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転生したら…… 始祖の吸血鬼!?  作者: RAKE
四章 ライガ獣王国 王都編
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目を覚ましたサフィアと愉快な仲間達。

「やだ、絶対に嫌だ」

腹黒猫耳ショタとの会談を途中退席し、『サリエラの記憶』が完全に定着したのか、ようやく頭痛や眩暈が治った頃。


既に空が茜色に染まり、目にも体にも心地の良い夕日が窓から差し込み、もうじき吸血鬼にとっては過ごしやすい夜が訪れる。いわば週末の金曜日の帰宅時のような至福の時間。


そんなテンション爆上げの筈の時間帯で、僕のテンションは直下の一途を辿っていた。

「文句なら獣王様に言ってよ。公爵家でかなり裕福なボクの家計でも、この額はとてもじゃないけど払い切れないんだから」

そういう問題じゃないやい!

な•ん•で! コミュ障の僕が騎士団の団長なんてやらんといけないんじゃい!


明らかに人選ミスでしょ!

あの腹黒猫耳ショタ。聡明とか賢王とか持て囃されている割に、頭悪いな!


どうやったら、コミュ障の僕が騎士団の団長をやる姿なんて想像がつくんだよ。


僕に出来ることなんて、ポーカーフェイスで鎮座するくらいだぞ。いやだ、断固として働きたくない。ボイコットする。

「そもそも、サフィアを治すのを名目にその薬の代金の代わりに僕らの身分を取り決めるとか横暴もいい所じゃん! あんの、腹黒猫耳ショタめが! 今からでも一発ぶん殴りにいかないときがすまないイィィアぁ!」

せめてもの憂さ晴らしに、ベッドの上で地団駄を踏む。

けど全く心が晴れない。もうこうなったらサフィアが治ったら逃亡生活でも始めるか。


「だ、ダメだこのフィーちゃん。早くなんとかしないと……」

「お姉ちゃん。怖い」

ヨナとソフィーがなにか言ってる気がするけど、今はそんな場合じゃない。大体、な〜にが『他国への抑止力になる』だよ。ヨナが『蒼炎』の団長になれば十分じゃないか!


なんで僕が『紅』なんて厨二でちょっとカッコいい騎士団を率いなちゃいけないのさ! 全く持って不相応だよ!

「あ〜。荒れてる所悪いけどよ。おふくろ、それにババア、男女。あいつが目ぇ覚ましたってよ」

「ふゃ!? きゅぅ!」

こらこのバカ息子。

人が心を乱して情緒がおかしくなっている所に更なる爆弾を投下するんじゃない。


すぐに変態娘の容体を確認しに出掛ける。

後に続け、ブ◯リー。じゃなくて皆の衆。

「ちょ、ちょっと待ってよフィーちゃん」

「ソフィーも行くの!」

「俺は言いたいことはだいたい言ってきたからな。ひとまずお前らだけで行ってこい」

早足でサフィアの眠る地下牢へと向かう。

事前に話が通っているのか、この前僕が暗殺者の如く手刀を叩き込んで気絶させた警備兵二人に快く道を開けてもらう。


地下牢に向かう階段の手前、廃墟然とした部屋の中央。

異彩を放つ丸テーブルの前に座って、件の彼女はいた。


腰口まで伸びた鮮烈な赤髪に、凛とした面持ち。

この前見た肥大化した爪や牙は鳴りを潜め、僕の知っている愛娘の姿がそこにあった。

「主、さま」

足音で、僕達の来訪に気づいたのか、腹黒猫耳ショタと話し込んでいたらしいサフィアが振り返る。


「心配かけさすな、サフィア」

驚いた様な、切ない様な、万感が心を支配するけれど、まずは迷惑をかけてくれたサフィアの頭を、子供にする様に撫でてやった。


それに興奮する事もなく、撫でられる姿は僕の事を主様なんて言い慣れていなかった子供の頃を思い出す。若干頬を赤らめているあたり満更でもないらしい。変態の癖に、可愛い反応するじゃないか。


ヨナ、というか腹黒猫耳ショタの言う所によると『人魚の涙』を以ってしても、『吸血鬼化』の効果を極限まで薄めているだけらしいから今後も経過を見る必要があるらしいけど……


まあ、なんにせよ、これでようやく肩の荷が下りて安眠できるというものだよ。

「サフィアちゃん!」

人一倍、サフィアの身を案じていたソフィーも、サフィアの膝に泣き崩れる様にして蹲っている。

「申し訳ありません。母様。戻るのが遅くなりました」

サフィアも、声を震わせながらソフィーの頭を撫でる。


側から見ると、僕に頭を撫でられているサフィアがさらにソフィーの頭を撫でるとかいう中々にシュールな光景。


なのだが、一家の感動の再会なので誰も口を挟まない。

腹黒猫耳ショタ獣王もKY勇者と違って空気は読めるのか、少し楽しそうに笑みを浮かべて、成り行きを見守っている。


穏やかな雰囲気に包まれる室内。

祝福と感動の中、ヨナが唐突に爆弾を落とした。

「初めましてサフィアさん、ボクはヨナ。フィーちゃんの恋人です」


その発言を聞いたサフィアが目をくわっと見開き、爛々と瞳を輝かせてこちらを凝視してくる。何故かソフィーは不敵な笑みで僕とヨナを交互に視線を送っている。


「っ! 主様詳しくお話を!」

「……いや、僕は疲れたからもう寝たいんだけど」

「フィーちゃんが寝るならボクも寝るよ」

「ソフィーも眠るの!」

「よ、ヨナと寝るのはまだちょっと……」

「主様、お話がまだ終わっていません!」


サフィアが目覚め、穏やかな雰囲気が流れたのも束の間、ヨナが落とした爆弾で一瞬にして場がカオスに包まれた。

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