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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
五章 聖王国と破壊神編
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刹那の予見 

僕達が聖王国に到着してから半年ほどが経った。

未だ聖王国司祭に動きはない。


亜人たちの話によると司祭の監視中、勇者を見かけたとか黒ずくめの怪しい奴を見かけたとかいう情報はあるけど正直どうでもいい。


そんなことよりも、一ヶ月もしないうちに、修行がバラバラになってしまった事が何気に寂しい。

いや、なんていうか。

まさか異世界にまで来て、少年漫画でよく見る修行パートに突入しちゃうとは思わなかった。聖王国に訪れた当初は、修行場所は『禁忌の森』オンリーだった筈なんだけど、獣王国に滞在していた際、ヨナが腹黒猫耳ショタ(獣王)から魔力を介して通信できる水晶型の魔道具を授かっていたらしく、それを用いて各々連絡を取るようになった。


ノクスとシェイラは既に十分思うがままに旅をしてきたという事で、『禁忌の森』で僕と一緒に修行をしている。


サフィアとヨナは、とんでもルールの武闘大会が定期的に開催されるガイアスという国に武を磨きに。

獣王国に比べてかなりアウェーな形式の武闘大会らしく、話を聞く分には所謂ローマのコロッセオと行った感じだった。無法の場らしいので、指名手配されているヨナやサフィアでも参加可能らしい。


ソフィーはといえば、『空間魔法』を学ぶとかで、魔法学園のある大国。魔法国オリオンに赴いている。お姉ちゃんソフィーの一人旅なんて心配だけど、要領の良い子だからうまく立ち回っていると信じています。


そんなわけで場所は離れているものの、各々強くなるために頑張っている。

僕は人と関わるのとかまっぴらごめんなので、あいも変わらず『禁忌の森』で修行の最中である。

大丈夫。離れていても心は常に繋がっている。


けど、強くなって帰ってくるみんなを前に、僕だけなにも成長してないのはさすがに合わす顔がなくなってしまう。


つまり、神様。僕、強くなりたいです、って思ったわけですよ。

当面先の事とはいえ、悪魔とかいう異次元レベルの化け物と事を構える予定がある以上、どうせ強くなっておいて損はないしね。


で、修行における最たる例といえば自分より強い人に師事を仰いだりするのが鉄板だ。

……自慢じゃないけどそもそも僕より強い人ってほぼいないのよねん。


始めの数週間で、皆の様子を窺ってそれぞれの鍛錬をひっそりと見学して修行の案を練っていたけど、そのどれも正直ピンとこなかった。


ヨナみたいに魔物を作業間隔でパンパン倒すのは面倒だし、かといってサフィアの狂気じみた空想戦闘。平たく言えば脳内で作り上げた敵と戦うとかいうシミュレーションゲームは僕には実現不可能。


ノクスみたいに縦横無尽に猛りに猛って魔物を倒しまくる戦闘狂の真似もしたくないし、そもそも今の僕が魔物を倒してもステータスに大した変化が望めないのは既に実証済み。


ステータスに変動が見られない確固たる理由は器の限界。

ゲームでいえばHPの最大値が999だったとして。

今の僕はそれに限りなく近い状態にいると思われる。


だから全くと言っていいほどステータスに変化が見られない。

なぜ、ここまで確信を持てるのかと言えば頼れるどこぞのギルマスにサリエラにいた頃話を聞いたから。


どこぞの金髪天然少女の出てくる小説みたく、器の昇華とか出来たらいいんだけどギルマスの話によればこれは不可能に近いらしい。


際限なくステータスを上げることが出来るとするならそれは竜や龍、それか神だけ、との事。100年以上冒険者を続けていたギルマスでも、ステータスの伸びが止まらない冒険者や騎士は聞いたことも見た事もないとのことである。


