渦の風
渦が過ぎていく。
ここからは遠く。ある所では近い。
海からその方角を見ている。
通り過ぎていく渦を、巻き込まれていく雲を。
立っている足元は、それほどでもない。
だが向こうはどうだろう?他はどうだろう?
まだ、始まってはいない。
しかし、
それはこれから始まろうとしている。
明日が来れば、欠けてしまったものはないだろうか?
今もっているものを、明日も持っていられるだろうか?
これから明日の間までに、
今あるモノがなくなってしまったなんてことを、今はまだ考えたくない。
今あるモノが、明日もあって存在させるために……、
明日が来たら、いなくなったものがあるなんてことを、
そんな刃は、減らしたいから。
今、目の前にあるモノを確認する。
明日にはないモノを生まない為に。
いま目の前にあるモノが、
今、これから訪れるもので変わってしまうかもしれない事を。
今あるモノが欠けた明日が来るなんて、
それは想像の中だけで終わらせたいから。
明日も、
今日あるモノがある明日を。
そうであってほしいと、ここからでは海を見る事しかできない。
そばを渦が駆け抜ける。
その渦の中に一人、いる。
一人は白い。
白い風。
見ていた隣で、風が生まれた。
もう一つの別の風が。
もう一つの別の風は……青い。
青い風が、白い風を追いかける。
嵐が来て高揚する事がある。
嵐を受けて恐怖する事がある。
嵐が過ぎて……泣くことがある。
だから飛んだのは、青い風。
力を持つ高揚と、力を振るう興奮と、力が広げる跡形を、
青い風と白い風が、嵐の中で……。
それを見ていた。
また見ていることしかできなかった。
まだ、この足元はあそこに届かない。
あの高い二つに、まだこの足場は届かない……。