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2.神皇の即位

取り合えず続けて投稿させて戴きます。


 時は、約5年ほど遡る。


 所は、極東の地、神皇国シャポーネその都たるキョーウにある城である。

城といっても、西洋の城でも、また日本式の城でもない、広大な敷地に、広大な建物、焼失してしまった首里城の様な中華風というか大陸風の城である。その城で、この国の統治者である、第77代神皇の即位礼が執り行われていた。この儀式は、厳かに一種の冷たさの様なものを湛えながら、粛々と執り行われていた。


 このシャポーネ神皇国は、太陽神の末裔が興したとされ、すでに1800年に及ぶ歴史がある。島国であるため、他国の侵略を受けることなく栄えてきた。

 統治者たる神皇は、太陽神の末裔のみが、その血脈に基づいて受け継ぎ、太政大臣をはじめ大臣や上級官吏達は、神皇の傍流である摂家や摂家の傍流である公家と呼ばれる者たちや、その息の掛かった者達で固められる様になってしまった。

 いつの間にか、神皇国シャポーネは、神皇、摂家、公家達に支配されてしまった。然るべき外敵も無く、一族郎党で支配するこの国は、当然に堕落、荒廃する。神皇と摂家、公家達は大した政も行わず、昼夜を問わず遊び惚ける。その栄華を護る為にのみ、政を行う。保身の為に摂家、公家達は神皇に取入り任官、除目を思いのままに行い、子飼の国司や官吏を増やし、その国司達を使い、民に重税を課したり、朝廷への献上の帳簿を誤魔化し、私腹を肥やしていた。本来、任官や除目は神皇、大臣のみに許される行為であったが、摂家を中心に横暴が繰り返される様になった。


 シャポーネは神皇の統治の基、大小60超える国に分け、それぞれに行政、司法の長である国司を朝廷(中央政府)から派遣していた。一部には、貴族や豪族が領主となり、国や郡を治めていることもあった。

 外敵のいないこの国は、大した軍事力も持たずに統治を行って来たのだが、摂家や公家などの一部の者のみが富む様な統治が続く訳もなく、庶民の反乱や生活の苦しい者達が盗賊となり略奪を起こす様になっていた。それに手を焼いた、朝廷や国司達は、地方の豪族や中級貴族に武力を持たせ、それらを抑え込もうとした。


 各地で武力衝突が起き、それを治める為に更なる武力が必要となった。そして、武力をもった豪族や、貴族も朝廷や国司に逆らい独自に統治を行う者まで出てきた。そうなるとまた、力のない国司は、反乱や盗賊の餌食なる。正に鼬ごっこであった。業を煮やした朝廷は、守護(軍務指令)や検非違使(警察署長)の様な職を与え、豪族や地方貴族を取り込もうとした。しかし、武力による統治に流れた動きは止められず、武力を持つ者が台頭しだした。


 そんな乱れた国、神皇国シャポーネ、その第77代神皇に今、統治者の証である。伝家の宝刀『神薙剣』が、当代神皇のゴシラカ・エル・シャポーネに、寺社の総取り纏め『祭主』である。シーゼイから手渡されたところであった。


 御神刀『神薙剣』は、神皇に代々伝わる刀で、鞘も、柄も、鍔までもが真っ白でうっすらと輝く刀であった。この刀で、魑魅魍魎をせん滅し国を興し、その後も傾国の危機に輝き、振るわれたとされる剣である。しかしその刀には、傷どころか汚れの一つと無い正に純白といえる刀であった。


 即位礼は、城の拝殿の中で行われ、中央の舞台の上には高御座があり、そこにゴシラカは、御神刀を王杖の様に携えて胡坐をかいている。高御座の下、左右には、摂家や公家といわれる上級貴族達で独占された大臣や上級官吏が胡坐を掻き、拝殿の外では、地方貴族や豪族の国司や守護、検非違使達が、白砂の上で片膝を付いて並んでいる。


 その中の一人、地方貴族で領主でもある。ギチョウ・ゲンジュールは、廻りの国司や守護達と同じく緊張した面持ちで、この厳かなる儀式に参加していた。ゴシラカによって掲げられた、御神刀『神薙剣』を見て、ギチョウは驚いた、自分の懐にある、伝家の宝刀『鬼薙剣』に似ていたからであった。『神薙剣』は、本刺しであり柄も鍔もある、一方『鬼薙剣』は懐剣であったが、傷一つ無く、真っ白でうっすらと輝いているかの様な姿はそっくりといえた。


 式は、滞りなく進み、早朝から始まった儀式も既に昼を越している。高御座の御簾が下ろされ、参列者一同が拝礼し長かった式はやっと終わりを迎えた。

 拝殿内から、大臣や上級官吏達が去ったのを見届けて、白砂の上の人々も、緊張から解き放たれ、思い思いに立ち上がり散り散りに去っていく。


 そんな中、ギチョウは、懐にある『鬼薙剣』を握り締め、ふと空を見上げた。雲一つない薄暗い空には、青白い太陽がいつものようにあり、握り締めた懐剣の奥の胸板の中央には、今は無い輝く太陽の様な赤く丸い痣があった。

誤字、脱字、その他お気づきの点どんどん指摘、教えてください。

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