閑話休題、話がそれたけどそんなわけで僕は始めの一ヶ月でずっと考えていた。

ステータスやスキルに頼らずにシュババっと強くなれる方法はないかと。

そして、ものすんごい合理的で浪漫のある修行を思いついたのだ。


即ち……

被弾しなければそれで強いのではないか、と。

いや、とち狂ったわけでもなんでもなくこれにはちゃんとした理由がある。

きっかけは聖王国の街中で盲目の老人を見た事。


その老人は目を閉じているというのに雑踏に溢れる聖王国の街並みを一片の淀みも見せることなく歩き、視線の彼方に消えていった。


カッコよかった。すれ違ったのは一瞬ではあったけど今もあの老人の動きの壮麗さは僕の脳裏にありありと焼き付いて離れない。


遥か昔のことで忘れていたけど前世で学校の先生の他愛もない話で聞いたことがあった。

後天的、先天的問わず、目に病を長く煩っている人は他の感覚が常軌を逸しているとか。

人間の最も重要な伝達機関である視界を奪われたことで皮肉にも聴覚、嗅覚、味覚、触覚は類を見ない鋭敏さを誇ると聞く。


あの老人の動きを見るに、下手をすれば第六感じみたものまで目覚めているのかもしれない。

僕には視覚を封じて他の感覚を研ぎ澄ますという荒行じみた修行意外の案は、脳裏から微塵と消え去った。


そもそも、この被弾を前提としない戦い方は二代目始祖の吸血鬼たる僕とめちゃくちゃに相性がいいのだ。


思い返してみようではありませんか。

僕の今までの強敵との戦い。どうしても被弾してからカウンターを放ったり動き始めてどうしても後手に回ることが多くなかったですかな?


だからどうしても最後ロr、ボロ雑巾みたいになってきたであります。

うん。まあ痛いのよ。普通に。

できたら傷なんて受けたくないのよ。

でも、戦いに身を置く者にとって怪我は日常茶飯事。

そう思うじゃん?


でもね。実はね、ステータスに三段階以上差があれば攻撃されてもほぼ無傷なんですことよ。


え、それがどうしたのかしらって?

いや、だから、ね。

気づいてしまったのだよ僕は。


視覚だけに頼って動いているから回避行動が遅れるのではないかと、ね!

即ち、目で判断する前に触覚や聴覚、五感をフル稼働させれば目で視るより先に回避行動を取れるのではないか。


ちなみにスキルでもなんでもないけど『刹那の予見』って名付けた。

と、誰に語るでもなく苦悩の末辿り着いた最強の修行法を脳内で思い返していると、断続的に地面を揺らす音が響いた。


それに数瞬遅れて音が途絶える。

風の揺らめきがそれが上に飛んだことを知らせてくれる。

大袈裟にバックステップしてその攻撃を躱す。

風の揺らめきと、音の響きから察するにたぶんコカトリスかな。


軽い衝撃と共に背が何かにぶつかった。

このざらざら具合からして、たぶん。木にでもぶつかった感じかな。

背後から大気の揺らめき。


肌を撫ぜる微風から位置と場所を補足。

身を屈めて躱す。


刹那、木が引き裂かれる音と共に大地が鳴動した。

うわっ。この重い衝撃と鋭い風。

「ヴァアアァウウウ!!」

っぱワイバーンじゃん。

あっぶな。もし直撃してたら大怪我もらってたんですけど?!


ステにいくら差があっても上空からの勢いのかかった押しつぶしは僕でも致命傷になりうる。


なんでわかるかって?

……実際に体験したからに決まってるじゃん。

まだこの『視覚封印』の修行を始めたばかりの頃。久しぶりに『再生』を使う羽目になってめちゃ痛かったのがこいつのダイブ攻撃だよ。


だから個人的にだいぶ恨んでる。

視界は布で塞がれていて見えることはないけどワイバーンがいるであろう位置に他を畏怖させる威風堂々とした邪眼まなざし(笑)を送っておく。

「ヴァウゥ……」

おい、お前モンスターでしょうが。なんで目が見えない相手にちょっとたじろいでるねん。それとも僕の纏う雰囲気が殺伐としててカッコよかったとか。


やだな、照れるなあ。別にモンスターに褒められても嬉しくなんてないんだからね!

と、僕の最高に清廉な思考に呼応するように大地がまばらに律動した。


あちゃ~。

これコカトリス増えたな。

足取りとバラバラな音から判断するに数は五匹くらいか。


……まずいなぁ。

今僕が捌ける限界は四体くらいなんだけど。


別に怪我はしないけどさ。

なんか感覚的にくすぐったいというかとにかく不快なんだよね。


と、僕の一抹の不安を払拭するかの如く重低音が響いた。

その後に地面に軽い衝撃と何かが転がる音。

それが断続的に続く。

「ノクス?」

「ババア、こいつらは俺の獲物だ。修行すんなら向こうでやれ」


『血液創造』で作ったハチマキをしているから視覚情報は皆無だけど、この生意気なクソガキは、間違いなくノクスだ。それにしても、ノクスも素直じゃないなぁ。

いや、こいつの場合は本心から言っている可能性もゼロじゃないけど。


「兄貴は素直じゃないっすね〜」

「ぁあ?!」

前言撤回。

これは確信犯ですね。


そうか、やはりノクスはツンデレだったか。

ぼ、僕はちゃんと信じてたんだからね!


目は見えないけど、なんだろう。ノクスが若干頬を赤らめて、シェイラちゃんに抗議してるのが見える見える。


やっぱり、ツンデレじゃないか!(歓喜)

その後は、例の通り目隠し修行を継続し、回避性能向上の修行に努めた。

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