだ。
ソフィーと出会って一年記念日みたいな感じで僕があの湖に向かったのは。
そこにアイツがいたことも……
「マンティコア……」
そう口にした瞬間。僕の視界が真っ赤に染まった。それと共に体が熱を帯び始める。『吸血』をした時のような感覚が体に流れて僕の心までも真っ赤に染まっていく。頭に響くノイズを最後に僕の意識は次第に遠のいていった。