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6.霊峰フーサンの麓にて②

せっせと投稿します。



 ”ざっざざっ!”


 茂みが風に吹かれて音を立てた、狐の出てきた付近である。茫然としていたリーゲッツも次第に、しっかりとしてきて、その茂みに目をやった。特に何でもない茂みであったが、リーゲッツは無性に気になり、その茂みに近づいて行った。歩くのが少し辛かったので、這って行ったのだが、這うとちょうど良く茂みの奥へと進んで行けた。少し進むと目の前が開きちょっとした崖が現れた、樹々で隠れるのが不思議なほどの崖であったが、今までいた位置からこの崖は全く見えていなかった。


 その崖には、屈めば入れるくらいの洞穴が開いていた。用心しながら中を覗くと、そこには、一匹の狼の死骸と、三匹の子狐の亡骸があった。状況は解らないが、ここは狐の巣であったのだと思われた。巣を襲わて反撃に出たのか、追い払おうとしている間に巣が襲われてしまったのか、番と思われる狐は、文字通り自らを犠牲にし、辛うじて一匹の子狐を護ったのであったと思われる。


 洞穴の中を確認すると、少し奥で行き止りとなるのだがそこは少し左に膨らみ、更に水が流れ落ちていた。隠れ家としては、絶好の場所であった。リーゲッツは若様と子狐を傍らに寝かせ、湧き水で体を拭き、簡単な手当てを自ら行った。そして、窪みに溜まる水に顔ごと沈めて一気に水を飲んだ。人心地は付けたが、満身創痍には違いなかった。しかし、痛む体に鞭打ち、3匹の子狐の亡骸と、親狐と思われる亡骸を洞穴の近くに弔ってやり、ついでに狼の死骸は毛皮を剥ぎ、その他は路から見えない様に隠した。疲れ果てたリーゲッツは洞穴に戻り、若様と子狐を抱える様に抱き、そのまま意識を失った。  


 しばらくして、目を覚ましたリーゲッツは、洞穴の入り口を樹の枝で隠し辺りを探索した。狼などがいるこの森では洞穴からあまり離れることは出来なかったが、蜜柑の木を見つけ実を手に入れる事が出来た、更に、その傍で民家まで見つける事が出来た。洞穴は割と森のはずれに近い位置にあった。

 取敢えず、洞穴に戻り、若様と子狐に蜜柑を絞り飲ませて見た、どちらも問題なく飲んでもらえた。しかし、蜜柑で育てる訳にもいかないので、夜になるを待って、民家に忍び込むとそこには家畜の山羊と牛がいた、山羊を殺さない様に一頭盗んで洞穴に戻りその乳を若様と子狐に与えた若様と子狐は夢中になって山羊の乳にしゃぶり着いていた。


 ”きゃはっ!きゃっ!きゃっ!きゃはっ!!”


 若様の笑い声で目が覚めた。子狐に頬を舐められ笑う若様がそこにいた。狼の毛皮と、山羊の乳と蜜柑等の果実で若様と子狐はどうにか生き永らえていた。というか不思議なほど元気に成長していた。この洞穴に隠れ住む様になって、1か月程が既に経っていた。リーゲッツも傷も癒え、自由に動ける様になっていた。


 そんなある夜、いつもの様に森を出て民家に向かおうとしたリーゲッツは、集落の外れで、焚火を囲み酒を飲む武士の一団を見つけた。物陰に隠れその一団に近づき、聞き耳を立てていると、戦に敗れた主、ギチョウ・ゲンジュールは、逃亡の末、落ち武者狩に会い、既にこの世を去り、伴に出征した嫡子と次男も戦死していて、奥方様達や年端もいかない姫や若様達まで全て囚われてしまい、東国の領地も既に他家の統治下あることを知った。そして主達の盟主であったノブーヨ・ヒューバラも既に処刑されて、世はシュゼイン・ダイランの支配へと向かっていることも知った。


 逃げ延びる先の無くなった、リーゲッツは囚われた奥方様達も気になったが、唯一残された若様を護る為、少しでも都から離れる決意をし、やっと慣れてきたこの洞穴を捨て東に、とにかく当てもなく東へ

向うことにした。しかしシュゼイン派の武士たちが近くにいる状態では路に出ることは出来ず、森の中を勘を頼りに東へと向かった。しかし、知らない森の中では直ぐに方位も解らなくなってしまった。

 少し休み考えていると、微かに水の落ちる様な音がしているのに気づいた。音のする方向へ向かい歩くと、目の前が開け、そこには、一面に滝が広がっていた、高さはそれ程ないが目の前全て滝囲まれていた。

 リーゲッツはその滝から流れる川に近づき、懐に抱く若様と子狐を傍らに置き水を飲んだ。若様と子狐はすやすやと眠っていた。滝の奥には霊峰フーサンの頂が見えた、自分たちの位置からは頂は北に見えるはずであるので、それを基に東の方角をリーゲッツは理解した。方向が分かったことに安心したリーゲッツは、水もあることから、ここで休むために、火を起こし川を背にし火に当たりながら、くつろぎそのまま眠ってしまった。



なかなかどうしてうーーーーーん

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