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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
閑章 『サリエラの記憶』
123/137

吸血鬼VS獣王

吸血鬼。

青白い肌を持ち、超自然的な力を自在に操り、闇夜に紛れ現れ、太陽を毛嫌いする呪われた種族。

物語や地球ではそのように語られる。


だが、この世界の吸血鬼、サリエラはただ悪意を振るい、自らが死に至るまで、目に入った生物を殺戮する兵器のような存在だった。

厄介なことに、本能からか昼間の間は無暗に日の下に出ることはしない。


魔力を補うために生物の血を啜る必要があるものの、それも極僅かで補える超コスパのいい魔力効率をしている。


襲われた人間から見れば、三日三晩にかけて戦い続けても、睡眠も食事も必要のない化け物のように見えたことだろう。


「ぐ、おおおぉぉ!」

「ギャガアァァァ!」

獣王国の国土より少し外れた草原。

開拓を進めるために、木や枝を伐採したものの、建物もまだ何も立っていない。


草の匂いを纏った静かで爽やかな夜の風が吹き抜けるその場所に似つかわしくない咆哮が響いている。


「強すぎだろ。こいつは」

そういって舌打ちする獣王。

人間の面影を残しながらもその巨大な掌から放たれる叩きつけや爪による斬撃、八重歯が肥大化し、牙となった嚙みつきはまるで野生の獅子のごとく。


技術も足運びもなにもなく本能のままに攻撃をしているだけだが、その巨手での振り払いと叩きつけ、噛みつきは武に精通し、かつステータスがBを超えていなければ目に捉えることすら難しいだろう。


「くそ!」

その証拠にステータスがA-に差し掛かる獣王ですら吸血鬼の懐に入れずにいた。


愚直なまでに単純で、しかし攻撃の暇を与えない巨大な掌での叩きつけ。

これを突破しない限りは攻撃を入れることすら難しい。


「どうだ!」

しかし、獣王は吸血鬼の背に一撃を入れて見せた。

ライオン形態へと戻り、叩きつけを跳躍してかわし空中で獣人の形態になると、がら空きの背中にその剛腕を叩き込んだのだ。


「ぐがァァァ!!」

苦し気に地面に倒れこむ吸血鬼。

それに獣王が間髪入れずに頭を地面に押さえつけ、その背に馬乗りになる。


「ガァァァ!!」

押さえつけながらも掌の甲で獣王を振り払おうとする。


その力は強く、ステータスA-の獣王が魔力を身体強化に回してようやく抑え込めるほどのものだ。


獣王は捕らえるのは不可能と判断し、掴んだ頭を捻じ曲げる。

鈍い音とともに、首がねじ曲がり、そのまま首と胴体を切り離そうと獣王は力を籠める。


「らあァァ!」

雄叫びとともに胴体から首を引きちぎる。

尚も襲い掛かろうとしてくる首を気持ち悪く思った獣王が首を彼方に放り捨てる。


が、糸のように繋がった血液の管が、波を打ち、首が再び胴体に戻ってくる。

「んな?!」

獣王が驚くのを置き去りに胴体と首が繋がり、暴れる力が強くなる。


「おらァ!」

捕らえることから殺すことに意識を変えた獣王は一瞬だけ身体強化に使用する魔力を跳ね上げると、その剛腕で吸血鬼の頭を打ちぬいた。

拳は頭を貫くどころか爆散させ、その場に血液が四散する。


若緑色の草原がその深紅の血で染まる。


尚も首の元に戻ろうとする血液の動きを見た獣王は確信する。

全速力で胴体を持ち出し、牢獄に閉じ込めることが出来れば、捕獲することも可能なのではないかと。


吸血鬼の力は確かに異常ではあるが、ライガには切り札があった。

他国から亜人捕獲のために与えられたオリハルコンの牢獄。


Bランクを超える魔物を牢獄に閉じ込めることは通常、不可能とされているが、オリハルコンは別、魔力伝導率の良い鉄に【硬化】を付与したその強度は神話や伝説に残るSランクの魔物の攻撃すらものともしないという。


獣王の脳裏にこんな化け物を本当に閉じ込めることなど出来るのかという不安が過ったが、再生が終わろうとしている血液の動きを見て、一旦思考を切り捨てる。


(全く、面倒なことになったもんだ)

獣王は大きくため息をつくと、吸血鬼をその背に担ぎ、王都を目指して足早にその場を立ち去っていった。

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