表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那の風景 : 書籍関連  作者: 緑青・薄浅黄
刹那の風景5:68番目の元勇者と晩夏の宴

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/28

『 カバーイラスト & 短編「 いまのままで 」 』

5巻の軽いネタバレがありますのでご注意下さい。

もしよろしければ、5巻を読まれてから、

お時間のあるときに、覗いていただけると嬉しいです。


【 書籍 : カバーイラスト & 短編「 いまのままで 」】


sime様に描いていただいた、書籍のカバーイラストです。




挿絵(By みてみん)




転記・転載は禁止です。

よろしくお願いします。


黄色に彩られたマナキス(秋)の風景は、

すごく鮮やかで、セツナ達のそばにいるキャラクター達は、

穏やかな時間を過ごしているのだということが、

手に取るように伝わってきました。


しかし、そんな華やかな風景なのに、

どこか切なさを覚えます。


本当に美しく、優しい風景がそこにありました。


sime様、いつも心に残るイラストをありがとうございます。

薄浅黄共々、心から感謝しております。


《※ Webとは書籍では色々と違っています。

 ノリスとエリーは、パーティーの段階で、

 もう、ソフィアやサイラスと面識があります》



【 ノリス 】


マナキスの薄い青色が広がる空の下で、

楽しそうに笑う声が、耳に届いた。


思わず振り返ると、

話す声が微かに聞こえ思わず笑う。

どうやら、アルト君とサイラス様が、

何かを取り合っているらしい。


(お肉でも取り合っているのかな?)


僕はそんな賑やかな輪の中から離れているため、

彼らが一体何を取り合っているのかはわからなかった。


僕が皆から離れている理由は……。

ラギさんの家の中庭を、ゆっくりと散歩しているからだ。


招待された食事会で、

席を離れるのは褒められたことではない。


だけど、セツナさんが今日のために狩ってきたという、

魔物のお肉をエリーと一緒に食べ比べ、

さらに、僕達が好きだと話していたチーズや野菜も、

用意してくれていたとなると、食べ過ぎてしまうのは、

仕方がないと思うんだ……。


なので、普段よりかなり食べ過ぎてしまい、

アルト君やサイラス様が、

張り合って食べているのを見ているのが、

辛くなり、料理の香りも胃を刺激するほどだった。


多分、顔色が悪かったのかもしれない。

セツナさんが胃腸薬を渡してくれ、

ラギさんが、「散歩でもしてくるといい」と、

いってくれたので、その場から離れることにした。


エリーはどうしているのかと思い探すと、

ソフィア様と楽しそうに話していたので、

何もいわずそっと離れた。


もしかすると、エリーもソフィア様も、

アルト君達に背を向けて話していたのは、、

僕と同じように、料理を見ないようにしていたのかもしれない。


食べ物の香りが届かないところまでゆっくり歩く。

ラギさんが自由にしていいといってくれたので、

さらに奥にいこうとしたところで、

僕を呼ぶエリーの声に振り返った。


「ノリス?」


エリーが心配そうに僕を見ている。


「どうしたの?」


「お腹が苦しいから、

 少し歩いていたんだよ」


「あー。わかる。私も苦しい……」


そういってエリーが胃の辺りをさする。


「ソフィア様と話していたんじゃないの?」


「今は、ジョルジュ様とフレッド様とお話しになっているよ」


「そうなんだ」


このあとのお茶とお菓子を食べるために、

「私も歩く」といって、エリーが僕のとなりに並ぶ。

所々に咲いている、野草を目に入れながら、

エリーと会話しながらゆっくりと歩いた。


「昨日、緊張してあんまり眠れなかったけど、

 大丈夫だったね」


「そうだね。ユージン様もキース様も、

 とても優しいお方だ」


今日の食事会を、

ラギさんとアルト君とサイラス様と計画したときから、

第一王子のユージン様と宰相のキース様が、

参加されることは知っていた。


だから、昨日の夜はとても緊張して、

あまり眠れなかった。


普通ならば、一国民でしかない僕達が、

簡単に会える方達ではない……。


ジョルジュ様やサイラス様でさえ、

遠目でしか見たことがなかったのだから。


王侯の方々に対する礼儀作法なんて知らない。

だから、怒らせてしまったらどうしようと、

思っていたのだけど、そんなことは杞憂だった。


ユージン様もキース様も、

本当に優しく、話しかけてくださったから。


「それでも、お話しするのは緊張するけど……」


ぼっそと呟くエリーに苦笑して頷く。

どうしても、ユージン様達の洗練された美しい所作に、

気後れしてしまうから。


「どうして、セツナ君もアルト君も普通に話せるのかな?」


「アルト君は、あまり深く考えていないだけだと思うけど、

 セツナさんは、なんていうか馴染んでいたよね」


「うん。馴染んでた。一番おかしいと思ったのは、

 ユージン様とキース様と並んでいても、違和感がないの」


「確かに……」


「最初にノリスから紹介されたときも、

 冒険者に見えなかったけど、

 ユージン様達と並んでいたら、

 もっと、冒険者に見えなかった」


「……」


「セツナ君って、

 もしかしたらどこかの国の王子様だったりしてね」


他の人ならきっと、「それはないと思うよ」といって、

冗談として笑えていたかもしれない。

だけど、セツナさんの立ち振る舞いなどから、

あながち間違いではないような気がして否定できない。


僕とエリーは、顔を見合わせると、

それ以上この話題を広げることはしなかった。

知らない方がいいこともあると思うんだ。


そろそろ、皆の元に帰ろうかと話、

元来た道を戻る。あと少しというところで、

エリーが足を止めた。


「ねぇ。ノリス」


「うん?」


「シルキスがくる前に、

 ここに花を植えてもいいか、ラギさんに聞いてみようか」


エリーが周りを見渡してそんなことをいった。

食事会の場所は、花が植えられて咲いていたけれど、

今僕達がいる場所には、野草しかなく殺風景だ。


「そうだね。僕も同じことを考えていたよ」


僕とエリーは同時に、ラギさん達が居る場所を見る。

暖かい日差しの中で、穏やかに笑っているラギさんの周りには、

皆が集まっていた。


その風景がとても優しく感じて、

キラキラと光っているように見えて、

とても、居心地のいい場所のように思えた。


「また、皆で集まれたらいいのにな……」


エリーが囁くように呟いた言葉に、微かに頷く。

だけどそれが難しいことは、僕もエリーもわかっていた。

ユージン様達やサイラス様達は、僕達とは住む世界が違いすぎる。

きっと、もう二度とこんな近くでお目にかかることはないだろうから。


「ラギさんやセツナさんやアルト君なら、

 僕達に付き合ってくれると思うよ」


「うん。そうね。シルキスになったら、

 アルト君を誘って、お花を植えよう。

 綺麗に咲いたら、一緒にお花を見ながらお茶を飲みたいな」


そういって笑うエリーに、僕はしっかりと頷いたのだった。


-Endー


ありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



html>

X(旧Twitter)にも、情報をUpしています。
『緑青・薄浅黄 X』
よろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