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夏が終わり


 水から這い上がった。


 熱さから逃げていた、

 頭から、頬から、肩から、胸から、腰から、脚から、足の甲まで……。

 波打つ水面から纏わりついた水を引き摺って砂浜を歩く。


 伝う雫が、熱が残る砂地に落ちた。


 一つ、二つ、三つ、四つと濡れた染みを作っていく。


 乾きが濡れていく。

 濡れた窪みが増えていく。


 もう水の中では息は出来ない。

 水は空気の生存を許さない。


 前を見ていた。


 名残り惜しくて振り返る。


 波は打って、暗い赤が黒に広がっている。

 もうそこは自分がいて、いい場所ではない。


 喧騒が聞こえる。

 視線の背後。


 砂の向こう。

 かたい道の街。


 青と緑の世界を壊して作った町。


 そこが自分たちが作った居場所。


 歩く。

 水が伝う。

 水が落ちる。

 濡れる。


 砂が、


 染みる。

 浸みる。

 滲みる。

 沁みる。


 一歩、暗い道に足が着いた。


 電灯に虫が舞っている。

 虫の音が静かに聞こえる。


 夕闇、

 夕涼み、


 もうすぐ、

 月が……来る。

 

 山が暗い。

 道が暗い。

 街が暗い。


 それでも夕夜に虫が鳴いている。


 いつもの。

 道の、


 夕と夜の世界から空を見上げる。

 夜風。


 生ぬるく。


 それで……わかった。


 今年も、

 夏が……終わる……。



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