吸血の反動と寝床の確保
「んく……」
鼻を突く血生臭い異臭と激しい倦怠感に目を覚ました僕は未だボーッとする頭をどうにか働かせて上半身を起こした。
辺りを見渡すと魔物のものと思われる臓器や首、腕、足。それに加え、そこら中に血だまりまでできていた。
ひどい惨状だなぁ。と思ったが自分の体を見ればもっと悲惨なことになっていた。
服は血だらけ、掌にはべっとりと乾いた血が張り付いていて、服で隠しきれていなかった箇所にも血が生き物みたいに張り付いていた。
あまりの惨状に顔をしかめながらも、これからできることを思案していると、ふいに木漏れ日が差して、赤い光があたりを照らした。
幻想的に淡く輝く茜色の光を見つめながら記憶をたどる。たしか意識が途絶えたのは夜だったはず。
つまり一晩明けて朝に気絶。夕時まで寝ていたってことかなぁ?
よく魔物に襲われなかったものだ。
「ふぁあぁ……」
『吸血』した後、体に熱が走ってそのまま寝てしまったのかと思っていたけど、そんなことはないみたいで、起床したばかりだというのに濁流のごとく睡魔が押し寄せてきた。
ううむ。我ながら寝過ぎじゃないのだろうか。
でも眠いものはしょうがないので仮眠を取ろうと木に背を預けて眠ろうとして気づいた。
「『血液創造』使えば家作れるんじゃ……」
そもそも体のだるさとこびりついた血をどうにかしなければ、まず安眠できないだろうし、このまま寝て魔物に襲われないなんて保証はない。
物は試しと右手をかざして『血液創造』を使う。それと同時に左手で『血液操作』を使って周囲の血だまりの血液を右手に収束させる。僕一人の血液と魔力では家なんて巨大なもの作れない。でも『血液創造』と『血液操作』をリンクさせて外部の『血』も使えば巨大なものも作れかもしれない。
祈る様に魔力を流していると、大玉ころがしで使いそうな赤い球体が出現した。紅い球(多分血の塊)は生き物みたいにウネウネ動いて、数秒もしないうちにプレハブみたいな家…… というより小屋ができた。
魔物に破壊できないようにって思って。とにかく頑丈になるようにイメージしたんだけど。まさかこうなるとは思わなかったなぁ……
何処から見ても彩どりが一つも感じられない灰色の小屋だけど中はどうなっているんだろう?
「ギオオォン」
ダンジョンとかでありそうな重厚な鉄製の扉を開けて中に入る。予想はしてたけど、生活感も何も感じられない部屋だった。しかもワンルーム。これじゃ映画に出てくる独房とかと変わらない気がするんだけど……
中央の壁上部には鉄格子が見えるし、出してくれーって囚人ごっことかできそうだ。さすがに毎日ここに住むのは気が引けるから早めに『血液創造』による改装を考えたほうがいいかな。
でも今日は疲れていてやる気が出ない。面倒なことは明日に回して、今は寝ることだけを考える。外にある血だまりを使ってベッドを作成する。
そのままダイブしたい衝動にかられたが、どうにかこらえて『血液創造』の水で体を洗い流す。
今度こそベッドにジャンプダイブをして横になる。
疲労した体に睡魔が襲う。異世界にやってきて1日で本当にいろいろあったなぁ。これからの不安とかそういうものがなくなったわけじゃない。けれど今この時だけは背中に伝わるベッドの温かさに身を委ねて、睡魔にあらがうことなく眠りについた。
主人公
「時々僕の口調が乱れるのはなんでですかね?」
作者
『私の語彙力、表現力が皆無なのです。そうです私が悪いんです。主人公は悪くありません。ごめんね主人公300円上げるから許して』